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注意!!! 何を注意すればいいのかよく分からないのです。 とにかく何が起こってもうろたえない方、どうぞ。 とあるマンションの一室にて。 男女の営みを終えた二人がベッドの上で話す。 「ねぇ、あなたは一体何者なんですか?」 「何さ、藪から棒に。俺は俺。それ以上でも、それ以下でもないよ」 「・・・あのね、わたし、あなたのこともっと知りたくて、 あなたの同級生の人たちに聞いたの。学生の頃はどんな人だったの?って」 「そしたら、みんなあなたの事なんて知らないって言うの 一人が卒業写真を見せてくれたんだけど、あなたは載ってなかったわ」 「・・・」 「あの、」 「・・・こーゆーはなし、しってる?」 「え?」 昔々、とある山奥に二人の親子が住んでいた。 「ねー、おとうさん どうしてれいむのからだとおとうさんのからだはちがうの?」 「うるせー! この豚饅頭野郎!!!」がしゃーん!!! 「てめーの顔なんか見たくもねえええぇぇぇ!!!」 「ゆぎゃあああああ!!! どぼぢでただくのおおおぉぉぉおお!!!」 ぼてぼてぼて。れいむが普通のゆっくりと違う点。それはこのれいむには体があった。 このれいむの親は山奥で一人寂しく暮らす男の家に侵入し、虐待され尽くした後で殺された。 男はさすがにやりすぎたかなと思ったが時すでに遅し。 死体をかたづけようとすると、赤ゆっくりが出てきた。 まぁ、子ゆっくりの一匹くらい育てても大丈夫かなと考えそのまま育てることにした。 れいむは生まれたときに最初に見た男が自分の親だと思いこみ、 自分は人間の子だと思いこむようになった。 そのせいかどうかは定かではないが、れいむに体が生えてきた。 男は気味悪がった。 ゆっくりと言えば顔だけの駄饅頭。 それに四肢が付くなんて。 きめぇ丸やれみりゃのような体付きを見たことのない男が思ったのは 自分が虐待して殺したこのれいむの親の呪いではないだろうか。ということだった。 それから、男はれいむに日常的に虐待を繰り返すようになり、 れいむは男の元を離れた。 「ゆー! あんなひどいじじいとはくらせないよ!!!」 れいむは生まれて初めて山を降り、 男が麓にあると言っていた町に向かった。 れいむが町を歩くと道行く人々はみな指を指してひそひそ話。 「かわいくってごめんね!!!」 ウインクしながらポーズを決めるれいむ。 「おや、体付きれいむなんて初めて見たよ。」 「ゆっ! おにいさん、ゆっくりしていってね!!!」 「ふふふ、れいむ、僕と来ないかい? 君を一躍有名人にしてやるよ」 それから、珍しい体付きれいむは見せ物小屋やTVショー、週刊誌に載り 全国にその姿が知れ渡った。 しかし、数ヶ月もすると、皆れいむのことなど忘れた。 金儲けの種にならない事を悟った男はれいむをゆっくりんぴーすに引き渡し、 自分は儲けた金の全てを持ってどこかへ行った。 ゆっくりんぴーすでは世にも珍しい体付きれいむと言うことで大変重宝された。 れいむはとても幸せだった。 美味しいご飯を沢山食べることが出来るし、暇になれば職員が遊んでくれる。 れいむのわがままは全て叶えられた。 しかし、一つだけ不満があった。れいむには友達がいない。 どこで仕入れた知識だろうか、ある日れいむは言った 「れいむは『がっこう』にいきたいよ!!! それで、おともだちがほしいよ!!!」 早速近くの小学校に転入することが決まった。 転入前日 「あしたから『がっこう』だよ!!! おともだちいっぱいつくるよ!!!」 「では、れいむさん、自己紹介してください」 「れいむはれいむだよ!!! みんな! ゆっくりしていってね!!!」 れいむは満面の笑みと張り裂けんばかりの大声で挨拶した。 「ぅっせぇなー」 耳を塞ぎながら、生徒の一人がぼやいた。 その日の昼休み。 「みんな、ゆっくりしようね!!!」 「うわぁ、なにあれ・・・」 「キモッ! あれってずっと前にテレビに出てた糞饅頭じゃね?」 「あ、たっちゃんってあのれいむ大嫌いだったね」 「話しかけんなよ糞饅頭!」 「ゆ! なんでそんなこというの!? れいむはにんげんさんだよ! みんなでゆっくりしようよ!!!」 クスクス 「なにあれ、饅頭が人間ぶってない?」 「ゆっ!?」 「ゲラゲラ、体付きなだけで人間になったつもりなの? 馬鹿なの?」 「「「ゲラゲラ」」」 「ゆぅ!?」 「なんでそんなこというの!!! れいむはにんげんさんだよ! みんなでゆっくりしようよー!!!」 「嫌だよ」 「なんでお前のような害獣なんかと仲良くしなきゃいけねーの? 冗談じゃねーよ!」 「ゆ、ゆぐ、、、どぼじでそんなごというのおおおお!!!」 「うわ、泣いたよ。」 「きもっ! 饅頭泣き顔キモッ!!!」 「ゲラゲラ」 れいむが泣いても誰もれいむを助けに行かない。 それどころか、益々馬鹿にしたり笑ったり。 そして午後の授業 「クスクス」 「ケラケラ」 れいむは直感した。 これはれいむを馬鹿にして笑っているんだ。 今までテレビや見せ物小屋で笑われてたときはみんなれいむと仲良くするために笑っているのだと 勘違いしていたが、昼休みの一件から人間のひそひそ声やかすかな笑い声が とても不快な物へと変わっていった。 「先生ー、餡子臭くて授業に集中できませーん」 「先生ー、僕もー」 「え、何、何で? 誰かお菓子持ち込んだのか?」 困惑する教師。 「えー、そんな事する奴いないでしょー」 「きっと誰かが饅頭臭いんだよー」 「プークスクス」 「ゆー! れいむはおまんじゅうじゃないよ!!!」 昼休みに饅頭と罵られたれいむは饅頭という言葉に敏感に反応した。 「だれもれーむを饅頭なんて言ってないよねー」 「ねー」 「黙れ!!!」 ばーん!!! 教師が怒鳴り教卓を強く叩くと教室内が静まりかえった。 「お前達の言いたいことはよく分かった、○○と○○と、・・・後で職員室に来い」 中間休み。 授業中にれいむを馬鹿にしてはしゃいだ数名が教師にこっぴどく叱られ、 戻ってきたころには全員泣きはらしたのか、目の周りが真っ赤だった。 その日の残りの授業はれいむのクラスだけが延々と道徳の授業を行った。 クラス全員が不機嫌になった。 ある子供は余計な波風を立てる馬鹿なクラスメートに、 ある子供は突然やってきた空気の読めない体付きれいむに。 そして、その日最後の授業の時間。 クラスの女子が海外に引っ越すことになっているらしく、そのお別れ会となった。 その頃には教師により、いじめっ子達が制裁されたことにより、れいむの機嫌は良くなっていた。 そして、放課後。 「おいコラ! 糞饅頭! てめーのせいで怒られたじゃねぇかよ!!!」 がっ! 「いだいいいいぃぃぃぃいい!!! やべでええぇぇぇぇえええ!!!」 「うるせえよ!!! 大体、何でてめーのような害獣をクラスメートにしなきゃいけねーんだよ!!!」 ぼこすかとれいむをリンチにする少年達。 「ゆぎゃああああ!!! いだいいいいぃぃぃ!!! ぼおやべでえええええ!!!」 泣き叫んでも少年達の怒りは収まらない。 れいむの頭が変形し、所々餡子が染み出した頃。 「こら! あんたら! なにやってるの!!!」 「うわ、やべ・・・」 今日、お別れ会をした少女だった。 少女は教師に言いつけ、怒り心頭の教師は体育館裏でたむろしていた少年達を見つけ、 さっきよりも酷く叱り、説教した。 「ありがどおおおお!!! おでえざん!!」 「あはは、別に良いのよ。私アイツらのような悪ガキ大嫌いだし」 少女がれいむに肩入れしたのはれいむのためではなく、 たとえどんな相手であろうともいじめのようなゲスな行為を許さない性格の為である。 「ゆっぐりじようね!!! これがらもでいぶどいっじょにゆっぐりじようねええええ!!!」 「ごめんね、私、明日からもうここにはいないの。」 「ど、どぼじで、どぼじでなのおおおおおおお!!!」 お別れ会の意味も理解できなかった餡子脳が叫ぶ。 少女は丁寧に自分が海外に旅立つことを伝え、別れの挨拶を言った。 「ゆっぐりじでいっでよー! ゆっぐりじでいっでよー!!!」 「きっとまたいつか会えるよ、じゃあねー」 そう言うと少女は急いで帰っていった。 「もうがっこうには行かないよ!!!」 ゆっくりんぴーすに戻ったれいむはそう切り出した。 今まで友好的だと思っていた人間が自分を饅頭だと罵り、虐めてきた。 せっかく仲良くなれると思った子はいきなりいなくなった。 もはや学校に行きたいなどとは言えなかった。 職員は最初困惑したが、れいむが傷だらけであったことと、教師の証言から、 学校で虐められた事を把握し、責任者を交え会議した結果、れいむは学校に行かせず 自分たちで育てることにした。 そしてその次の日から、れいむに自分が人間でなく饅頭「ゆっくりれいむ」であることを教え込んだ。 「ゆー! ちがうよ! れいむはにんげんさんだよ!!! おかしなこといわないでね!!!」 最初こそ否定したが、様々な例を交え、根気よく教え込んだところ、 数週間掛けて自分が饅頭「ゆっくりれいむ」であることを理解した。 「れいむはにんげんさんじゃなかったんだね・・・、だからいじめられたんだね・・・」 れいむは悲しげに呟くが職員はこれで悩みの種が一個減ったことを喜んだ。 れいむが自分の正体を悟った次の日から、職員はれいむと通常のゆっくり種を引き合わせ、 仲良くさせようと試みた。 しかし、 「ゆっ! へんなれいむとはゆっくりできないんだぜ!!!」 「どぼ(ry」 「れいむのはじさらしはさっさとしんでね!!!」 「ゆ"うう"ううう"うう"う!!!」 通常種達はれいむをけなし、迫害した。 もともとゆっくりというナマモノは異端を徹底的に攻撃する傾向にある。 れいむは異端中の異端だった。 職員達は何とかれいむをゆっくり達と仲良くさせようと頑張ったが全て無駄だった。 そんな中、れいむは「人間になりたい」と言うようになった。 「れいむ、にんげんさんになって、やさしいおねえさんとゆっくりしたいよ」 「にんげんさんになってかわいいあかちゃんほしいよ」 人間になればもう、人間からは虐められない。 自分を迫害するゆっくり種ではなくなる。 この二点を求め、職員に懇願するが、それはさすがの職員達にも叶えられなかった。 それから数年後・・・。 「れいむ、この方が体を提供してくださる男性だ」 「こうしてれいむは人間の体を手に入れ、綺麗なお姉さんを恋人にしてすっきりー! しましたとさ」 「・・・え・・・ぁ」 みるみる女の顔色が悪くなる。 「まさか、あなたが・・・」 今にも失神しそうな顔だ。 「お、おいおい、俺はれいむじゃないぜ? しっかりしろよ」 「ひっ! じゃ、じゃあまりさなの!?」 「なぜにそうなる」 男はふぅと一息ついて話し始める。 「なあ、君。俺と君はそれぞれ何歳だ?」 「え、23・・・くらい?」 「両方とも?」 女はこくりと頷く。 「残念、君は23だが俺はもう3Xだ。」 「え? そんな、だって一緒に入社式に出たじゃない!」 「確かに入社式は一緒に出た。」 「俺はな、まだ社会人成り立ての頃に交通事故にあってな、 しばらく植物人間になってたんだよ。 しかもなぜかは分からんがその間体の成長も老化も完全に止まったらしいんだ。 んで、事故から数年、俺は奇跡的に回復したんだよ。 そして、俺はリハビリに勉強に、就活。全て病院でこなしたのさ。 それから、君と出会った訳だ。 だから、俺の出身校に行っても俺の事なんて知ってる奴がいないのさ。 なんせ、俺の同級生は君よりもずっと年上だもの。」 「なんだ、そう言うことだったんですか。焦りましたよ、全く、もう」 「そうかいそうかい、今度、俺の家に来な。おじさんの卒業アルバム見せてあげるから」 「はぁい! それにしても、良くできた話ですね。 私、すっかり騙されちゃいましたよ」 「全て嘘ってわけじゃないさ」 「え?」 「俺が植物状態から回復した理由はな、 話の最後に医者がれいむに言ったろ? 体を提供云々。 あの医者もよほどせっぱ詰まったんだろうね。 俺の体をれいむにやるって言ったら、俺の意識が回復したそうなんだ」 「え? それじゃあ・・・」 「話のれいむの事は最後の人間の体を手に入れて、以外は全部本当のことさ。」 「あ・・・あ、」 「そ、そのれいむは今どこに?」 「病院さ、俺の体が意識を取り戻して、れいむにやる体が無くなったら、 今度はれいむが植物人間ならぬ植物ゆっくりになったそうだ。見に行く?」 二人が病院に向かうとれいむはベッドに寝かされ、 額にはオレンジジュースの点滴の針が刺されていた。 「これがそのれいむさ。」 「れいむ、れいむ! 私よ! 覚えている!?」 男が何やってんだよと突っ込もうとした瞬間、れいむが目を覚ました。 懐かしい声だよ! 学校で優しくしてくれたお姉さんの声だよ!!! 「懐かしい声がするよ・・・、学校で優しくしてくれたお姉さんだね」 しわがれた声でれいむはしゃべる。 「そうよ! 私よ!」 れいむが目を開ける。 「ゆぅ? おねえさんだれ?」 年月は少女の面影を女から奪い取っていた。 「ふふ、仕方ないよね。あのときからもう十何年も経っているもの」 「ゆっ! 十何年も!!!」 れいむがそう言うと突然れいむの体が黒ずみだしてきた。 「なんでおごしだの!? なんで、なんで」 普通、ゆっくりの寿命は数年程度である。 れいむは自分がゆっくりであることを理解していた。 だから、今の自分がものすごく年をとり、死んでしまう年齢となったことを認識した。 その瞬間、体は急激に劣化を始め、れいむから生命が逃げていった。 「もっと、ゆっくり、した、かった、よ」 れいむは切なる願いを述べて息を引き取った。 終わり 言い訳タイム 年齢計算は合ってるかなぁ? →何も考えずに書いてたからよくわからんのです ここがおかしい →こめんなざいいいいいいいぃぃぃいい!!! 本当は数KBのショートSSにしたかった。 でも気付いたら結構長めになった。 今まで書いたSS ドスまりさとゆうか1~3 ゆっくり闘技場(性)1 不幸なきめぇ丸 名物餡玉 行列の出来るゆっくり スカウトマンゆかりん前・後 ファイティング親子とゆっくり まりさの商売 ぱちゅりーの失敗1~4 盲点 進化 ぶっかけ!ぱちゅりー!
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ゆっくりチルノの一日 紅魔館の前に広がる巨大な湖。 正確な大きさすら分からぬその湖畔には妖精からゆっくりまで、様々な生物が生息している。 それは生態系ピラミッドの下層に位置するゆっくりにとっては天敵も多いという事実を示しているが、 それでもやはり豊富な水や食料と言うのは捨て難い魅力らしく、ゆっくり達は日々危険にさらされながらも ゆっくりとした生活を送っていた。 そんなゆっくり達のうちの一匹、水色の髪に薄い色の羽、 氷精を模したゆっくりであるゆっくりチルノは今朝も狭い巣穴の中で起床の一声を挙げた。 「おはよう!あたいってばゆっくりね!」 近くには誰もいないのだが、そんなことは気にせずに伸びをする。 「ん~~~っ!」 さて、さっそく朝食を取ってこよう そう思ったゆっくりチルノは草むらに穴を掘っただけの小さい巣穴から元気よく飛び出す。 実は昨晩のうちに明日の朝食にしようと思って巣穴に木の実をいくらか蓄えていたのだが、 そんなことはもう忘れてしまったらしい。 まぁしょうがないよね!⑨だもの! 夏の暑い日差しもこんな朝早くは厳しさを感じさせない。 だが晴れ渡った青空はその日も暑い一日となることを告げていた。 そんな日差しの射す湖畔をぴょんぴょんととび跳ねるゆっくりチルノ。 しかし空腹に悩まされているその体はあまり元気がない。 「う~~………あたいってば腹ぺこね……」 誰にともなく呟きながら餌を探すゆっくりチルノ。 そもそも燃費の悪いゆっくりにおいて昨晩から何も食べていないのだから元気がないのは当然であった。 しかしどれだけ探しても餌となりそうな虫も花もなかなか見つからず、段々とその足取りは重くなっていく。 実際は探し方が悪いだけでそこら中に食べられる物はあったのだが、 ゆっくりの中でも極めつけの餡子脳、ゆっ⑨りブレインではそんなことは分かるはずもなかった。 あたいってばここで死ぬのかしら、とゆっくりチルノ空腹で朦朧とした意識で考え始めていたその時、 急に足場を踏み外して湖の近くの池とう(小さい池みたいなもの)に突っ込んでしまった。 「1+1=11!!?」 意味不明な⑨ソウルを叫んでぷかぷかと池とうに浮かぶゆっくりチルノ。 早く上がらなきゃ、と僅かに残った意識が警鐘を鳴らすが最早そこから脱出する力は残されていなかった。 頭の中に走馬灯が流れ始める。 記憶力が無いので1秒で終わった。 「ゆっくりした結果が⑨だよ……!」 ⑨なこととゆっくりしていたことはあまり関係ないのだが、 それはともかくそんなつぶやきとともにゆっくりチルノの意識は闇に沈んだ。 「ゆっゆっゆ~♪ゆゆゆ~ゆ~♪ゆ~ゆゆ~♪」 何やら音痴な歌声が聞こえてきてゆっくりチルノは意識を取り戻した。 体は相変わらず池とうに突っ込んだままだが、先ほどと違って空腹は満たされ、体は元気に充ち溢れている。 「んっぷはっ!あたいってばゆっくりね!」 何で元気になったのかはよく分からないが、とにかく元気になって復活したのだ。 あたいってばひょっとして最強に運が良いのかもしれない。 と幸せ脳回路で考えたゆっくりチルノ元気いっぱいな叫び声とともに池とうから抜け出した。 実際は運が良いとか何か特別なことがあったとかいうわけではなく、 ただ単にゆっくりチルノの体が氷でできており、池とうにはまったことで体が勝手に水分を吸収して 回復しただけなのだが、そんな理屈は当の本人は知る由もなかった。 だって⑨だもの。 因みにゆっくりチルノの氷は微妙に糖分を含んでおり、溶かすと砂糖水になっておいしいらしい。 ここでなんで氷のくせに常温で溶けないんだとか、そもそも氷が動くわけないだろとか言う突っ込みは、 饅頭が生きている世界においては野暮である。 さて、池とうから上がったゆっくりチルノは音痴な歌声の方に向かって跳ねていく。 「あたいってばゆっくりね!」 向かった先には予想通りゆっくりがいた。 それも一匹ではなくゆっくりれいむの家族である。 ゆっくりチルノよりも二回りは大きな母れいむ一匹に4匹の小さい赤ちゃんで構成されたその家族は、 歌を歌いながらお散歩を楽しんでいる最中のようだ。 「「ゆ?ゆっくりしていってね!」」 ゆっくりチルノに気付いた一家がお決まりの挨拶をする。ゆっくりチルノもそれに応えて 「ゆっくりしていってね!れいむってばゆっくりね!」 と返す。 「ゆ?おねえさんゆっくりできるちと?」 赤ちゃんれいむの問いかけに 「あたいってばゆっくりね!一緒にゆっくりしようね!」 とゆっくりチルノが楽しそうに返す。 「「一緒にゆっくりしようね!」」 あっという間に仲良くなった一家とゆっくりチルノは一緒に遊び始めた。 「ゆー。それにしても暑いよ!ゆっくりできないよ!」 しばらく遊んだあと、体中から汗を流しながら母れいむがいった。 太陽は既に天頂近くまで上っており、夏の暑い日差しがぎらぎらと降り注ぐ。 先ほどまではキャッキャッと楽しそうに遊んでいた子れいむ達も今は暑さに疲れて ぺたんと地面にへたり込んでいた。 「あたいってば暑くてもゆっくりね!」 そんな中、氷でできたゆっくりチルノだけが元気にしていた。 「ゆ?おねえちゃんつべたい?」 ふと一匹の子れいむがゆっくりチルノから発せられる冷気に気づき、側に近づいて行く。 「ゆー!おねえちゃん涼しくて気持ちいいよ!ゆっくりできるよ!」 「ゆ?ほんと?」 「れいむも涼しくなりたい!」 「ゆっくりさせてね!」 一匹の子れいむの言葉を皮切りにして次々と他の子れいむたちもゆっくりチルノに近づいて行った。 「ゆ!ほんとだ!とっても涼しいよ!ゆっくりできるね!」 「おねえちゃんすごいよ!」 「ゆっくりさせてね!」 そう言いながら4匹の子れいむはゆっくりチルノを取り囲んでその冷気にあたり、ゆっくりし始める。 「あたいってばとってもゆっくりねっ!」 ゆっくりチルノもわけはわかってないがとにかく子れいむ達が自分を頼ってくれるのが嬉しいようだ。 一方母れいむは 「おかあさんも入れてね!おかあさんもゆっくりさせてねっ!」 とその周りをぴょんぴょん飛び跳ねている。 自分も冷気にあたって涼みたいようだ。 しかしすでに4匹の子れいむで囲まれたゆっくりチルノの周りに巨大な母れいむが入る余裕はなく、 何とか押し入ろうと子れいむ達をぐいぐい押し始めた。 「ゆゆっ!どいてね!おかあさんも入れさせてね!」 しかしそんな母の態度に子れいむたちから非難の声が上がる。 「ゆゆっ!おかあさん押さないでね!」 「そんなにされたらゆっくりできないよ!」 「おかあさんはあっちでゆっくりしててね!」 「ここにおかあさんのはいる場所はないよ!ゆっくりりかいしてね!」 「どうしてそんなこというのぉぉぉ!!?」 一家が危うく親子げんかに発展しかけた時、ひらひらと何処からか蝶が飛んできた。 「ゆ!ちょうちょさんだ!ゆっくりしていってね!」 さっきまで押し入ろうとしていたのも忘れて蝶を食べよう追いかける母れいむ。 「ゆっ!ゆっ!ゆっくりして言ってね!早く食べられてね!」 何とか飛び跳ねて捕まえようとするもうまくかわせれてなかなか捕まえることができない。 そんな母の様子を、子れいむ達はゆっくりチルノの近くで涼みながら見ていた。 「ちべたいねー」 「きもちいねー」 「あたい!」 と、母親に追い立てられた蝶がふらふらとゆっくりチルノの方に飛んでいき、その顔の中心に止まった。 蝶の方も暑かったのかもしれない。 しかし突然の事に驚いたチルノは対応できず 「ゆっゆっゆ……ゆっくし!」 とくしゃみをしてしまったのだ。 本人は自覚していないがくしゃみはゆっくりチルノ最強の武器である。 体の奥の冷たい冷気と水滴を同時に飛ばすことによって向いている方向の物を一瞬にして凍らせてしまう 破壊力を持つのだ。 その冷気はゆっくりレティやゆっくりもこーでも無ければ耐えることはできないだろう。 上手く活用すればあっという間にゆっくりチルノはゆっくりピラミッドの上位まで 上り詰める事が出来るかも知れない。 最も意図してくしゃみしたりなんて出来ないので意味ないんだけど。 さて、そんなわけでその行動は本人の意思にかかわらず相応の結果をもたらす。 すなわち、その時ゆっくりチルノの正面にいた子れいむの凍結という結果を。 「ゆっ!」 短い悲鳴を上げて驚愕の表情をして凍結した子れいむを見てその場にいた他のゆっくりたちの表情も凍りつく。 茫然としたゆっくり達が凍った子れいむを見つめる凍った時間の中で、 くしゃみに驚いた蝶だけが時間が動いているようにひらひらと飛んで行った。 数秒後、我にかえった母れいむが激昂してゆっくりチルノに掴みかかる。 「れっ、れいむの赤ちゃんになにするのおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!??」 その叫び声を受けて他のゆっくり達の時間も動き出す。 「ゆっ、こんなことするおねえちゃんとはゆっくりできないよ!」 「ゆっくりどっかにいってね!」 「ゆっくりしね!」 今まで涼ませてもらっていたことも忘れてゆっくりチルノを罵倒しながら母れいむの陰に逃げ込む子れいむ達。 一方激昂した母れいむはゆっくりチルノを責め続ける。 「赤ちゃんを元に戻してね!早く元に戻してね!今すぐ元に戻してね!直ちに元に戻してね! マッハで元に戻してね!元に戻せたら許してあげてもいいよ!」 「ゆ、ゆー……」 一方責められているゆっくりチルノ。 さすがに自分が悪いことは分かっているのか申し訳なさそうにしていて何も言い返さない。 だが、凍ってしまった子れいむをすぐに戻す方法など思いつかなかった。 「黙ってないで何か言ってね!早く溶かしてあげないと二度とゆっくりできなくなっちゃうよ! それでもいいの!?」 「ゆ……ゆ!?」 ーその時、ゆっくりチルノに電流走る―! 溶かす!そうだ、溶かせばいいのだ! ゆっくりチルノはそのゆっ⑨りブレインにも関わらず、水に沈んだゆっくり達がどうなるか知っていた。 そう、水に「溶ける」のだ。 ちょうど近くには大きな湖がある。そこに入ればすぐにでも「溶ける」だろう。 色々と間違っているがとにかくゆっくりチルノにとってこれは名案に思えた。 この子れいむを元に戻すことが出来ればまた一家と仲良くゆっくりできるに違いない。 あたいってば天才ね! さて、そうとなれば善は急げ。ゆっくりチルノは母れいむに言い放った。 「分かったよ!あたいがこの子を「溶かし」て元に戻して来るよ!あたいに任せてゆっくり待っててね!」 そう言うと凍った子れいむを口にくわえ、一目散に湖に向かって走って行った。 湖畔に辿り着いたゆっくりチルノは、さっそく湖に凍った子れいむを浮かばせた。 ここで勢いよく落として氷を砕いてしまうような真似はしない。 同じ過ちを犯さないなんてあたいってば天才ね! ……実際このゆっくりチルノにそんな経験はないのだが、多分平行世界の記憶でも流れ込んできたのだろう。 とにかく、これで子れいむは氷が溶けて元に戻るに違いない。 戻った時にはきもちよく「すっきりー!」という声を聞かせてくれることだろう。 そう、「すっきりー!」という声が聞ければいいのだ。 ゆっくりチルノはゆっ⑨りブレインにそう刻み込むと、凍った子れいむがその声を聞かせてくれるのを 今か今かと待ちわびた。 落とされた凍結子れいむはぷかぷかと浮かんだあと、はたしてゆっくりチルノの思惑通り融解しだす。 その様子を見て得意満面のゆっくりチルノ。 「やっぱりあたいってばゆっくりね!」 表面の氷が溶け、やがて子れいむ本体にも水温が伝わりその体が徐々に熱を取り戻し始める。 「…ゅ…さむいよ……ゆ…?」 ついに子れいむが意識を取り戻した。 無事子れいむが生き帰ったことに全身で喜びを表すゆっくりチルノ。 すぐに元気になって「すっきりー!」という声を聞かせてくれるに違いない。 しかし聞こえてきたのは予想と真逆の悲鳴だった。 「ゆ……ゆ!?い、い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!み゛ず!み゛ずがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 急に寒くなって意識を失い、意識を取り戻したらそこは地獄だった。 子れいむの経験を端的に表すとこうなる。 本能的に水の危険性を知っている子れいむは、何とか岸に上がろうともがくがもがけばもがくほどその体は 岸から離れていく。 「ゆ?れいむってば何してるの?遠くに行かないで早く戻ってきてね!」 予想と違った状況にゆっくりチルノは慌て始める。 どうしてだろう、子れいむを「溶かせ」ばいいはずなのに。 「お゛ね゛え゛ち゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛ん゛!!だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 ゆっくりチルノの姿を認めた子れいむは必死に助けを求め始めた。 しかしどんどん離れていく子れいむはもはやゆっくりチルノが届く範囲とはかけ離れた位置にいた。 「なんでえええええええ!?!?どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおお!?!?」 幸運なことにゆっくりチルノは知っていた。 ゆっくりは水に「溶ける」ということを。 そして不幸なことにゆっくりチルノは知らなかった。 ………自分は水に入っても溶けないという事を。 「ゆ、ゆー。」 母れいむに責め立てらてた時のような困惑の声をあげるゆっくりチルノ。 助けにいこうとすれば自分が溶けてしまう。 何がいけなかったのだろう、自分は母れいむが言ったとおり子れいむを「溶かし」ただけなのに。 「ゆぅー!早くこっちに来てね!あたいが引き上げるよ!だから早くこっちに来てね!」 「ぞんな゛あああああああああああ!!!!だずげでよおおおおおおおおおお!!!」 ゆっくりチルノにできるのは応援の言葉を贈るだけだった。 やがて水を吸った子れいむの皮がぶよぶよと伸びはじめ、体内から餡子が漏れ始める。 その事に気づいた子れいむが涙と絶望と恐怖と後悔にまみれた悲鳴を上げた。 「いやだああああああああああああああああああああ!!!じにだくない!じにだくないよおおおおおおお!!! も゛っどゆっぐりじだいよおおおおおおおお!!まだゆっぐりじだいごとだぐざんあ゛っだのにいいいいいいい!! ぎょうはがぞぐみんなでどっでもゆっぐりずるはずだっだのにいいいいいいいい!!! まりざとあじだあぞぶやぐぞぐもじでるよおお!がまんじでどっでおいだりんごまだだべでないよおおおお!! ほがのおいじいものももっどもっどだべだいよおおおおお!!いつかどおぐまでおざんぽじだがっだよおお!! おうだももっどうまぐなりだがっだよおおおお!!ぶゆのゆぎもみだがっだよおおおおおお!! ぞれにいづがおがあざんになっでおがあざんとれいむどこどもだぢでゆっぐりしたがっだよおおおおおお!! それなのにどおじでれ゛いむ゛がごんなめ゛に゛あう゛どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!? なにもわるいごどじでないのでぃいいいいいい!!おがじいよおおおおおおおおおおおお!! ゆめならざめでええええええええええ!!どうじでざめないのおおおおおおおおおおおお!?!? がみざま!もうゆるじで!ゆっぐりじでないでれいむをだずげでよおおおおおおおお!!! おがーざん!おねーぢゃん!まりざ!だずげでええええええええええええええええええええ!! どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおおお!?!?もうやだおうぢがえるううううううううううう!! ゆっぐりじだいいいいいいいいいいいいい!ゆっぐりざぜでええええええええええ!!! ごんなどごろでじにだぐないのにいいいいいぃぃ…ぃ……あ、あんごが……あ………ぁ…………」 胸の内の全てを吐露するようなうざくてクソ長い断末魔の後子れいむの声は聞こえなくなっていった。 やがで皮も餡子も全て水に溶け、残されたリボンだけが子れいむの生きた証であるかのように水面に ぷかぷか浮かんでいた。 「ゆっ……うっうっ……」 その一部始終を見届けていたゆっくりチルノは耐えられない悲しみに涙を流し始める。 涙なのか氷が溶けてるだけなのかハタから見ると良く分からないが本人は泣いているつもりである。 「うっうっ……うあああああああああああああああああああああああ!!!」 耐えきれずついに大声をあげてゆっくりチルノは泣き始める。 どうして、どうして。そう聞きたいのはゆっくりチルノの方だった。 自分は子れいむを助けるために湖に落としたのに。 何で子れいむは死んでしまったのだろう。 母れいむの言うとおり「溶か」そうとしただけなのに。 わからない。わからない。 ただ悲しかった。さっきまで一緒に遊んでいた子れいむが死んでしまった事が、ただ悲しかった。 「うえええええええええええええええええええええええええんんん!!!!!」 あたりにゆっくりチルノの悲壮な鳴き声が響き渡った。 そしてひとしきり泣いた後 ゆっくりチルノは泣いていた理由を忘れた。 精神の防衛本能なのかとにかくなぜ自分が泣いていたのかすっぱり忘れてしまった。 さすが⑨!俺達に出来ない事を(ry そしてその後に残ったのは思う存分泣いてすっきりしたという感覚のみ。 「すっきりー!」 思わず声に出して叫ぶゆっくりチルノ。 そういえばよく覚えていないが確か自分は「すっきりー!」という声を聞きたがっていた気がする。 素晴らしい。目的は達成されたのだ。 何となくうれしい気分になるゆっくりチルノ。 「あたいってばゆっくりね!」 と思わず叫ぶ。そして湖に背を向け、戻ろうとしたその時 「やっと見つけたよ!」 という声が響いた。驚いてそちらを見ると先ほどのゆっくりれいむ一家だった。 いきなり子れいむをくわえて走り去ったゆっくりチルノをずっと探しまわっていたのだろう。 母はともかく子供たちはやや疲れた表情をしている。 「れいむの赤ちゃんはどこ!?早くれいむに返してね!」 母れいむがゆっくりチルノの側に娘がいないのを見て急いで詰め寄る。 しかし当のゆっくりチルノは困惑の表情を浮かべるばかり。 何故ならこの一家のことも既にゆっ⑨りブレインからは消え去っていたからだ。 「おねーさんだれ?なにいってるのかわからないよ?」 正直に自分の気持ちを言ったゆっくりチルノだったがその言葉を聞いた母れいむは驚愕の表情を浮かべたあと、 体(顔?)中を怒りで真っ赤にしてゆっくりチルノに詰め寄った。 「な゛っ……ふざけるのもいい加減にしてね!今すぐ赤ちゃんを返してね!じゃないと本当に許さないよ!」 そう言ってゆっくりチルノに軽く体当たりをする。 「ゆっ!?なに!?」 突然ことに後ろに転げるゆっくりチルノ。それを視線で追った母れいむはその先に信じられないものを見た。 湖に浮かぶ子れいむのリボンである。 「あ、あ、あ、あ……」 信じられない、といった表情で母れいむが体を震わせる。そして次の瞬間感情が爆発した。 「れいむの赤ちゃんに何したのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」 ようやく体勢を立て直したゆっくりチルノにゆっくりとは思えぬ勢いで体当たりする母れいむ。 しかも今度は手加減抜きの全力である。 「れいむの赤ちゃんをどうしたの!?今すぐ答えてね!!赤ちゃんはどこ!?」 涙を流しながら激怒の表情でゆっくりチルノを問い詰める。 それを見て他の子れいむ達も状況を察したのか、ゆっくりチルノに攻撃を始めた。 「れーみゅをかえせええええええええええ!!」」 「よくもおねーちゃんを殺したなああああああああああ!!」 「ゆっくりしねえええええええええええええ!!!」 一家の総攻撃が始まる。 氷でできたゆっくりチルノは比較的硬いのでダメージは少ないが、それでも袋叩きはたまったものではない。 まるで抵抗できずに 「あたいは何も知らないよ!本当だよ!信じてよ!」 ただ必死に弁解をするだけだ。 「れいむの赤ちゃんを返せえええええええ!一緒にゆっくりしてた、これからもゆっくりするはずだった 赤ちゃんを返せええええええええ!!」 「「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」」 ひたすら体当たりを続けるゆっくり一家。並のゆっくりならとっくに餡ペーストになっているだろう。 「れいむってばゆっくりしてないよ!今すぐ辞めてよ!」 ゆっくりチルノは責められる心当たりがないものの必死にやめるよう懇願する。 やがてただ攻撃してもあまり効果が無い事に気づいたゆっくり一家は新たな行動に出た。 「「「ゆっくり落ちてね!」」」 ゆっくりチルノを湖に突き落したのである。 「ゆっ!?やべで!だずげてよ!」 先ほどの子れいむの凄絶な死にざまを覚えているわけではないが、それでも水はとても危険なものだと 頭に刻まれている(本当は何ともないのだが)ゆっくりチルノは必死にもがく。 しかし子れいむの時と同じようにもがけばもがくほど体は岸から離れていってしまう。 「あたいってば水だめなのおおおお!いやああああああああ!!!助けてえええええ」 必死に助けを請うゆっくりチルノ。 それに対してゆっくり一家は罵声を浴びせる。 「そうやってたすけをもとめてたれーみゅを殺したんだね!」 「おねーちゃんと同じくるしみを味わってしね!」 「おねーちゃんの仇、ゆっくりしね!」 「死ぬまでここで見ててあげるよ!感謝してね!だから苦しみながらゆっくり死んでね!」 「⑨~~~~~~!?!?!?」 ついにゆっくりチルノはパニックに陥る。 本当はゆっくりチルノは羽を使って飛ぶことができるため、簡単に水から脱出する事が出来るのだが、 パニックに陥った彼女はそれに気づくことができなかった。 例え冷静であっても自分が飛べる事を思い出せたかあやしいが。 「「ゆっくりしね!ゆっくりしね!ゆっくりしね!!」」 もはや一家は完全にゆっくりしねコールだ。 どうやらゆっくりチルノが溺れ死ぬまでそこで鑑賞し続けるつもりらしい。 だが溺れることもなく、また脱出する方法も思いつけないゆっくりチルノはいつまで待っても死ぬことはない。 このままではいつまでもコールを続けることになっただろう。 そしてその事に気付けなかったのが、ゆっくり一家の命取りとなった。 ゆっくりチルノを湖に落としたらさっさと立ち去っていればよかったのに、大騒ぎを続けたせいで、上空を 飛んでいた天敵に自分たちの存在を気づかせてしまったのだ。 「うー?」 気分よくお空を飛んでいたれみりゃは下の湖面が騒がしい事に気づいた。 自分のご機嫌なお散歩を邪魔するなんて許せない。食べちゃうぞ。 そう思って下降しながら湖面に近づいていくれみりゃ。 そこによく見るゆっくりれいむの一家とあまり見かけない青いゆっくりを見つける。 何やら騒いでいるようだがれみりゃにとってはどうでもいい。 それよりお腹がへってきた。やっぱりみんな食べちゃおう。 そう思って一気に狩りの態勢に移るれみりゃ。 ゆっくり一家が気付いた時には、すでに手遅れだった。 「れみりゃだぁぁぁぁーーーー!!」 一匹の子れいむの叫びで一家が慌てて空を見上げた時、もうすぐそばまでれみりゃが近づいていた。 逃げる間もなく、二匹の子れいむがれみりゃの両手に捕われる。 「い、いやあああああああああああああ!!はなしてえええええええええええ!!」 「れーむ食べられたくないよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 悲鳴を上げる子れいむ達。 残った一匹の子れいむは訳もわからず一目散に逃げ出して行った。 それに対して一瞬ためらいを見せたものの果敢にれみりゃに立ち向かう母れいむ。 もう一匹たりとも自分の赤ちゃんを死なせたりするものか。 「れーむの赤ちゃんをはなせええええええええええええええええ!!!」 その瞳には強い決意が宿っていた。 だがれみりゃにはそんな母れいむの気持ちは分からない。 両手の小さいれいむを見て、自分に向かってくる大きいれいむを見て、それから考える。 ―両手が塞がっていては大きいれいむが食べられない― 大きいれいむを捕まえて食べるためには両手を空ける必要がある。 ではどうするか。 そこでれみりゃが取った行動は小さいれいむをさっさと食べて両手を空けるという合理的な方法 ――ではなかった 「うー!小さいのはいらないからぽいするの!ぽい!」 そう言って両手の子れいむを湖に投げ込んだのだ。 「み、みずいやああああああああああああああ!!れーむ死んじゃうよおおおおおおおおおおお!!」 「おねーちゃんみたいになりたくないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 水に放り込まれた子れいむ達が絶叫を上げる。 それを見て母れいむは慌てて方向転換して子れいむ達に向かって突進する。 「待っててね!今すぐ助けるからね!」 そして湖に飛び込もうとジャンプした瞬間れみりゃの手に捕われた。 「ゆ!?ゆっくりしないで離してね!赤ちゃんが死んじゃうよ!」 慌ててれみりゃの手の中でもがく母れいむ。 だがその訴えはれみりゃの耳を右から左に抜けていった。 れみりゃが考えるのは別のこと。 ―大きいれいむも片手で持てる― つまりそれはもう片方の手にもう一匹持つことができるということだ。 どうせなら両手に持たないともったいない。 そう考えたれみりゃはのこったゆっくりの物色を始める。 「うー♪一番おいしぞうなのをだべるどぉー♪」 結果、れみりゃが選んだのは残ったゆっくりの中では一番大きく珍しい、ゆっくりチルノだった ゆっくりチルノは既に自分が何で水の中にいるか忘れていた。 もがくのも疲れたので顔を水につけて水の中を見ながらぷかぷか浮いている。 「おさかなさんがいっぱい!あたいってばゆっくりね!」 もごもごと泡を出しつつ誰にも聞こえないつぶやきをもらす。 「!?」 と、急にその体が持ち上げられた。れみりゃである。 「う~♪あっかいぷでぃんとあっおいぷでぃん~♪」 楽しそうなその歌声の間違いに突っ込むものはこの場にはいなかった。 ただ両手にゆっくりを抱えて楽しそうに飛び上っていく。 「はなじでえええええええええええええ!!!あがぢゃんが!れーむのあがぢゃんが死んじゃうううううううう!!」 「あたいってばお空を飛んでるみたいね!」 対照的な声音を上げつつ、れみりゃに抱えられた二匹は空に上がっていった。 「おがあざああああああああああんん!!いがないでえええええええええええええええ!!」 「どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」 絶望の声を上げる二匹の子れいむを残して。 飛び上がったれみりゃはさて、どっちから食べようかと二匹のゆっくりを眺めた。 かたや 「れーむの赤ちゃんが……なんで……どうじでごんなごどにいいぃぃ……」 悲しみに暮れて嗚咽を漏らすゆっくりれいむ。かたや 「たかい!たかい!あたいってば最高ね!」 自分の危機的状況を理解していないのか、楽しそうにしているゆっくりチルノ。 ちょっと悩んだ後、れみりゃはとりあえず大きい方から食べることにした。 「う~♪おっきいぷでぃんをだべちゃうど~♪」 「ごべんねえええええええ……守れながっだおがあざんをゆるじんぶぎゅっ!?」 自分の世界に入り込んでいた母れいむにいきなり走る激痛。 れみりゃが後頭部を齧り取っていた。 「いだいいだいやべでえええええええええ!!れーむまだあがぢゃんづぐるんだがらああああああああああ!! たべぢゃらめえええええええええええええええええ!!!」 「うっ♪うっ♪うぁうぁ~♪」 絶叫を上げる母れいむに楽しそうなれみりゃ。 ―こっちのぷでぃんはなかなかの甘さだ。もう片方のぷでぃんはどうだろう― そう思って今度はゆっくりチルノを食べることにするれみりゃ。 どうやらこのれみりゃは本物のプリンを食べた事が無いらしく、 食べ物の総称としてぷでぃんと言っているらしかった。 「う~♪あ~ん♪」 大口を開けてゆっくりチルノに噛み付く。 がぶっ その瞬間二つ分の悲鳴が上がった。 「い、いだいいいいいい!あだいってば食べられないいいいいぃぃぃぃ!」 「う゛あ゛ぁぁぁぁぁ!ざぐや゛ああああああああああぁぁぁぁ!!」 何度も述べているようにゆっくりチルノは氷である。 当然固い。そして冷たい。 そんなものに思いっきり噛み付けば……痛いに決まっている。 「ざぐや゛あああああああああああ!!ざぐや゛どごおおおおおおおおお!?!?」 噛み付いた歯から頭に響く冷たさと痛みにれみりゃは悲鳴を上げて見知らぬ人物の名を呼ぶ。 そして勢いのまま抱えていた二匹を放り出し、何処かに飛んで行ってしまった。 「い、いやああああああ!!!!いがないでええええええええええええ!!」 「あたいってばおぢぢゃうのおおおおおおおおお!!」 放り出された二匹はたまったものではない。 さっきまで離してと言っていたのに今度はそのれみりゃに助けを乞う。 が、その願いが聞き入れられることはなかった。 「もっどゆっぐりじだがっだよおおおおおおおおおおお!!!」 「アイシクルウォールイーーーーーズィィィィィィィ!!」 重力に任せて二匹はばらばらに落ちていった。 さて、ここで場面は変わってさきほどの襲撃から逃げ出した子れいむである。 パニックになって逃げ出してしまって家族と離れ離れになったが、今は何とか落ち着きを取り戻していた。 そしてその落ち着きを取り戻した餡子脳は先ほどの襲撃の一つの結論を導き出していた。 ―もう自分の家族はいない― れみりゃの恐ろしさは子れいむもよく知っている。 あの状況で他の家族が助かったとは思えない。 これからは、自分はひとりで生きていかねばならないのだ。 「ううっ、おかーしゃん……おねーちゃん………」 ついさっきまでみんなでゆっくりしていたのに、いきなり自分一人になってしまった。 その悲しみはいかほどのものであろうか。 「みんなともっとゆっくりしたかったよ……でも……これからはみんなの分までれーむがゆっくりするね……」 新たな決意を胸(顔?)に子れいむが顔をあげた時、上から懐かしい声が聞こえてきた。 「ゆううううううううううううううううううううっっっ!!!!」 「おかーしゃん!?」 その声に驚いて上を見上げる子れいむ。そこには空からものすごいスピードで 自分に向かってくる母の姿があった。 「ゆ!?おかーしゃん!てんごくから会いに来てくれたんだね!とってもうれしいよ!またいっしょに ゆっくりしようね!!」 喜びでぴょんぴょん飛び跳ねつつ母へと言葉を投げかける子れいむ。 そんな娘の姿に母れいむも気付き、思わず喜びのあまり落下と言う絶望的状況を忘れる。 「ゆ!れいむの赤ちゃん!生きててくれたんだね!とっても嬉しいよ! もうほかの赤ちゃんはいないけど一緒にゆっくりしようね!」 親子の感動の再会である。 二人の距離はどんどん近付いていく。 そして…… 「おかーしゃあああああああああんぶべっ!?!?」 「れえええええええええええむぎゃあっ!!!!!」 天文学的な確率で二人の距離が0になった瞬間、お互いの名を叫びつつ仲良く餡ペーストになった。 一方同じように投げ出されたゆっくりチルノ。 重力に引かれどんどん地面が近づいてくる。 「あたいってばゆっくりしてないいいぃぃぃぃぃ!!!」 ゆっ⑨りブレインでもこのままでは死んでしまうことは分かる。 ゆっくりチルノの頭にこれまでの楽しかった思い出が走馬灯となって流れ始めた。 その走馬灯は……今度は0.5秒で終わった。 楽しかった思い出も忘れてしまうゆっ⑨りブレインの悲劇である。 そしてそんな事とは関係なく死という現実が迫ってくる。 「あたいってば幻想郷最速ねぇぇぇぇぇぇっ!」 どこぞの天狗が聞いたら怒りそうな事を叫びつつ、ゆっくりチルノは恐怖で目を閉じる。 加速された体は地面に向かって一気に落下し激突――-―― しなかった。 「ゆ?」 疑問の声を上げてゆっくりチルノが恐る恐る目をあけると、何と自分の体が浮かんでいるのではないか。 そう、この危機的状況でゆっくりチルノの本能が彼女の羽を無意識に羽ばたかせるという行動をさせたのだ。 何という奇跡!生命の神秘! 次第にゆっくりチルノも自分が飛んでいることに気づいたのか、喜びの声を上げ始める。 「すごい!あたいってば飛べたのね!」 しばらくパタパタと低空飛行を楽しんだ後、着地するゆっくりチルノ。 ふぅ、と一息ついて空を眺める。 あれほど太陽が輝いていた空は、いつの間にか夕焼け色に染まっていた。 よく覚えていないけど今日はもう疲れた。 さっさとおうちに帰って休もう。 そう考えたゆっくりチルノはゆっくりとおうちに戻っていった。 おうちの場所を忘れて3時間ほどさまよった後、 ようやくゆっくりチルノは自分のおうちを見つけることができた。 途中で自分が何をしているのかも忘れたりしたため余計に時間がかかった。 「ふぅ、あたいってばゆっくりね!」 そう言って巣穴に潜り込むゆっくりチルノ。 しかしそこには………先客がいた。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪……ゆっ?だれ!?ここはまりさのおうちだよ!」 ゆっくりチルノが蓄えていた木の実を頬張っていた黒帽子のゆっくりが振り向き、自分のおうち宣言をする。 一瞬呆気に取られるゆっくりチルノだが、しかしさすがのゆっ⑨りブレインでもこれには黙っていない。 ここは頑張って自分が掘った巣穴なのだ。他人に渡すわけにはいかない。 「何言ってるの!ここってばあたいがつくったおうちよ!その木の実もあたいが集めたものだよ!」 「ふざけないでね!この木の実は最初からここにあったんだよ!ここはまりさが先に 見つけたからまりさのおうちだよ!」 傍若無人な事を言うゆっくりまりさ。 普通のゆっくりならここでさらに強く言い返すところだが、ゆっくりチルノの頭は既に混乱し始めていた。 ―そういえば勢いで言ってみたけど、自分がその木の実を集めた記憶はない。 このあたりは草が茂っていて場所が分かりにくいし、もしかしたら本当に巣穴の場所を間違えたのかも… そうだとするとここはこのまりさのいうとおり自分のおうちじゃないんじゃないんだろうか― うーん、と悩むゆっくりチルノにゆっくりまりさの言葉がとどめを刺した。 「ここはまりさのおうちだよ!でも今すぐ出ていくなら木の実を少し分けてあげてもいいよ!」 既に傾きかけていたゆっくりチルノにこの言葉は決定的だった。 ―自分がおうちを間違えてとても失礼なことをしたのに、食べ物を分けてくれるなんてなんて親切なんだろう― 「ごめんね!間違えちゃった!あたいってばゆっくりね!」 照れるように笑ってゆっくりチルノが言う。それを聞いてゆっくりまりさは 「分かったのならさっさと出て行ってね!もう来ないでね!」 そういっていくつかの固い、食べかけの木の実をゆっくりチルノの側に投げた。 「ごめんね!ありがとね!」 ゆっくりチルノは礼を述べると木の実を口に詰め込み、巣穴を抜け出していった。 後にはニヤリと笑うゆっくり魔理沙が残された。 「むーしゃむーしゃ、⑱ー!」 巣穴の側で木の実を食べてよく分からない叫びを発するゆっくりチルノ。 18は9の2倍なので2倍幸せと言う意味である。 こんなギャグを思いつくなんてあたいってば天才ね! と自己満足に浸りつつゆっくりチルノは木の実を食べ終えた。 色々あったとは言え何度も水没したことで既に必要な食事量はほとんど満たしていたので、 少ない木の実でもゆっくりチルノは満腹だった。 しかしそろそろ本当に急いでおうちを探さなくてはならない。 もうすでにまんまるのお月さんが浮かんでいる。 「あたいってばゆっくりしてらんないわ!」 慌てておうち探しを再開する。 が、いくら探しても自分のおうちはみつからなかった。 さきほどの巣穴が本当のおうちなのだから、当然である。 さらに一時間ほど涙目で巣を探し続けたがついに見つからず、 ついにゆっくりチルノは木陰にばったりと倒れ伏した。 「あたいってばゆっくりしすぎね……」 もう仕方が無い。きっと巣穴の場所を忘れてしまったのだろう。 今から巣を掘ったり探したりなんてできないし、今夜はこの木陰で眠ろう。 きっと明日になったら巣の場所も思い出すに違いない。 そう考えたゆっくりチルノは木の側で隠れるように横(縦?)になった。 しかし瞼を閉じ、いざ寝ようとすると頬にあたりがなにかかさかさするものがいる。 何かと思って目を凝らしてみると、それは蟻の行列だった。 「あたいってばラッキーね!」 目を輝かせながら目の前の蟻をパクンと食べるゆっくりチルノ。 何匹か食べたところで今度は蟻たちに息を吹きかけ始めた。 「ふーっふーっ」 本来、ゆっくりチルノが他の生物を凍結させるほどの冷気を出すにはくしゃみをするしかないが、 蟻ぐらいの小さい生き物相手であればただ息を吹きかけるだけでも凍結させることが可能なのである。 こうして蟻を冷凍保存しておき、明日の朝起きたら食べよう、と言うのがゆっくりチルノの考えだった。 20個ほど蟻の氷塊を作ったところでゆっくりチルノは眠ることにした。 そして、その氷塊を眺めながら、これなら明日の朝ご飯はごちそうね!と幸せな気分で眠りに就いた。 しかしそこはゆっくりチルノ、ちゃんと作戦に穴が開いている。 いくら凍らせたとはいえこの夏の熱帯夜、小さな氷塊などすぐ溶けてしまう。 ゆっくりチルノが熟睡した後、溶けた氷塊から蟻たちが抜け出していくのに、気づくものはいなかった。 そして翌朝。 水色の髪に薄い色の羽、氷精を模したゆっくりであるゆっくりチルノは今朝は 木陰で起床の一声を挙げた。 「おはよう!あたいってばゆっくりね!」 そして昨日作った朝食用の氷塊など当然のように忘れ、また朝食探しに飛び跳ねていく。 果たして今日はどのような一日になるのだろうか。 夏の青い空は、昨日と変わらぬ晴天の色を湖畔に住む生き物たちに伝えていた。 あとがき 今まで何度もSSを書きかけて途中で挫折したけど、初めて一つ書き上げる事が出来ました。 こういうの書く時は勢いって大事ですね。 しかしおかげで貴重な時間が6時間ぐらい潰れてしまった。 ゆっくり虐待してた結果がこれだよ! あれ?そういえばあんまり虐待はしてないような…… このSSに感想を付ける
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それからというもの、来る日も来る日も赤ゆっくりを殺しつづけた。 生まれた赤ゆっくりを殺し、胎児を引きずり出して殺した。 眠っている間に薬物注射を行い、胎児を殺して死産させることもあった。 そのたびにれいむ共は喉も裂けよと悲鳴を奏で、 いまでは俺に対する口調も懇願調に統一されていた。 殺しつづける日々が一週間を数えたころ、 俺はある事実を確認した。 れいむ共が赤ゆっくりを隠している。 赤ゆっくりを奪い去られながら懇願しつづけるれいむ共の中、 一匹だけなにも言わず、ぷくうと膨れている子れいむがいた。 れいむ共の懇願も、その日は単調で芝居がかっており、 誰が見ても一目瞭然だった。 もっとも察する以前に、れいむ共の行動は監視カメラで逐一把握できている。 今回は、常時チェックしてくれている使用人が教えてくれた。 「何か隠してないか?」 びくり、と膨れているれいむが反応して後ずさりする。 他のゆっくりが途端に挙動不審になって飛び跳ねだした。 「ゆゆゆっ!!かくしてません!!なにもかくしてませんん!!」 「それよりあかちゃんかえしてください!!おねがいします!!」 「あかちゃんかえしてください!!おねがいします!!」 初日に失敗してから、なんの進歩もしていない。 とはいえ人間に置き換えたとしても、抗う術のない条件下、 無駄な努力とは知りつつあがこうとする気持ちはわからなくもない。 それとも本気で成功すると思っているのかもしれないが。 残念なのは、あまりに演技が下手すぎることだ。 園児でももう少しうまくやる。 「そうか」 俺は、あえて知らないふりをすることにした。 「ゆゆぅ!!そうです!!なにもいません!!」 「あかちゃんかえしてください!!おねがいします!!」 その日は通常通り、奪った赤ゆっくりを傷めつけて殺した。 わが子を殺されるたびに上がる親どもの悲鳴は、さすがに演技ではない。 一匹だけ、膨れている子れいむは、涙を流しながらも声をあげなかった。 子供が隠されているのを知りながら、俺は部屋を出ていった。 これは使えると考えたのだ。 こいつらに与える苦痛は、そろそろ次の段階に入ってもいいだろう。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっきゅりちちぇいっちぇね!!」 「ゆっきゅりちちぇいっちぇね!!」 俺が扉を閉めた直後、子供を隠していた子れいむが口を開けた。 口の中から出てきたのは、二匹の赤ゆっくり。 れいむ種とまりさ種が一匹ずつだった。 「ゆゆっ、おきゃーしゃんのおくちのなきゃ、ゆっきゅりできちゃよ!」 「あっちゃかかっちゃよ!!またいれちぇね!!」 「ゆっ……おちびちゃんたち、ゆっくりしてねええ!!」 四匹の成体れいむ共が赤ゆっくりを囲んで心からの笑みを浮かべる。 つい今しがたまで、目の前で子供を殺されていたれいむ共。 無事に済んでいる子供たちへの愛もひとしおだろう。 赤ゆっくり共は、親の口の中にいたため、 何が起きていたのかはわからないようだ。 親たちも、事実をひた隠しにしているらしい。 「おきゃあしゃんたち、ないちぇるの?ゆっくちちちぇいっちぇね!!」 「どうしちゃの?なにきゃあっちゃの?」 「ゆゆっ!なにもないよ!きにしないでゆっくりしていってね!!」 「おちびちゃんたち、だいじょうぶ?いたいところない?」 「どきょもいちゃくにゃいよ!!」 「ゆっきゅりできちぇるよ~♪」 「それじゃあ、ゆっくりできるおうたをうたおうね!!」 「ゆゆっ!うたっちぇ!!」 「おきゃあしゃんのおうちゃ、ゆっきゅりできりゅからだいしゅき~♪」 「ゆゆゆ~♪ゆ~ゆ~♪ゆゆゆゆゆ~♪」 成体れいむ四匹で、恐ろしい溺愛ぶりだった。 その姿を、俺は今ビデオカメラを通して見ていた。 見ながら、更なる苦痛を親共に与える構想を練る。 この愛をじっくり熟成していこう。 より濃い子殺しのために。 さらに一週間、殺し続ける日々を重ねた。 親れいむ共は同じ手口を重ね、必死でより多くの子供を助けようとしていたが、 最初の二匹以外の赤ゆっくり共は避けつつ、他の子は全て引きずり出した。 「なにもがぐじでまぜええええん!!ざわらだいでえええ!!」 「ゆぶ!ゆぶぶううう!ぶうううううう!!」 「また隠してるな。全部出せ」 ぱんぱんに膨らんだれいむの頬を、両側からかしわ手で挟み叩く。 「ゆぶびゅうううう!!」 「ゆぴゅっ!ゆ?おにーちゃんゆっきゅりできりゅひちょ?」 「ああああああおぢびじゃんにげでええええええ!!!」 ぼひゅ、と吐き出される赤ゆっくり共を片端から捕まえ、 その眼を爪楊枝でえぐり出す。 「ゆぎゃがああああああああああだいいいいいいいいいい!!!」 「あがぢゃああんんん!!あがぢゃああああんんん!!!」 その日も、あの二匹の赤ゆっくり以外は全て潰した。 一匹だけ箱の隅に引っこんで頬を膨らませている子れいむだけは、 毎回わざと気付かないふりをする。 ゆっくり共は、本気で俺をだませていると思っているだろう。 唯一残された子供である赤ゆっくり二匹に対する親れいむ共の溺愛は、 当然ながらますます濃くなり、わがまま放題に甘やかして育てていた。 「ゆっ!おきゃーしゃんしゅべりだいになっちぇね!!」 「わかったよ!ゆっくりすべってね!!」 「ゆゆぅ~♪ゆっきゅり~♪」 身重の体を苦労して斜めに傾ける子れいむの上を、 二匹の赤ゆっくりが滑っていく。 「もっちょ!もっちょ!」 「おなきゃしゅいちゃ!もっちょたべちゃい!!」 「ゆゆ、じゃあおかあさんのぶんをたべてね!」 「おかあさんのぶんもたべていいよ!」 「ゆっきゅりいただきまちゅ!!」 「む~ちゃ、む~ちゃ………ちあわちぇー!!」 れいむ共に毎日与えている、なけなしの餌。 四匹分にも足りないようなその餌を、 れいむ共は苦労して赤ゆっくりに分け与えていた。 甘やかされた赤ゆっくり共は、足りないと言ってはお代わりを要求し、 親れいむ共は自分の取り分を惜しげもなく与えた。 礼も言わず、当然のように赤ゆっくり共は食べ散らかし、 そんな二匹の姿を親れいむ共は文句も言わずに微笑んで眺めていた。 「ゆぅ~……ゆっくりしたおちびちゃんたちだね……」 「がんばっておちびちゃんたちだけはまもろうね……」 頃合いだ。 俺は準備にかかった。 ある日、俺はその部屋に入った。 親れいむ共がすぐに並び、壁を作って二匹の赤ゆっくりを隠す。 「おちびちゃんはゆっくりしないでかくれてね!!」 こちらにしてみれば丸聞こえなのだが、うまく隠しおおせているようだ。 「おねがいします!!あかちゃんはたすけてください!!」 なにか叫んでいるが無視する。 俺は箱に入れて連れてきた子ゆっくり共をその部屋に放した。 十匹近くいるゆっくり共は、れいむ種とまりさ種が入り混じっている。 「ゆゆっ!!ここはまりさのゆっくりぷれいすにするんだぜ!!」 「れいむはれいむだよ!ゆっくりしていってね!!」 思い思いに勝手にわめき始める子ゆっくり共。 こいつらはこのれいむ共とは無関係で、人に慣れたゆっくりだった。 続いて、さまざまな遊具を運び込む。 ゆっくり用の滑り台、クッション、ブランコ、シーソー。 「ゆゆぅ!!とってもゆっくりできるよおぉ~~♪」 「はやくあそびたいんだぜぇ~~!!」 子ゆっくり共は興奮して飛び跳ねだす。 「思う存分遊んでいいぞ」 「ゆわぁ~い!!」 クッションで飛び跳ね、滑り台に上り、めいめい自由に遊び始めた。 一体何が起こったのかわからない様子で呆然としている親れいむ共の隙をつき、 赤ゆっくり二匹を口に含んでいた子れいむの頬にかしわ手を叩きつける。 「ゆぶぇっ!!」 「ゆあああああぁぁぁぁぁ!!!?」 大切に大切に育てていた二匹が、ついに白日のもとにさらされた。 絶望の叫びを上げ、親れいむ共は涙を流して懇願してきた。 「だずげでぐだざいいいいいいい!!おでがいじばずううううう!!」 「ごのごだぢだげは!!ごのごだぢだげはああああ!!!」 「ぼんどうにだいぜつな、ゆっぐりじだごだぢなんでずううううう!!!」 「ゆゆぅ~?おきゃあしゃん?」 「おにーちゃんはゆっきゅりできりゅひちょ?」 「おぢびぢゃあああああん!!!」 俺はそれきり、箱の中のれいむ共を無視して背を向け、 子ゆっくり共の面倒を見はじめた。 口から吐き出させられただけで、 赤ゆっくりには何も手を出す様子がない俺を見て、助けられたと勘違いしたらしい。 親れいむ共が涙ながらに感謝しはじめた。 「ありがどうございばずううううう!!」 「でいぶのあがじゃんだずげでぐれでありがどうううううう!!!」 「おきゃあしゃんどうちたの?」 それから、子ゆっくり共は思うさま遊び続けた。 仲間たちと遊具で楽しげに遊びまわる子ゆっくり共を、 強化ガラスの壁を通して、赤れいむと赤まりさは食い入るように見つめていた。 「ゆぅ~~……あのこちゃち、とっちぇもゆっきゅりしちぇるよ!」 「まりしゃもゆっきゅりしちゃいよ!!まりしゃもまぜちぇ!!」 ガラスに頬を押しつけて訴えてくる赤ゆっくり二匹は、しかし無視されつづけた。 一匹の子ゆっくりが空腹を訴えてくる。 「おにいさん、おなかがすいたよ!!あまあまたべたいよ!!」 「よし」 俺はすぐに大皿を出し、その上にプリンを沢山並べてやった。 「仲良く分けろよ」 「ゆっくりいぃ~!!いただきますうう!!」 「む~しゃ、む~しゃ!!しあわせえぇ~~!!」 「ゆゆぅうううう~~~~!!」 「たべちゃい!!たべちゃい!!まりしゃもたべちゃいいいい!!」 赤れいむと赤まりさが涎を飛び散らせて飛び跳ねる。 「おきゃあしゃん!!あのあみゃあみゃすっごくゆっきゅりしちぇるよ!!」 「きゃわいいれいみゅにもあのあみゃあみゃちょうだいね!!」 「まりしゃもあっちにつれちぇっちぇね!!」 振り返りもせずに、プリンを凝視したまま背中越しに親に命令する赤れいむ共。 「ゆゆぅ……」 要求してもいいものか、俺の顔色を窺う親れいむ。 俺は視線を合せなかった。 不穏な雰囲気を読み取ったのか、親れいむは赤ゆっくり共に言い渡した。 「ゆっ!だめだよ!!ゆっくりできないよ!!」 「どぼじでぇぇぇぇぇ!!?」 これまで一度も要求を拒否されたことがなかった赤れいむと赤まりさは、 今初めてたしなめられ、火がついたように抗議しだした。 「きゃわいいれいみゅがゆっきゅりしちゃいといっちぇるんだよぉぉぉ!!? なにいっちぇるのぉぉぉぉ!!!」 「にゃんでぇぇぇ!!? にゃんでまりしゃはあみゃあみゃちゃべらりぇないのぉぉぉぉ!!?」 おろおろと互いの顔を見合わせる子れいむ共だったが、 親れいむは毅然として言い放った。 「だめだよ!!あのおにいさんにつかまったらゆっくりできなくなるよ!! ゆっくりりかいして、ここでじっとしててね!!」 さすがにあれだけ子供を殺されたせいで、 親れいむの警戒心は十二分に育まれたようだ。 固い表情で赤れいむ共を諭す。 「どぼじでじょんなごじょいうどおぉぉぉぉ!!!?」 親の気遣いなど伝わるはずもなく、赤れいむ共が絶叫した。 赤れいむ共が羨ましげに見つめる中、子ゆっくり共はさらにゆっくりする。 「うまっ、うまっ、うっめまじうっめ!!これうっめ!ぱねぇ!!」 「む~しゃむ~しゃむ~しゃ、ししししあわしぇええええ~~~♪」 はちみつをたっぷりかけたホットケーキと、 大皿いっぱいのイチゴケーキをほおばりながら、子ゆっくり共は嬉しさに転げ回る。 「ようし、高い高いしてやるぞ」 俺はクリームでべたべたの子ゆっくり共を手に取り、 二匹ずつ上げ下げしてやった。 高い高いの大好きなゆっくり共にはこたえられない遊びだ。 「ゆゆぅぅ~~~~♪おそらをとんでるみたいぃ~~~~♪」 「とっっってもゆっくりしてるよぉぉぉぉ~~~~~♪」 子ゆっくり共は大いにはしゃぎ、 順番待ちの連中が飛び跳ねながら「はやく!はやく!」と催促している。 「おにいいいいちゃあああああんん!! れいみゅもたきゃいたきゃいしちぇぇえええええ!!」 「まりしゃもゆっきゅりしちゃいよぉおおおおおおおおお!!!」 赤れいむ共は泣き喚きながらガラスに体当たりを繰り返している。 「ゆゆぅ……おちびちゃんたち、がまんしてね!」 「ゆっ、そうだ!おかあさんとゆっくりできるおうたをうたおうね!!」 「ゆ~ゆ~ゆゆゆ~♪」 「うるちゃああああああい!!!」 赤まりさが叫んだ。 「まりしゃをゆっきゅりさしぇないおきゃーしゃんはだまれえええ!!」 「にゃんでれいみゅをいじめりゅのぉおおおお!!? れいみゅのこちょがきりゃいになっちゃのおおおおお!!!?」 「ゆゆ!そんなことないよ!! おかあさんたちはおちびちゃんたちがだいすきだよ!?」 「だったりゃしゃっしゃとあっちへちゅれてきぇえええ!!」 「だ、だめだよ!おにいさんはゆっくりできないんだよ!!」 「わけわきゃんないよぉおおおお!! まりしゃをゆっきゅりさしぇないくしょれいみゅどもはちねぇえええ!!」 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉおおおお!!?」 もはやお母さんではなく糞れいむ呼ばわりされた親れいむ共は、 涙を流しながら絶叫した。 「どぼじでわがっでぐれだいどおおおぉぉぉ!!? おにいざんにづがまっだらゆっぐりでぎないのぉおおおお!!」 「おにーしゃんたしゅけちぇぇええ!! こにょくしょれいみゅどもがまりしゃたちをいじめりゅううぅぅ!!」 「たすけちぇえええ!!たしゅけちぇえええ!!ゆっきゅりさしぇちぇぇぇぇ!!」 「おぢびじゃああああん!!ぞんだごどいわだいでえええええええ!!!」 親れいむ共は悲しみのあまりに突っ伏している。 幸福な家庭はすでになかった。 甘やかされきった赤れいむと赤まりさにとって、 ゆっくりさせてくれない母親に存在意義はないようだ。 さっきから無視しつづけている俺に向かって、母親から助けてくれと要求している。 「こっちに来たいか?」 そこで、俺は初めて話しかけた。 「ゆゆっ!!きゃわいいれいみゅをそっちにつれてっちぇにぇ!!」 「はやきゅしちぇにぇ!!ぐじゅはきりゃいだよ!!」 「おにいざんにぞんなごどいっぢゃだべええええ!!」 「ゆっきゅりできにゃいおきゃあしゃんはちんでにぇ!!」 「ゆわああぁぁああん!!」 「こっちに来たら歓迎するよ。 ただし、お母さんが許してくれたらね」 「ゆゆ!?ほんちょう!?」 「本当だとも。 君たちはお母さんの大切な子供なんだから、勝手に連れてくることはできないな」 俺の言葉を聞き、赤れいむと赤まりさが母親のほうを向く。 「きいちゃ!?きゃんげいしちぇくれりゅっていっちぇるよ!!」 「おきゃあしゃんははやきゅゆるしちぇにぇ!!」 胸を張って命令する二匹。 「だべえええええ!!いっぢゃだべえええええ!!」 「ゆっぐりでぎないよおおおおお!!」 「ゆぎぃいいいいいいいい!!!?」 「にゃにいっちぇりゅのおおおおおお!!? ゆっきゅりできにゃいよおおおおおお!!!」 互いに同じ事を言い合い怒鳴り合う親子に、俺は念を押す。 「お母さんが許してくれたら、いつでも来ていいよ。 みんなと一緒に、たっぷりゆっくりしようね!」 「ほらああああああああ!!!ゆっきゅりしちゃいいいいいいいい!!!」 「ゆっきゅりさしぇりょおおおおおお!!!」 「だべなのおおおおおお!!わがっでよおおおおおお!!!」 たっぷり二時間、赤ゆっくり二匹は泣き喚いた。 「ゆっぎゅりじぢゃいいいいいいいい!!!ゆわぁぁああああん!!!」 「いえええええええええ!!!!ゆっぎゅりじでいいっでいえええええええ!!! ぐぞれいみゅどもおおおおおおおおおおおおーーー!!!」 「ごんにゃのおがあじゃんじゃないいいいいいいい!! おがあじゃんはゆっぎゅりざじぇでぐれりゅううううううう!!!」 涙と涎としーしーを撒き散らしながら床を転げ回る赤れいむ、 憎悪と殺意をあらわにして母親に噛みつく赤まりさ。 親れいむ共はほとほと疲れきっていた。 宥め、怒り、聡し、乞い、どれだけ言っても赤ゆっくり共は耳を貸さなかった。 悲しげに目を伏せ、黙って子供たちの叫び声を聞きながらしゃくりあげている。 あれほど可愛がっていた子供にここまで憎まれるのはやはり耐えられないのだろう。 本来、普通のゆっくりならば、 ここまでわがまま放題を言われれば愛想をつかして捨てるだろう。 しかし、何度も何度もさんざん子供を殺され続け、 ようやく守り通したたった二匹の、念願の子供たちだった。 愛想をつかすなんて考えられない、大事な大事な可愛い子供たちなのだ。 親れいむの執着は想像もできないものだろう。 「ゆゆっ?このれいむたちどうしたの?ゆっくりしてないよ?」 こちら側の子ゆっくりが、数匹不思議そうにガラス箱の中を覗いている。 俺は教えてやった。 「あのおちびちゃん達が君たちとゆっくりしたがってるんだけど、 お母さんが行かせてくれないんだよ」 「ゆゆっ、そんなのひどいよ!!ゆっくりできないよ!!」 「あかちゃんこっちにこさせてあげてね!!」 「みんな、あのおちびちゃんがこっちに来たら仲良くしてくれるかな?」 「もちろんだよ!!あかちゃんかわいいね!!」 「いっしょにゆっくりしようね!!」 「するううぅ!!ゆっくりしたいいいいいい!!」 赤れいむと赤まりさがガラス壁に頬を押しつけて叫んだ。 向こう側の子ゆっくりと、ガラス越しにすーりすーりをし始める赤れいむ。 「ゆぅ……ゆぅぅぅ……」 親れいむ共はたしかに揺れていた。 ほとほと疲れていたことに加えて、期待のほうが膨らみはじめていた。 もしかしたらお兄さんは許してくれたのではないか。 これほどゆっくりした子たち、優しい言葉。 お兄さんは「大切な子供」だと言ってくれた。 今までの愚行を反省して、ようやく自分たちをゆっくりさせる気になったのだろうか。 子供をゆっくりさせてあげたい。 たっぷりゆっくりさせて喜ばせ、またお母さんと慕ってほしい。 れいむ共の心情はそんなところだろう、くっきりと顔に浮かんでいた。 その時、赤まりさが母親たちのところに這いずっていって言った。 「ほんちょのおきゃあしゃんにあわせちぇにぇ」 「ゆっ……おちびちゃあああああん!!? れいむがおちびちゃんのおかあさんなのよおおおおお!!」 「うちょいわにゃいでにぇ。 おきゃあしゃんならゆっきゅりさしぇちぇくりぇるよ。 おまえちゃちがにしぇもにょなにょはよきゅわかっちゃよ。 いいきゃら、はやきゅほんちょのおきゃあしゃんにあわしぇちぇ」 「ぞ、ぞんにゃごど………いわだいでぇ……おでがいだがらぁ……」 「おにぇがいだきゃら、まりしゃをゆっきゅりさしぇちぇくれりゅ、 ほんちょのおきゃあしゃんにあわしぇちぇにぇ。 まりしゃ、しゃびちいよ」 赤まりさの視線は、よそよそしく冷たかった。 その眼が見ているものは、もはや母親ではなく、 母親のふりをした得体の知れない別のなにかだった。 「ゆぅうううううう!!ゆぅうううううう!!!」 目をぎゅっとつぶり、声を押し殺して泣く親れいむ共。 限界が来ているのがわかった。 「ゆっぐりざぜであげでねええええええ!!!」 ついに、あの子れいむが叫んだ。 いつも二匹を口に含んで守っていた子れいむだった。 「ゆっ、ゆっぐりざぜであげでぇええええ!!」 「おぢびじゃんおでがいじばずぅううううう!!」 全員が堰を切ったように叫び始める。 「本当にいいのかい?」 俺は念を押した。 「この子たちをゆっくりさせてあげられるなんて嬉しいけど、 本当に僕に、この子たちを預けてくれるのかい?」 「ばいいいぃぃ……ひっぐ、うっぐ……ゆっぐり、ざぜであげで……」 「おぢびぢゃんだぢ……たっぷり、ゆっぐりじでいいがらね……」 「大切な子供たちなんだろう?そばに置いておきたくないかい? いまならまだ取り消せるよ?」 「どりげざないよ……ばやぐ、ゆっぐりざぜであげでね……」 「考えなおすなら今だよ? 今考えなおせば、この子は、お母さんのそばにいられるんだけど」 「ゆっぐ……ぞ、ぞれより……ぞっぢでゆっぐりざぜであげでぇ…」 「わかった」 俺は二匹の赤ゆっくりをそっと手に取り、箱から取り出した。 「ゆゆぅ~♪おしょらをちょんでるみちゃいぃ~~!!」 きらきらと目を輝かせる赤れいむと赤まりさ。 親れいむ共が目を潤ませ、微笑みながら見送る。 「おちびちゃんたち……たっぷり、たっぷりゆっくりするんだよ…… れいむがおかあさんだからね……ゆっくりしていってねぇ……」 「よし、では始めよう」 言うが早いか、俺は子ゆっくり共を籠に詰めると、 遊具や食べ物と一緒に、カートに載せてさっさと部屋から出してしまう。 残ったのは二匹の赤れいむと赤まりさだけだった。 「ゆっ?」 そして、部屋の外から俺は新しい箱を持ってくると、 赤ゆっくり共の目の前に中身を広げた。 親れいむ共の顔色がみるみるうちに青ざめる。 「おぢびぢゃんにげでえええええええええええええええええ!!!!!」 続く
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『ゆっくり遊び』 24KB いじめ 野良ゆ 赤ゆ 子ゆ 虐待人間 小ネタです 「あったあった!ゆっくりダンボール見つけたぞー!」 公園の植え込みに、不自然に置いてあるダンボールを見つけて喜ぶ少年。 その声を聞いた少年二人が、少年の周りに集まってくる。 「生意気にビニールシートなんか被せてあるよ。何匹いるかな?」 「多分子ゆっくり2、3匹とかじゃないのかな?まあ、これ剥がしてみようよ」 少年の一人が、ダンボールに被せてあったビニールシートを剥がす。 ダンボールの中には、気持ちよさそうに昼寝をしている成体のれいむが1匹、おそらく親だろう。 周りには子ゆっくり4匹と、さらに赤ゆっくり6匹。 どれも幸せそうな顔で、寝息を立てている。 「うわっ!大漁!気持ち悪!」 「野良なのに、結構子供が居るね。誰かに餌貰っているのかな?」 少年達は幸せそうなゆっくり達をみて笑みをこぼす。 当然、その姿を見て微笑ましいとか、可愛らしいとか思った訳ではない。 おもちゃがいっぱい、沢山遊べる。 そんな風に思っているだけだった。 「じゃあ、まずはこの親れいむをどかそうか?」 「そうだね。ゆっくりサッカーも、もう流行らないし………とりあえず、動けないようにしておこうよ」 少年の一人が、親れいむをダンボールから引きずり出す。 それでものん気に眠っている親れいむ。 少年達は、その辺で拾ってきた木の枝や、割り箸を親れいむのあんよに突き刺した。 「ゆん!…ゆゆん?………いだいぃぃぃぃ!!どうなってるのぉぉぉぉぉ?!」 痛みで目を覚ます親れいむ。 その声を聞いて、子ゆっくり、赤ゆっくり達も目を覚ます。 「ゆぅ………おかーしゃん、うるしゃいんだじぇ…ゆっくりしちぇな………ゆわぁぁぁぁ!にんげんしゃん?!」 「ゆぴぃぃぃぃ?!どーなっちぇるのぉぉぉぉぉ!!」 「ゆびぇぇぇぇぇぇん!こわいのじぇぇぇぇぇ!!」 油に火がついた様に騒ぎ出す赤、子ゆっくり達。 震えながら少年達を威嚇するものも居れば、パニックになってダンボールの中を跳ね回るものもいた。 それを見て笑っていた少年の一人が、ダンボールを持ち上げ、開いていた方を空に向けた。 子ゆっくり、赤ゆっくり共々、ダンボールの底へころころと転がっていく。 「ゆぅぅぅぅ?!どーしちぇころがるのぉぉぉぉ!!」 「こりょこりょこりょおぉぉぉ…ゆべぇぇぇ!…いちゃいのじぇぇぇぇぇぇ!!」 「ゆんやぁぁぁ!れりぇないよぉぉぉぉ!だんぼーるしゃん、いじわるしにゃいでぇぇぇぇ!!」 これだけで、逃亡は不可能。 住まいを提供してくれていたダンボールが一変して、牢獄へと変貌を遂げた。 「やめてね!おちびちゃんたちをだしてあげてね!れいむたちはぜんりょうな、ゆっくりだよ!!」 「あはは!こいつ必死だね!」 両方の揉み上げを必死にピコピコと動かし、涙を流して悲願する親れいむ。 だが、そんな姿も少年達の目には、笑いのネタにしか映らなかった。 「なにがおかしいの?ぜんぜんたのしくないよ!ゆっくりできないよ!」 「俺達はおもしろいよ!ゆっくりできてるよっと!」 「ゆんぼっ!」 少年に蹴られて、親れいむが中を舞う。 地面にぶつかると、その衝撃であにゃるからうんうんが飛び出す。 親れいむは涙とうんうんを撒き散らしながら、数メートル転がる。 「じゃあ、土手までこいつを蹴って行こうか」 少年達は、交互に親れいむを蹴りならが、公園を後にした。 「ゆっぎび!………ゆぼごぉ!………ゆびゃん!………」 少年達に蹴られる度に、叫び声を上げて転がっていく親れいむ。 公園から川の土手までは、そう距離は離れていないのだが、親れいむにとっては地獄のような道のりだ。 肌のあちこちに靴の跡がつき、髪の毛もリボンも傷んでいる。 しーしーとうんうんを漏らしながら、ころころと転がっていく。 「おかーしゃん!ゆっくち、ゆっくちぃぃぃぃぃぃ!!」 「ゆびゃぁぁぁん!こわいのじぇぇぇぇぇ!ゆっくちできにゃいぃぃぃぃぃ!!」 ダンボール内で母親の叫び声を聞いた子ゆっくり、赤ゆっくり達は悲鳴を上げて、おそろしーしーを漏らす。 その声が聞えているのか、親れいむが必死に子供達に声をかける。 「ゆげっぼ!ぎぎぎ…おちびちゃ…ゆごぉう?!…びびび…ゆっくち…ゆっく…ゆっべぇ!!」 少年達はそんな姿の親れいむを見て笑う。 子ゆっくり達は非情な少年達の行動が理解出来ず、心底震え上がっていた。 しばらくすると、少年達は目的の土手に着いた。 土手は広場があるほど大きく、ちゃんと舗装された遊歩道もある。 橋の下には時々ホームレスや、ゆっくりが住み着くほどの広さもある。 ちなみにこの川は、遊泳禁止になっているくらいの大きな川。 だが近所の子供達は、そんな事はお構いなしで遊んでいる。 この当たりの子供達にとっては、格好の遊び場なのだ。 「はい、到着~~!ゴール!!」 親れいむを蹴っていた少年がそう言うと、より一層足を大きく振り、親れいむを蹴り上げた。 「…ゆ…ゆ…ゆ……ゆっどぉぉぉん?!!」 ボロボロの親れいむは少年の蹴りを喰らい、勢い良く宙を舞う。 そして運悪くコンクリートで舗装された地面に、顔面から落下した。 「ゆびっ!…ゆげっ!…ゆべぇ!」 何度かバウンドした親れいむは、そのまま橋の下まで転がっていく。 少年達もそれに追いついき、一人が親れいむを抱えあげる。 「じゃあ、こいつの足の皮を剥がそうか?」 「ゆひ…ゆぎ…もうやめで………ゆぎぃ!いだいぃぃぃぃぃ!!」 親れいむを抱えあげた少年が、ポケットからカッターナイフを取り出すと、それを親れいむのあんよに押し当てる。 そしてそのまま、あんよの中心部に大きく×の字に切込みを入れる。 少年はカッターをしまうと、切込みを入れた場所から皮を裂いていく。 「ゆっびぃぃぃぃぃ!ぎががががが!びぃぃぃぃぃぃ!!」 「ゆんやぁぁぁぁ!おかーしゃん!きょわいのじぇぇぇぇ!!」 白目を剥いてしーしーを漏らす親れいむ。 その声を聞いていた赤、子ゆっくり達も恐ろしーしーを漏らして泣き叫ぶ。 「ははっ!見ろよ、親子そろって小便もらしてる!きったねー!」 少年達はその姿を見て大笑い。 あんよの皮を剥かれた親れいむは、乱暴にコンクリートの上に置かれた。 「おら!起きろよ糞ゆっくり!」 「ゆびゃん!」 少年の一人が、白目を剥いた親れいむにビンタをする。 親れいむは一瞬ビクッと体を震わせ意識を取り戻す。 「いだぃぃぃ!どぼじ…で………ゆっがぁぁぁぁ!おちびちゃんがぁぁぁぁ!なにしてるのぉぉぉぉ!!」 「ゆっびぃぃぃぃ!やめでぇぇぇぇ!まりちゃのじまんのあんよしゃんがぁぁぁぁぁ!!ゆぎゃぁぁぁぁ!!」 意識を取り戻した親れいむが見たのは、自分と同じ目に合わされている子まりさの姿だった。 この子まりさは、子ゆっくりの中でも一番大きな体のお姉さん。 そこを少年達に目を付けられたのだ。 ×の字に入れられた切込みから、皮を剥かれる子まりさ。 「ゆびぃぃぃぃ!おねーしゃんがぁぁぁぁ!ゆぐぶぶ!エレエレエレエレ…」 「ゆんぁぁぁぁ!いもーちょがぁぁぁ!あんこしゃんをはいちゃったら、ゆっくちできなくなっちゃうよぉぉぉ!!」 子まりさは両目を見開いて、涙としーしーを垂れ流し、口からは泡を吹いている。 丁度その様子が、地面に置かれたダンボールからも見えたのだろう。 気の弱い赤ゆっくりは、餡を吐き出したり、気絶してしまっている。 「おい、餡を吐いてるのがいるぞ!これで死なれたらつまんないから、ちゃんと塞いどけよ!」 その様子に気がついた少年が、仲間に呼びかける。 二人は慌てて、赤ゆっくりが吐いた餡を口の中に戻し、持っていたセロテープで口を塞いだ。 まだ餡を吐いていないものや、気絶しているものにも同じ処置が施される。 「やめちぇね!いもーちょたちが、ゆっくちできなくなっちゃうよぉぉぉぉ!」 口を塞がれていく赤ゆ達を見て、泣きながら叫ぶ一匹の子れいむ。 箱に戻された赤ゆの口のテープを剥がそうと、揉み上げを使ったり、舌で舐めたりしている。 「あーこいつうぜぇな、潰しちまうか?」 その様子が気に入らなかったのか、少年の一人が子れいむを持ち上げる。 強く握られている為、少年の指が体に食い込んでいき、ボールから洋ナシ、洋ナシからなすびと、次第に体を変形させる子れいむ。 「ゆぎぃぃぃぃぃ!ぐるじいよぉぉぉぉ!!ゆっくちできないぃぃぃぃぃ!!」 「れいむぅぅぅ!やめるのじぇぇぇぇ!れいむがいたがっちぇるのじぇぇぇぇぇ!ゆんやぁぁぁぁ!!」 握られた子れいむは両目が飛び出しかかり、あにゃるからは少しうんうんも顔を覗かせ始める。 必死に閉じた口からは、膨れ上がった両頬に収まりきらなかった餡が漏れ始める。 「ゆぶぶぶぶぶぶ!ゆごぶぶ!!」 「おい!くそゆっくり!こいつを潰されたくなかったら、大人しく見てろ!」 今にも破裂しそうな状態で、少年は手に力を込めるのを止めた。 それでも子れいむの縛めが解けたわけではない。 苦しさのあまり、涙としーしーを溢れさせ、全身を振るわせる子れいむ。 『ゆ、ゆっくちりかいしましちゃ!!』 ダンボールの中に残された子ゆっくり達は、自分達を睨み付ける少年に向かって叫んだ。 そんな事をしている間に、あんよの皮を剥かれた子まりさが親れいむの隣に並べられる。 「ゆわぁぁぁぁ!おちびちゃん!ゆっくり!ゆっくり!」 「ゆぎっ…ゆぐっ…ゆびっ…まりちゃのあんよ…もう…ぴょんぴょんも…ずーりずーりもできにゃい…ゆえぇぇ…ぎぎ…」 両目を剥いて痛みに震える子まりさに、必死に舌を伸ばそうとする親れいむ。 「おちびちゃん。いま、おかーさんがぺーろぺーろしてあげぶびゃぁ?!」 もう少しで子まりさに舌が届く所まで来たのだが、そこに少年の足が割って入った。 少年の足が親れいむの舌を踏みにじる。 親れいむは必死に身を捩り、少年の足から舌を抜き取ろうとする。 しかし少年はそれを許さず、そのまま親れいむの舌を踏みつけならが引っ張った。 「ゆべぇぇぇぇぇ?!やべべぇぇぇぇぇ!でいむのびばば、びびれぶぅぅぅぅ?!」 言葉にならない叫び声を上げる親れいむ。 舌が本来の長さの2倍以上伸びたくらいで、舌に裂け目が走る。 もう少しで千切れる、という所で少年は足をどけた。 「ぶんびょぉぉお?!」 伸びた舌はゴムの様に収縮し、親れいむの口に戻ったが、完全には元の姿に戻らなかった。 口の中に戻そうとしても、まともに動かなくなったのか、だらしなく親れいむの口からはみ出てたままになっていた。 「よーし、それじゃあ、そろそろまりさちゃんの番だよ?」 悲しそうに自分の舌を眺める親れいむをよそに、木の枝を持った少年が子まりさに歩み寄っていく。 少年は持っていた木の枝の付け根の方を、子まりさの額の辺りに突き刺した。 「ゆっびゃい!ゆびぇぇぇぇぇぇん!いだいのじぇぇぇぇぇぇ!!」 枝を刺された痛みで、目を飛び出さんばかりに見開く子まりさ。 傷口からは、少し餡が垂れ始めている。 「ゆわぁぁぁぁ!なにしてるのぉぉぉぉぉ?!やめてね!おちびちゃんをいじめないでねぇぇぇぇ!!」 「あー、安心しろよ!虐めるのはおちびちゃんだけじゃないからさ」 少年はそう言うと、親れいむの頭を踏みつける。 「ゆぎぃぃぃぃ!いだいぃぃぃぃぃ!!つぶれるぅぅぅぅぅ!」 親れいむは押しつぶされて変形し、両目を飛び出さんばかりに見開いた。 少年はそんな親れいむを何度も踏みつける。 「まあ、こんなもんかな?じゃあ、そろそろやるか」 親れいむを踏みつけるのを止めた少年は、今度は両方のもみ上げを掴むと、そのまま上に引っぱり上げた。 「ゆひっゆぎっ………ゆっがぁぁぁぁぁ?!こんどはなんなおぉぉぉぉ?!やめでぇぇぇぇ!れいむのぴこぴこさんが、ちぎれるぅぅぅ!!」 親れいむは苦しそうに身をよじる。 もみ上げと一緒に皮も引っぱられていき、親れいむの体が悲鳴を上げる。 「ゆびぃぃぃぃぃぃ!ゆががががが!!ぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 体中から変な汗を流し、涙としーしーを大量に放出する親れいむ。 だがそれが潤滑剤となったのか、急に体にかかる力が無くなる。 ズボッ! 「よっしゃ!とれた!」 勢い余ってよろける少年。 その手には親れいむのもみ上げと、それについて来た親れいむの皮、足元には巨大な餡子の塊が鎮座していた。 皮をすべて持っていかれ、巨大な餡子の固まりになった親れいむ。 一瞬何が起こったのかわからず硬直するが、すぐに皮を剥ぎ取られた痛みが全身を襲う。 「ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ?!ゆぎぎぎぎ!ねぎぎぎぎぃぃぃぃぃ?!」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!おばけぇぇぇぇぇ?!おかーしゃんが、おばけになったのじぇぇぇぇぇ!!」 隣ですべてを見ていた子まりさは、母親の変貌ぶりを見て泣き叫ぶ。 少年はその様子を満足そうに眺めると、親れいむの皮を子まりさの目の前に放り投げた。 親れいむの足の皮を剥いたのも、何度も踏みつけたのもすべてこの為。 親れいむは伸びた舌を噛み切ったのを気にも止めずに、歯を食いしばり狂ったように叫び続けた。 「あははは!おもしれ~!!自分で舌を噛み切っちゃった!…さあ、まりさちゃん、次は君の番だよー!」 「ゆびぇぇぇぇぇん!まりちゃをいじめにゃいでぇぇぇぇ!!ゆんやぁぁぁぁぁぁぁ!!」 子まりさは、足元に捨てられた親れいむの皮と、少年の顔を見比べては泣きながら震えた。 一方その頃、ダンボールの赤ゆっくり達は、別の少年達によって加工されていた。 テープで口をふさがれた赤ゆ達は、あにゃるにストローを突っ込まれ、そこから空気を入れられた。 そして元の大きさの3倍くらいに膨らまされると、あにゃるにテープで栓をされた。 「ゆうぅぅぅぅ!れいむのいもーちょがぁぁぁぁぁ!ゆっくちぃぃぃぃ!ゆっくちぃぃぃぃぃぃ!!」 「あーそこの糞れいむ!分かっているとは思うけど、その赤ゆっくりに何かしたら、こっちの子れいむとお前を握りつぶすぞ?」 そう言われて子れいむは押し黙る。 そして体を膨れ上がらせて涙を流す赤ゆっくり達と、今にも握りつぶされそうな子れいむを見比べては、悔しそうに泣いた。 「むー!むぐー!」 「よーし!こいつで最後だな!れいむ4匹、まりさ2匹、一人二匹ずつか…おーい、準備が出来たぞー!」 子れいむを握っていた少年と、親れいむの皮を持った少年が集まってくる。 握りつぶされそうになっていた子れいむは、親れいむの皮ともにダンボールに戻される。 「ゆっぎゃぁぁぁぁぁ!れーみゅのおかーしゃんがぁぁぁぁぁ!!」 「ゆんやぁぁぁぁ!ゆぶぶぶ!ゆっげぇぇぇぇ!!」 「ゆび…ぎぎ…からだが…いちゃいよ…ゆび…ゆび…」 口を塞がれてなかった二匹の子ゆっくりは、親れいむの皮を見て餡を吐出す。 赤ゆっくり達は餡を吐出せない代わりに、涙としーしーを大漁に放出している。 握り締められていた子れいむは、親れいむの皮を見る余裕もないのか、歪に変形した体を震わせて苦しんでいる。 「じゃあ、俺から順番ずつなー。おーい、まりさちゃーん!お前の妹達が、そっちに飛んでくから良く見とけよー!」 少年達は各自2匹ずつ赤ゆっくりをダンボールから取り出した。 急に持ち上げられた赤ゆっくり達は、少年達の顔を見て震え出す。 「じゃあ、まずは一匹目!」 少年は手に持っていた赤れいむを、額に枝突き刺さったままの子まりさ目掛けて投げた。 「おかーしゃ…ゆぐ…ゆ……『パーン! ビチャ!』 …ゆ?………なにこりぇぇぇぇぇ?」 泣いていた子まりさの顔に、生暖かい何かが降り注いだ。 子まりさは、自分の体をきょろきょろと見渡す。 そして、自分のあんよの辺りについた物と目が合う。 それはズルズルと子まりさの体を滑り、地面に落ちる。 飛び出した片目と、塞がれた口、わずかに残る髪には見覚えのある赤いお飾りがついていた。 投げられた赤れいむは、子まりさに突き刺さったままの枝に頬を裂かれて破裂したのだった。 「ゆ?…ゆ?…ゆ?………ゆぴぃぃぃぃぃぃ!まりちゃのいもーちょぉぉぉぉ?!」 「よっしゃ!成功!」 赤れいむを投げた少年がガッツポーズを決める。 それを見ていた他の赤ゆっくり達は、何が起こったのか解らずに固まっている。 そしてその硬直が解ける前に、二匹目の赤ゆっくりが投げられた。 シュッ! グチャ! 今度は子まりさの頬を掠めて地面にぶつかると、そのまま豪快に破裂した。 地面の黒いしみからは、餡塗れになった金髪が顔を覗かせている。 頭の足りない赤ゆっくり達も、ようやくこの時点で自分達の運命をしり、ガタガタと震えながらしーしーを漏らす。 「うわっ!きったねぇ!死ね!小便ボール!」 ビチャ! 少年の一人が、手に持っていた赤れいむを地面に叩き付けた。 赤れいむは爆ぜはしなかったものの、衝撃で両目が餡と共に飛び出してしまった。 空気も一緒に抜けたため、体のサイズも元に戻ったのだが、死にきれないのか体を痙攣させている。 「あはは!これ、おもしれぇ!俺もやってみようっと…目玉ミサイル、発射!」 ブビュッ! ポン! 少年の一人が赤まりさを手のひらに乗せ、それを叩き潰す様に拳を振り下ろした。 赤まりさの両目は汚い音と共に飛び出し、子まりさに向かって飛んでいく。 「ゆっびゃぁぁぁぁぁ?!いもーちょのおめめがぁぁぁぁぁぁ!!こっちくりゅなぁぁぁぁぁぁ!!」 飛んで行った目玉は、大きく開いた子まりさの口の中に入っていく。 そしてその勢いで、子まりさは目玉を飲み込んでしまった。 「んぐ!………ゆっげぇぇぇぇぇ?!まりちゃ…のみこんじゃった…のじぇぇぇ!ゆげろぉぉぉぉぉ!!」 目玉を必死に吐出そうとする子まりさ。 だがそこに、更に続けて目玉が飛んでくる。 子まりさはそれに気をとられ、吐出そうとするのを止めて泣き喚く。 「ゆぴぃぃぃぃ!おめめがぁぁぁぁ!おめめがとんでくりゅぅぅぅく?!ゆんやぁぁぁぁぁ!!」 潰れて目がなくなった赤ゆっくりを、興味なさそうに捨てて手を払う少年達。 今度はダンボールの中に残っている子ゆっくり達を、各自一匹ずつ持ち上げた。 「ゆひっぐ…ゆげ……おかーしゃん…どぼじで…こんな………」 「ゆびぇぇ…おかーしゃ………ぺしゃんこに、なっちゃっちゃのじぇぇ……ゆびゃぁぁ…」 「ゆぎ…いぢゃ…い…ぎぎ…もうやじゃ………おうちがえりゅぅ……ゆっくぢしちゃい………」 この子ゆっくり達は、親れいむや自分の事だけに気が回っていて、赤ゆっくりが全滅したのを知らないでいた。 ここがお家のダンボールだという事も忘れて、家に帰りたいとか、ゆっくりしたいと言ってはゆんゆんと泣いていた。 少年達に持ち上げられたのも気がつかないほどに、自分達の不幸を嘆いていた。 「こいつらひでーな!赤ゆが潰れたのに興味ないみたいだよ?」 「だって、ゆっくりだろ?自分達がゆっくり出来る事しか興味ないんだって…」 少年の一人が子れいむを右手に持ち替えると、今だ涙を流して悶えている餡子玉親れいむの方を見る。 そして手に持った子れいむを、親れいむに向かって投げつけた。 「ゆ?…ゆわぁぁぁぁぁぁ?! 『グチャ!』 ゆぶべぇ?!」 「ゆびぃぃぃ!でいぶのがらだがぁぁぁぁぁ!!いだいぃぃぃぃぃぃぃ!ねぎぃぃぃぃぃぃぃ!!」 子れいむは餡子玉にぶつかり、その一部を削った。 子れいむは餡と共に地面に叩きつけられ、顔を餡の中に突っ込んだままブリブリと尻を振る。 「ゆぶぇぇぇ?!いだいよぉぉぉぉぉぉ!!ゆっくちできな………ゆ?!これはあまあまさんだよ!!し、し、し、しあわしぇぇぇぇぇぇ!!ゆわーい!ゆっくちできるよ!!」 痛がって騒いでいるうちに、口の中に餡が入ったのだろう。 親れいむが苦しんだおかげで、その分甘くなった餡子。 子れいむは今までゆっくり出来ない思いばかりしていた事もあってか、その甘さを存分に堪能して満面の笑みを浮かべた。 「はははっ!親が隣で苦しんでるのに、しあわせーだって!」 「あはは!ゆっくり最高!おもしれー!!」 少年達は子れいむの行動を見て大笑いすると、残りの子ゆっくり達も親れいむに投げつけた。 「いったいのじぇぇぇぇ!!…ゆ!これはあまあまなのじぇ!ゆっくちー!まりちゃにたべられるのを、こうえいにおもうのじぇ!!」 「ゆびぇぇぇぇぇん!…ゆわぁぁぁ!あまあましゃんだよ!これはゆっくちしてる、れーみゅのためのごほうびだね!ゆっくちたべるよ!」 子ゆっくり達は一通り痛がると、親れいむの餡を食べて喜んだ。 そして3匹は自分の周辺や、顔に付いた餡を舐め終ると、今度はボロボロになった餡子玉に目をつける。 親れいむは子ゆっくり達がぶつかった事により、体の1/3ほど削られたせいで「ゆっゆっ」と痙攣し始めていた。 「すごいあまあましゃんのかたまりだよ!ここはゆっくちできるね!」 「ゆぐっ…ひぐ………ゆ?…ゆ?…ゆわぁぁぁぁ?!なにしちぇるのじぇぇぇぇ?!それはおかーしゃんなのじぇぇぇぇ!!」 「ゆーん?なにいっちぇるのじぇ?これはあまあまなのじぇ!おねーしゃんはばかなのじぇ!それににゃんだか、おねーしゃんは、ゆっくちしてないのじぇ!」 「それはおねーしゃんに、あまあましゃんがたりてないからだよ!おねーしゃんも、こっちにきて、いっしょにあまあまをたべようよ!」 親れいむの残骸に群がりそれを食べている姉妹を見て、それを必死に止めようと叫ぶ、枝の刺さった子まりさ。 しかし他の子ゆっくり達は、あまあまを食べてゆっくりする事しか考えておらず、呻き声をあげている親れいむにも気がつかないで、それを食べ進めた。 子まりさは、そんな姉妹達の様子を見て、悲しくて泣きだした。 そして3分も経たない内に、親れいむを食べつくしてしまった。 「ゆげーっぷ!おいしかっちゃよ!ゆっくちー!」 「ゆゆーん!まりちゃは、しあわしぇなのじぇー!ゆっくちー!」 「あーやっぱり、こいつらって幸せそうにしてるとムカつくな!」 「やっぱりお前もそう思う?やっぱ、ゆっくりは泣き叫んでいるのがいいよなぁ」 茄子型の体系になり、幸せそうに体を揺らす子ゆっくり達。 それを面白くなさそうに見ていた少年の一人が、ダンボールの中から親れいむの皮を取り出す。 そしてそれを一匹の子れいむに被せた。 「ゆわぁぁ?!なんにゃのこれは?!ゆゆ!あまあましゃんが、すこしあるよ!ゆっくちー!!」 「ゆ?…ゆっがぁぁぁぁ?!おかーしゃん?!どーなってるのじぇ?!」 「ゆえぇぇぇん………ゆ?…ゆゆ?!お、おかーしゃん?!おかーしゃんが、かえっちぇきたのじぇぇぇぇ?!」 皮を被らされた子れいむは、皮に付着した餡を見つけてそれを食べはじめる。 一方他の子ゆっくり達は、突然現れた親れいむに驚いた。 枝の刺さった子まりさも、親れいむが帰ってきたと驚き喜んだ。 「おかーしゃん!ぶじだったのじぇぇぇぇぇ?!よかったのじぇぇぇぇぇ!!」 「ゆーん!おかーしゃんは、とってもゆっくち………ゆ?…おかーしゃんのおなか…なんだかうごいちぇるよ」 「ゆびぃぃぃぃぃ!おかーしゃんが、うねうねきもちわるいのじぇぇぇぇ!ゆっくちできにゃいぃぃぃぃ!!」 だが子ゆっくり一同は、親れいむの動きがおかしい事に気がつく。 親れいむの体が不自然に盛り上がったり、内側に向かって引っ張られたりするのを見て不快感を見せる。 そしてそれは起こった。 「ゆっぷぅぅ!あまあま!しあわしぇぇぇぇぇ!!ゆゆ?きゅうにあかるくなっちゃよ!」 『?!』 中で餡を食べていた子れいむが、餡と一緒に皮を食い破ってしまったのだ。 事情を知らない子ゆっくり達は、親れいむの中から子れいむが現れた格好になる。 そして、子れいむは何かを食べて幸せそうにしている。 処理の遅い子ゆっくりの餡子脳が、状況を整理し結論を出す。 『ゆわぁぁぁぁぁ?!どーしちぇ、おかーしゃんをたべてるのぉぉぉ?!(のじぇぇぇぇ?!)』 子ゆっくり達が声を揃えて泣き叫ぶ。 しかし当の子れいむは、何を騒いでいるのか理解していない。 不思議そうな顔をして、姉妹たちに近づいて行く。 「ゆわぁぁぁ!!こっちにくりゅなぁぁぁぁ!!れーみゅはおいしくないよぉぉぉぉぉ!!」 「ゆぴぃぃぃぃぃ!こいつはげしゅなのじぇぇぇぇぇ!!おかーしゃんをたべちゃったのじぇぇぇぇぇ!!」 「まりちゃもたべられるのじぇ?…ゆんやぁぁぁぁぁ!いやなのじぇぇぇぇぇ!!おかーしゃん、たしゅけちぇぇぇぇぇぇ!!」 子ゆっくり二匹は飛び跳ねて、子れいむから距離をとる。 動けない子まりさは、必死に身をよじるが上体がうねうねと動いているだけだった。 少年達は、そんな子ゆっくり達を見て大笑い。 だが、子ゆっくり達は、そんな少年達に気がつかないほど必死だった。 「どーしちぇにげるの?れーみゅにいじわるしにゃいでぇぇぇぇぇ!!」 「こっちくるにゃぁぁぁぁ!!このゆっくちごろしぃぃぃぃ!!このげ 『ドカッ!』 ゆんぼっ?!」 「あははっ!もういいって!気持悪いからうごくなって!」 少年の一人が、逃げ回っていた子まりさを蹴り飛ばした。 そして動き回っている子ゆっくり達を捕まえて、ダンボールの中に入れていく。 ダンボールに入れられた子ゆっくり達は、最初こそ痛がっていたがすぐに親食いの子れいむを見て大騒ぎ。 小さな箱の中で跳ね回って泣き叫んでいた。 「最後はこのまりさだな、約束だったろ?おかーしゃんと同じ目に合せてやるってさ!」 「ゆ?…ゆゆ?…ゆわぁぁぁぁぁ!!まりちゃにしゃわるなぁぁぁぁ!!ゆんやぁぁぁぁぁ!!」 枝の刺さった子まりさが少年に運ばれていく。 あんよの皮が剥がされている為、そこからボロボロと餡が零れるが、子まりさはそれに気がつく程の余裕がなかった。 必死に体をブリブリと動かすが大した抵抗にもならず、傷口からさらに餡を零すだけだった。 「お待たせ糞ゆっくり!ケンカしてないでこっちを見ろよ!」 『ゆゆ?!』 少年の声に反応する子ゆっくり達。 思わずその手に握られた子まりさに視線が向かう。 「はなしぇぇぇぇ!!はな…ゆっぎゅぅぅぅぅ?!やめちぇぇぇぇぇ!!まりちゃ、ちゅぶれりゅぅぅぅぅぅ?!」 「ははっ!潰すんじゃなくて搾り出しているんだよ!!」 少年は子まりさに刺さった枝を引き抜くと、頭の方から絞るように握りしてめいった。 気づ付いたあんよから、大量の餡が顔を出す。 そしてニュルッという音とともに、子まりさの中身が段ボールに落ちた。 グチャ!! 「ゆぶぇ!」 子まりさの中身は落下の衝撃に耐えられず、音と共に一言漏らすと形を崩してダンボール内に広がった。 中の子ゆっくり達は、その餡を全身に浴びて硬直する。 餡の生暖かさがじわりじわりと伝わってくると共に、子まりさがどうなったのかを足りない頭で理解し始める。 「ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ!!おねーしゃんがぁぁぁぁぁぁ!!ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!」 「ゆっぴぃぃぃぃぃぃ!!にゃにこりぇぇぇぇぇぇ?!おねーしゃんがあまあまなのじぇぇぇぇ?!」 「ゆぶぶぶ!ゆっげぇぇぇぇぇぇ?!!あまあま…おねーしゃん…ゆげろぉぉぉぉぉぉ!!」 耐えられず餡を吐き出す子ゆっくり達。 本来なら致死量程の餡を吐いているはずなのだが、先ほど親れいむを食べていたおかげで助かっていた。 少年達は、親れいむの皮と子まりさの皮も段ボールに入れると、公園まで運んで行った。 そして元の場所に戻すと、そのままどこかに行ってしまう。 しばらくすると、そこに一匹の成体まりさが現れた。 おそらくこのダンボール一家の親だろう。 「ゆわぁぁぁぁ?!どーしてビニールさんがなくなっているんだぜ?!それに、どーしておうちがおそらをむいているんだぜ?!」 家に帰ってきて、異変に気がついた親まりさは大声で騒ぎだす。 必死にダンボールに体当たりをするが、なかなか倒れない。 するとそこに、先ほどの少年達が現れた。 「あーやっと帰って来たよ!そろそろ暗くなるし、寒いから帰ろうかと思ってたんだよ」 「よかったよかった、これでやっと帰れるね」 「ゆわぁぁぁぁ?!どーしてここに、にんげんさんがいるんだぜぇぇぇぇぇ?!」 慌てるまりさを少年が素早く捕まえると、ダンボールの上まで持っていく。 「おそらをとんでるみたー………ゆっがぁぁぁぁぁ?!なんなんだぜこれはぁぁぁぁぁ?!れいむぅ?!おちびちゃん?!ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!」 段ボールの中を見たまりさは、両目を見開き絶叫する。 中にはたっぷりの餡子と、溶けかかった子ゆっくりが3匹。 まだ死んでいないのか、「ゆっ…ゆっ…」と呻いている。 餡子の中に沈んだ大きなリボンと、小さな帽子と、ゆっくりの皮。 あれから少年達は、ダンボールの中にオレンジジュースを零して、子ゆっくり達の延命をしたのだ。 そのオレンジジュースと餡子のせいで体が溶けだし、死ぬに死ねない地獄を味わっていた。 少年はそんな段ボールの中にまりさを叩き付けるように投げ込むと、どこからか拾って来た尖った木の枝で、親まりさの頭を何度も刺した。 「ゆぎっ!いだっ!やめっ!ゆぎぃ!どぼじで!いだぃ!ごめっ!やだっ!ゆっくじできな…」 帽子も頭も穴だらけなったまりさを笑いながら見つめる少年。 「あははっ!じゃあ、そろそろ帰ろうか!」 「おう!じゃあ、明日もゆっくりで遊ぼうな!」 少年達は満足したのか、それぞれ我が家の方向に向かって歩き出す。 「ゆぎぃぃぃい!いだいぃぃぃぃ!!どぼじでぇぇぇぇ!!ゆ?!ゆげえぇぇぇぇ?!ごごげべぇぇぇぇぇ!!」 ダンボールに残されたまりさは、泣きながら何度も餡を吐き出した。 頭を刺された痛みで泣いているのか、家族をこんな目に合わされて泣いているのか。 ダンボール内に立ち込める甘ったるい死臭に吐いているのか、溶けかかって呻き声をあげている子ゆっくり達を見て吐いたのか。 まりさには分からなかった。 翌日、寒さと吐餡とストレスにより、まりさは死んでしまった。 苦悶の表情を浮かべたその顔は、周囲の餡やオレンジジュースでふやけたからだけはないだろう。 完 徒然あき
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「狭間に見た夢」 羽付きあき ・理不尽物です ・第三者視点です ・いくつかの独自設定を盛り込んでありますご注意を ・視点がコロコロ変わります。ご注意を ・・・子れいむの眼下には煌びやかな街の光が映し出されていた。 イルミネーションが星の様にキラキラと輝き、車のライトが流れる光の河を形作っている。 「ゆゆーんちょっちぇもきらきらしちぇきれいぢゃね!」 感嘆の声を上げる子れいむ。 後ろを振り向けば、フカフカの毛布のベッド、より取り見取りのあまあまの数々。 おうたを歌うステージ。底部に履く「おようふくさん」は子れいむのお気に入りばかりを何十着も用意されていた。 そう、自分は金バッジゆっくりなのだ。 子れいむはクッキーやチョコレート、ケーキなどのあまあまを夢中になって食べた。 「む~しゃむ~しゃ!ちあわちぇー!」 口の周りはチョコやクリームだらけ、幸せだった。はじける様な笑顔を浮かべ、次はステージの上で体をくーねくーねと動かして「おうた」を歌う。 「ゆ~ん♪ゆゆ~ん♪ゆっきゅり~♪ゆっきゅりしちぇいっちぇ~ね~♪」 子れいむは今、幸せだった。 快適な「おうち」頬っぺたが落ちるほどの甘い「あまあま」ふわふわの「べっど」 そして飾りに輝く金バッジ。 「ゆふふ!おちびちゃんとってもゆっくりしてるね!」 「ゆゆ!おきゃあしゃん!ゆっくりしちぇいっちぇね!」 「ゆっくりしていってね!」 親れいむが声をかける。モチモチの小麦粉の肌にしっとりとした砂糖細工の髪、そして皺ひとつない飾りに輝く金バッジ。 子れいむ自慢の母親だ。 「おきゃあしゃんしゅーりしゅーり!」 「すーりすーり!おちびちゃんはこれからずっとゆっくりしたまいにちをおくるんだよ!」 「れいみゅちょっちぇもしあわちぇぢゃよ!」 「れいむもとってもしあわせだよ!」 ・・・子れいむはこれから、親れいむに見守られ育ち、同じ金バッジの番いのまりさと「ずっといっしょにゆっくり」して、かわいいかわいい子ゆっくり達を育み、笑顔いっぱいの「家族」と永遠にゆっくりするのだ。ずっと・・・きっとずっと・・・ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ・・・不気味な音を立てた風がビュービューと流れていく。 風はまだあまり強くないが、空は鉛色に染まっており、夏のはずなのに不気味なほどの静寂さを醸し出していた。 そう、台風が近づいてきている。 と言っても、明後日やそこらの話だ。まだ雨も降っていないし、ただ曇っているだけである。 この街には曇り空がお似合いではないかと思う。 そう考えるのは私が街ゆっくりに焦点を当てているからだろうか・・・? いずれにせよ、街は相も変わらず寂しい、荒涼とした感じを醸し出している様に思えた。 羽付きが横を跳ねて追いついてきた。 「羽付き、もうすぐ台風だけど"おうち"に居なくていいのかい?」 「まだほんかくてきになるのはさきのはなしだぜ。それに」 「それに?」 「たいふうやふぶきみたいなひのまえは、まりさのおうちによくくるんだぜ。あぶれたゆっくりが・・・」 「じゃあ尚更戻った方がいいんじゃないか?」 「いまもどってるところなんだぜ」 「え?」 「このさきのろじうらにまりさのおうちがあるんだぜ」 私と羽付きは今にも落ちてきそうな曇天の下を歩く。 風はただ不気味に、そして寂しく音を立てて流れていくだけだった。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ こじんまりとした路地裏に、ひと際立派なダンボール箱がある。 ビニールシートをかぶせ、大きさがバスケットボールサイズのゆっくりなら3~4体は入れそうな程の大きさだ。 「ここが羽付きの?」 「いつつめのおうちだぜ」 「五つ目?」 「そうだぜ。このきせつとつぜんあめとかがふってきたりとか、いらいをうけたところがとおかったりしたときになんこかおうちをてんざいさせてあるんだぜ」 「でも、勝手に住み着かれたりしないのか?」 「かってにすみついてもらったほうがけっこうなんだぜ。かってにおそうじをしたりしてくれるからわりかしべんりなんだぜ」 ・・・羽付きはどうやら全部で10個近くの「おうち」を持っていると言う。 街の各所に点在しているそれらを使って長丁場の依頼や地域ゆっくりの一時的な避難場所の提供等に羽付きは使っていると言う。 重要な所は普段は地域ゆっくりの住まいとして提供しており、それ以外の所は勝手に街ゆっくりに住み着かせていると言う。 街ゆっくりの最重要物資である食料等はおいていないので勝手に食い荒らされる心配は無いと言う。 また、羽付きがよく使用している「おうち」は食料も相当数貯めているが、南京錠を使った簡易的かつ堅牢な「きんこ」を作っており、破られる心配は無いと言う。 ・・・羽付きの「おうち」の前に二体のゆっくりがいる。 先客だろうか?パッと見た限り地域ゆっくりと言った感じではなさそうだ。 「先客がいるね」 「れいむのおやこかぜ・・・」 羽付きと私は少し近づいて様子を伺う。 バスケットボール大のれいむと、ソフトボールほどの子れいむ。合わせて二体の様だ。 風貌は汚く、ボロボロの飾りと砂糖細工の髪、いくつか擦り切れて駆けているリボンは街ゆっくりと言う事を否応なしに現していた。 煤や泥にまみれた小麦粉の皮は生傷だらけで、底部に近づくにつれ多くなっていく。底部も真っ黒くカチカチになっているようだ。 「ゆゆー!ちょっちぇもすてきなおうちがありゅよ!おきゃあしゃん!ここをおうちにしちゃいよ!」 「・・・ここはほかにすんでるゆっくりがいるよ。でもたいふうさんがどこかへいくまでちょっとだけやすませてもらおうね」 どうやら先ほどここを見つけたようだ。 恐らく食料も住処も持っていないれいむなのだろう。 こんな天気にまで外に出ていると言う事は「おうち」を探しながら食料をあてどなく探して街をふらついていたのだろう。 「じゃあ、なかでゆっくりやすもうね」 「ゆっくりわかっちゃよ!」 親れいむがビニールシートを捲った時に、羽付きが飛び出した。 「かってにはいってもらっちゃこまるんだぜ」 「「ゆゆ!?」」 驚くれいむ親子をしり目に羽付きが意にも介さず淡々としゃべる。 「ここはまりさのおうちなんだぜ。あまやどりならおうちのなかにまではいらなくてもこのろじうらならあめもかぜもはいらないんだぜ」 「ゆ!?れいみゅゆっくりやしゅみちゃいよ!いじわりゅしにゃいぢぇいれちぇね!」 「ゆゆう・・・しかたないよ・・・おちびちゃん・・・」 食らい下がる子れいむを宥める親れいむ。 グズっていた子れいむも親れいむが粘り強く宥めてようやく落ち着いた様だ。 「そこにすきまがあるからねるときはそこにすればいいぜ。あとこれからにんげんさんがくるけどべつにまりさやれいむたちにはなにもしないからほっといてもらってけっこうなんだぜ」 「ゆっくりわかったよ」 私が近付いて行くと、少しおびえた表情をした物の、そこまでの事だった。 ビールケースなどが積まれたその隙間に、すっぽりと体を押し込め、じっとしているれいむ親子を見ずに、羽付きは帽子の中から一口ゼリーやアーモンドチョコ等を取り出すと、黙々と食べ始めた。 「む~しゃむ~しゃ・・・」 「ゆうう・・・」 「おいししょうぢゃよ・・・」 それを見ていた親れいむが恐る恐る羽付きに話しかける。 「ま、まりさ!」 「なにかぜ?」 ・・・羽付きが目玉だけを動かしてれいむを見据える。 「その・・・ち、ちょっとだけでいいかられいむたちにもわけてほしいよ!」 羽付きの動きがとまった。それをYESと見たのか親れいむが捲し立てるように話す。 「れいむたちはゆっくりできないにんげんさんにおうちをこわされてからずっとゆっくりできないせいかつをしていえるんだよ!」 「だからなんだぜ?」 「ご、ごはんさんもあんまりたべられないでおちびちゃんもおなかをすかせてるよ!れいむがだめならせめておちびちゃんにごはんさんをちょうだいね!」 「いやにきまってるんだぜ」 「ゆ・・・ほんのちょっとでいいから・・・ち、ちょうだいね!」 「いやっていってるのがきこえないのかぜ!!」 「ゆぅ!?」 羽付きが声を荒げてどなりつけた。 ビクリと小麦粉の体を震わせてれいむがひるむ。 「まりさはじぶんがかわいそうとかいってだれかからなにかをもらおうとするゆっくりがだいっきらいなんだぜ!かわいそうなのはおまえのせいだぜ!じごうじとくのぐずになさけをかけてやるほどまりさもよゆうはないんだぜ!」 「ゆびぇえええん!きょわいよぉぉ!」 ・・・羽付きの声に驚いた子れいむが泣きだしている。 親れいむそれを見て子れいむに寄り添い、すーりすーりで宥めている。 「おちびちゃんだいじょうだよ!こわくないよ!すーりすーり!」 「ゆぇええええん!ゆびぇぇええええん!!」 羽付きはその光景を冷めた目で見ながら、帽子をかぶり直している。 「言いすぎじゃないか?」 「にんげんさんはあまいんだぜ。どこかのゆっくりのえさばをしらずにかりをしてるとかならまりさだってごはんさんはあげるけど、こんなやつらにやってたらきりがないんだぜ」 「悪いゆっくりには見えないけどなぁ」 「ゆっくりにいいわるいがあるとすればそれはかいゆっくりだけだぜ。まりさたちはまちゆっくり、そもそもがわるいというぜんていにいるんだぜ」 「しかし泣きやまなかったらうるさくって仕方がないんじゃないかい?」 私がれいむ親子に目を向ける。火がついた様に泣き喚く子れいむを必死になだめるれいむであったがあまり意味は無い様だ。 「ゆびぇええええん!おなかすいちゃよぉぉおおお!どぼじぢぇえええ!?れいみゅたちにゃにもわりゅきょちょしちぇにゃいにょにいいいい!きょんなにょっちぇないよおおおおお!」 「おちびちゃんゆっくりなきやんでね!すーりすーり!」 「どぼじじぇきんばっじのれいみゅちょおきゃあしゃんぎゃきょんなゆっきゅりきにゃいにょおおおおおお!?」 「おちびちゃん!きんばっじでもゆっくりできないときがあるんだよ!?」 「ゆえええええん!きんばっじさんはいつになっちゃらもらえりゅにょおおおお!?」 「おちびちゃんがゆっくりしたゆっくりになったらだよ!だからなきやんでね!ゆっくりしていってね!」 「ゆびえええええええええん!」 ・・・ダメだ。キリがない。 私はバッグの中から板チョコレートを取り出し、小さく割るとれいむ親子の方に投げつけた。 「ゆ?」 「ゆっく・・・ひっく・・・ゆゆぅ・・・?」 「お腹がすいてるから泣くんだよ。それ食べていいよ」 ・・・途端に親子れいむの顔が明るくなる。 何度も親れいむがお礼を言って、子れいむが貪る様に食べている。 「ゆっくりありがとうね!おにーさん!」 「はふっ!むしゃむしゃ!はぐっ!しあわしぇええええ!!おにーさんゆっきゅりありがちょう!」 「でも、あげるのはこれっきりだからね?」 「「ゆっくりわかったよ!」」 先ほどとは打って変わって明るくなったれいむ親子を見ると、私は再び羽付きの方へと歩んでいった。 「いただけないんだぜ。にんげんさん」 「いいじゃないか、うるくなくなっただけでもさ」 「・・・ゆぅ」 「それにしても金バッジとか言ってたね。あのれいむ親子」 「ふいてるだけだぜ。きっとほんとうのきんばっじならまちゆっくりになるはずないんだぜ・・・ほんとうにゆっくりしていれば・・・」 羽付きの表情が曇った。すぐに帽子の唾を下げたため表情が隠れてしまったが、何か嫌な事でも思い出したかのように私は見えた。 「おにーさん!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇいっちぇね!」 私が振り返るとそこにはれいむ親子が近付いていた。 「ああ、別にいいよ」 「おにーさんはとってもゆっくりできるね!」 「れいみゅきょんにゃおいしいあみゃあみゃをたべちゃのはじめちぇぢゃよ!」 「所で、さっき金バッジがどうのこうのって言ってたけど、れいむ達は金バッジだったのかい?」 「ゆぅ・・・」 ・・・れいむが口をもごもごとさせている。 半面、子れいむの方は明朗快活に答えている。 「そうぢゃよ!おきゃあしゃんはきんばっじのゆっきゅりだっちゃっちぇいっちぇちゃよ!だきゃられいみゅもきんばっじのゆっくりになりゅんぢゃよ!」 「ゆ・・・おちびちゃん・・・」 「きんばっじになればとっちぇもゆっきゅりできりゅんぢゃよ!れいみゅがあとちょっとおおきくなっちゃらおきゃあしゃんもきんばっじになっちぇゆっきゅりできりゅっちぇいっちぇちゃよ」 「へぇ・・・金バッジにねぇ」 「おにーさん・・・」 れいむの顔が焦りに陰る。 ・・・都合の良い方便に金バッジを使ったと言う事はありありとわかった。 羽付きもウンザリと言った顔をしている。 目をキラキラと輝かせて輝かしい未来を信じている子れいむに、私はこう言った。 「凄いね。きっと金バッジになれるよ・・・ゆっくりしたね」 「ゆ!おにーしゃんありがちょうね!」 「・・・おちびちゃん。ごはんさんをたべたらあんまりうごかないようにしようね。きょうはもうねようね」 「ゆ!?でみょ・・・」 「寝た方がいいよ、疲れてるんだろう?」 「ゆゆ!しょうじゃね!ゆっきゅりちゅーやちゅーやしゅりゅよ!」 「・・・じゃあ、しっかりれいむにくっついてね」 「ゆゆ!わかっちゃよ!」 ・・・この子れいむの信じている未来が来る事は、おそらく永遠にないだろう。 羽付きも怒りを込めて目でれいむを見ていた。 私も正直言ってkのれいむのしている事に感心しない。 何時かウソもばれる日が来るだろう。その時はどうするのだろうか・・・ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「すーやすーや・・・」 「ちゅーやちゅーや・・・」 15分もするとすぐにれいむ親子は小麦粉の皮を寄せ合って眠り始めた。 ・・・寝顔だけは金バッジ級だ。 「このれいむ親子はどうなるんだろうな・・・」 「さあ・・・まりさにはかんけいないことだぜ」 「この子れいむは金バッジを何かよく知らないで信じ込んでる節があるなぁ・・・かわいそうに」 「・・・きんばっじなんてあのれいむがおもってるほどいいものじゃないんだぜ」 「だろうね」 ・・・羽付きの顔が曇る。 きっと何かを思い出しているのだろう。 だがそれを聞く勇気は私には無かった。 そう考えていると、微かに遠くでゆっくりの悲鳴が聞こえた。「ゆんやあ」と それを聞いて羽付きが急いで「おうち」から飛び出す。 「すぐにここをはなれるんだぜ!」 「なんでだい?」 「かこうじょだぜ。いっせいほかくにきたんだぜ!」 「何だって!?」 「はやく!はやくいくんだぜ!」 「でももう表には・・・」 そう、私と一緒に居ても羽付きは「街ゆっくり」 見つかればつかまってしまうだろう。しかも、すぐそこまで来ている。 そう考えた私の考えを見抜く様に、羽付きが帽子の中から、ほんの少しだけ鈍く光る金色の丸い何かを取り出した。 「まりさはだいじょうぶだぜ!きんばっじをこうやってつけたら・・・」 「よかった!じゃあ・・・」 「はやくいくんだぜ!」 「ちょっとまって!れいむ達は!?」 「・・・ざんねんだけどおいていくんだぜ。それに、もうばっじのよびはないんだぜ」 「・・・!・・・しょうがないか」 ・・・私と羽付きは路地裏を一気に飛び出した。 表では袋に詰められて泣き叫び、苦しむ街ゆっくりがそこらかしこに現れている。 「 わがらないよぉぉぉ!!らんじゃまああああ!」 「むぎゅううう・・・!ぐるじぃぃ・・・えれえれ・・・!」 「どがいばっ!どがいばあああ!までぃざあああああ!」 「でいぶうううう!おぢびぢゃああああん!にげっ!にげるんだぜえええええ!」 棒の先にフックを付けた物を持ってゆっくりを引っかけて捕まえる加工所職員達。 路地裏から飛び出した、私と羽付きを一瞥するが、すぐに路地裏へと通り過ぎて行った。 あのれいむ達は・・・私と羽付きが振り返り、れいむ親子のいた場所を眺める。 未だすーやすーやと眠り続けていたれいむ親子だったが、表の騒音にようやく目覚めたようだ。 「ゆゆ!?」 「ゆぅ・・・おきゃあしゃんどうしちゃの・・・?」 「・・・そとのようすがおかしいよ!おちびちゃん!いますぐいどうするよ!」 「ゆ・・・ゆっくりかわっちゃよ!」 ・・・親れいむの只ならぬ様子に感ずいたのか、素直に言う事を聞いて隙間から飛び出すれいむ親子、だがその目前に、加工所職員がいた。 「ゆううううう!おちびちゃん!いそいでにげてねっ!」 「ゆ!ゆ!」 足元を掻い潜って逃げようと跳ねた親れいむの小麦粉の顔がゆがんだ。 その瞬間、凄まじい勢いで蹴っ飛ばされ、壁面に叩きつけられる。 「ゆげぇっ!」 「おぎゃあじゃああああああああん!?」 「おぢびぢゃ・・・にげ・・・ゆぐぇっ!」 跳ね寄る子れいむに逃げろと言う親れいむ、だが言葉半ばに加工所職員がれいむの底部辺りを思いっきり踏みつけた。 ゴボリと口か餡子が吐き出される。 「ゆげぼっ!ゆごぼっ!おぢびぢゃん・・・!おでがい・・・にげっ・・・ゆぐぉおっ!」 「おぎゃあじゃん!おぎゃあじゃああああん!ゆっぎゅりじじぇええええええ!」 親れいむが再び踏みつけを食らう。 勢いよく転がって、地面に這いつくばりながら、せき込み、餡子を吐き出した。 「ゆぐっ・・・!ゆげぇぇぇぇええええ…!ゆげぼっ・・・!ゆご・・・お”ぅ”げえ”え”え”え”え”・・・!」 ビチャビチャと餡子と砂糖水が吐瀉物のごとく口からダラダラと流れ出る。 「おきゃあしゃんをゆっきゅちいじめにゃいぢぇね!れいみゅおきょりゅよ!」 「ゆげっ・・・!げぇっ・・・!お、おぢびぢゃん・・・!」 ・・・加工所職員の目の前に立ち、大きく膨らみピコピコを激しくふって威嚇する子れいむ。 加工所職員がひきつった笑みを浮かべると、棒の柄で、子れいむを突こうとした。 その刹那、親れいむが背中を向けて子れいむをかばい、柄の棒での突きを受けた。 ゴチッと音がしてれいむの後部に棒の柄がめり込む。 「ゆぐっ・・・ゆぐぅぅぅっ!」 「おぎゃあじゃん!?」 「おぢびぢゃん・・・は・・・れいむ・・・が・・・まも・・・まもるよ・・・!」 加工所職員が棒の柄で何度も何度もれいむを突き続ける。 そのたびにれいむは屈んで子れいむを守り続けた。 「ゆぐっ!ゆがっ!ゆぎっ!」 「おぎゃあじゃんぼうやべぢぇ!おぎゃあじゃんすっぎょきゅいちゃがっちぇりゅよ!?」 「ゆっぐぅ!べいぎ・・・!だよ・・・!おぢびぢゃん・・・は・・・!れいぶが・・・れいぶが・・・!まもるがらねっ・・・!ゆぐぇっ!」 ・・何度突いても屈んで耐え続けるれいむに業を煮やしたのか、フックで引っかけると、こちらに引っ張ってこようとする。 「おぢびぢゃんっ・・・!れいぶのおぐぢのながにばいっでね・・・!ゆぎっ・・・!」 「ゆ!ゆっくりわかっちゃよ!」 ・・・ここからではそこまでしか見えなかった。 恐らくフックで引っ掛けられて袋に詰め込まれてしまったのだろう。 加工所職員が路地裏から出てきた時には、れいむ親子が入っていたであろう袋がグネグネと蠢いているのを私は見た。 あっという間に加工所の捕獲は終わった。 後に残ったのは隠れて無事だった子ゆっくり達や赤ゆっくり達の親ゆっくりを呼ぶ慟哭。 そして破壊された「おうち」の数々。 まだこの子ゆっくり達はまだマシな方だろう。 捕まったゆっくり達は明日までのゆん生なのだから・・・ 羽付きと私は、ただその光景を眺めている事しかできなかった。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 「ゆうー!」 「ゆゆ!」 子れいむ達の目の前に広がっていたのは、まさしく「ゆっくりプレイス」ともいうべきものだった。 どこかの大きなビルの上の階なのだろう。絶景が子れいむ達の眼下に広がっている。 あの後、親切な人間さんが子れいむ達を助け出してくれたのだ。 一目見て金バッジのゆっくりだとわかったと言う。 そしてけがをした親れいむを治療してくれた。 小麦粉を水で溶いた物をハケで塗ってくれて、すっかり子れいむを守るために受けた傷は治ってしまった。 すっかり元気になった親れいむを見て、何故か子れいむは涙が止まらなかった。 そんな子れいむを見て人間さんは、チョコレートをお皿一杯に持ってきてこう言ってくれた。 「お腹がすいてるから泣くんだよ・・・それ食べていいよ」 にっこりとほほ笑む人間さんを見て、お礼を言いながら、チョコレートをほおばった。今まで食べた事のない様な味だった。 ・・・そして子れいむ達は汚れを洗って綺麗にしてもらった後は「おようふく」を着せてもらったのだ。 「とっても似合ってるよ」 そうほほ笑む人間さんに親れいむと子れいむはこう言った 「「にんげんさん!ゆっくりありがとうね!!」」 そう、子れいむは今、幸せだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「おぎゃあじゃああああああああああああん!!」 「おぢびぢゃんっ・・・!おぢびぢゃぁぁんっ・・・!」 ・・・捕まった後、れいむ親子はトラックに載せられ、「加工所」に入れられた。 餡子脳の奥深くに刻まれているのだ。加工所はとてもゆっくりできないものだと。 戦々恐々とする親子れいむは、せまくるしい籠の中に入れられ、一夜を明かした。 怖がりながらも小麦粉の皮を寄せ合って寝た。親れいむの温もりだけが子れいむを包み込む優しい祐樹だった。 ・・・それが最後の親れいむの温もりとなる事も知らずに そして今、籠から親れいむが引っ張り出されようとしている。 何とか食らいついていたが、とうとう引っ張り出されてしまった。 加工所の職員にピコピコを掴まれて連れて行かれる時に、親れいむはひたすら子れいむに語りかけていた。 「おちびちゃんっ!れいむがいなくなってもつよくてゆっくりしたゆっくりになってねっ!まけないでっ!まけないでねっ!おちびちゃんんんんんっ…!」 「おぎゃあじゃんっ!おぎゃあじゃんっ!!おぎゃあじゃあああああん!!」 ・・・そして、扉がバタンと大きく音を立てて閉められた。 子れいむは、それ以降親れいむを見ていない。 そして今子れいむは真っ暗やみの狭い狭い「箱」の中に居る。 何もない、本当に何もないところだ。 ・・・餌だけはほんの少しだけ毎日小さな窓からポロリと落ちてくる。 食にこまる事は無かった。だが子れいむは「しあわせー」と叫べない。親れいむがいないから・・・ 今日も子れいむは夢を見る。儚い夢だ。 あの羽根のついたまりさの横にいた人間さんが助けだしてくれる夢。 その中で、子れいむは全てを手に入れる。金バッジをくれて、あまあまも、親れいむも、「おようふく」も・・・ 淀みゆく空虚な思考の「ゆっくりプレイス」の中で、子れいむは今日も夢を見る。 たとえそれが叶う事のない夢だとしても ここには真っ暗で狭くて、冷たくて、本当に、何も、無い。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 夏の夕暮れが全てをオレンジ色に染め上げていく。 台風は去り、再び夏はうだるほどに太陽を照らしつける。 私は、夕暮れの街に居た。 あの後、羽付きは「おうち」を転々と変えて街にいる。 時にはバッジを付けて、時には「かざり」を変えて・・・ 少なくとも羽付きが捕まる事は無いだろう。 私はなぜかそう確信していた。 ・・・あの親子れいむの事を何故かよく思い出す。 金バッジの事を何も知らず、あるはずのない空虚な未来を信じていたあの子れいむは幸せだったのだろうか? 本当のあの親れいむは金バッジだったのだろうか・・・ 全てをする術はもうどこにも無かった。 日はまた沈み、また昇っていく。 昨日もまた、明日もまた・・・ あの子れいむにも親れいむにも太陽は光を照らし続けてくれるだろう。 きっと・・・ずっと・・・
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ゆっくりチルノの一日 紅魔館の前に広がる巨大な湖。 正確な大きさすら分からぬその湖畔には妖精からゆっくりまで、様々な生物が生息している。 それは生態系ピラミッドの下層に位置するゆっくりにとっては天敵も多いという事実を示しているが、 それでもやはり豊富な水や食料と言うのは捨て難い魅力らしく、ゆっくり達は日々危険にさらされながらも ゆっくりとした生活を送っていた。 そんなゆっくり達のうちの一匹、水色の髪に薄い色の羽、 氷精を模したゆっくりであるゆっくりチルノは今朝も狭い巣穴の中で起床の一声を挙げた。 「おはよう!あたいってばゆっくりね!」 近くには誰もいないのだが、そんなことは気にせずに伸びをする。 「ん~~~っ!」 さて、さっそく朝食を取ってこよう そう思ったゆっくりチルノは草むらに穴を掘っただけの小さい巣穴から元気よく飛び出す。 実は昨晩のうちに明日の朝食にしようと思って巣穴に木の実をいくらか蓄えていたのだが、 そんなことはもう忘れてしまったらしい。 まぁしょうがないよね!⑨だもの! 夏の暑い日差しもこんな朝早くは厳しさを感じさせない。 だが晴れ渡った青空はその日も暑い一日となることを告げていた。 そんな日差しの射す湖畔をぴょんぴょんととび跳ねるゆっくりチルノ。 しかし空腹に悩まされているその体はあまり元気がない。 「う~~………あたいってば腹ぺこね……」 誰にともなく呟きながら餌を探すゆっくりチルノ。 そもそも燃費の悪いゆっくりにおいて昨晩から何も食べていないのだから元気がないのは当然であった。 しかしどれだけ探しても餌となりそうな虫も花もなかなか見つからず、段々とその足取りは重くなっていく。 実際は探し方が悪いだけでそこら中に食べられる物はあったのだが、 ゆっくりの中でも極めつけの餡子脳、ゆっ⑨りブレインではそんなことは分かるはずもなかった。 あたいってばここで死ぬのかしら、とゆっくりチルノ空腹で朦朧とした意識で考え始めていたその時、 急に足場を踏み外して湖の近くの池とう(小さい池みたいなもの)に突っ込んでしまった。 「1+1=11!!?」 意味不明な⑨ソウルを叫んでぷかぷかと池とうに浮かぶゆっくりチルノ。 早く上がらなきゃ、と僅かに残った意識が警鐘を鳴らすが最早そこから脱出する力は残されていなかった。 頭の中に走馬灯が流れ始める。 記憶力が無いので1秒で終わった。 「ゆっくりした結果が⑨だよ……!」 ⑨なこととゆっくりしていたことはあまり関係ないのだが、 それはともかくそんなつぶやきとともにゆっくりチルノの意識は闇に沈んだ。 「ゆっゆっゆ~♪ゆゆゆ~ゆ~♪ゆ~ゆゆ~♪」 何やら音痴な歌声が聞こえてきてゆっくりチルノは意識を取り戻した。 体は相変わらず池とうに突っ込んだままだが、先ほどと違って空腹は満たされ、体は元気に充ち溢れている。 「んっぷはっ!あたいってばゆっくりね!」 何で元気になったのかはよく分からないが、とにかく元気になって復活したのだ。 あたいってばひょっとして最強に運が良いのかもしれない。 と幸せ脳回路で考えたゆっくりチルノ元気いっぱいな叫び声とともに池とうから抜け出した。 実際は運が良いとか何か特別なことがあったとかいうわけではなく、 ただ単にゆっくりチルノの体が氷でできており、池とうにはまったことで体が勝手に水分を吸収して 回復しただけなのだが、そんな理屈は当の本人は知る由もなかった。 だって⑨だもの。 因みにゆっくりチルノの氷は微妙に糖分を含んでおり、溶かすと砂糖水になっておいしいらしい。 ここでなんで氷のくせに常温で溶けないんだとか、そもそも氷が動くわけないだろとか言う突っ込みは、 饅頭が生きている世界においては野暮である。 さて、池とうから上がったゆっくりチルノは音痴な歌声の方に向かって跳ねていく。 「あたいってばゆっくりね!」 向かった先には予想通りゆっくりがいた。 それも一匹ではなくゆっくりれいむの家族である。 ゆっくりチルノよりも二回りは大きな母れいむ一匹に4匹の小さい赤ちゃんで構成されたその家族は、 歌を歌いながらお散歩を楽しんでいる最中のようだ。 「「ゆ?ゆっくりしていってね!」」 ゆっくりチルノに気付いた一家がお決まりの挨拶をする。ゆっくりチルノもそれに応えて 「ゆっくりしていってね!れいむってばゆっくりね!」 と返す。 「ゆ?おねえさんゆっくりできるちと?」 赤ちゃんれいむの問いかけに 「あたいってばゆっくりね!一緒にゆっくりしようね!」 とゆっくりチルノが楽しそうに返す。 「「一緒にゆっくりしようね!」」 あっという間に仲良くなった一家とゆっくりチルノは一緒に遊び始めた。 「ゆー。それにしても暑いよ!ゆっくりできないよ!」 しばらく遊んだあと、体中から汗を流しながら母れいむがいった。 太陽は既に天頂近くまで上っており、夏の暑い日差しがぎらぎらと降り注ぐ。 先ほどまではキャッキャッと楽しそうに遊んでいた子れいむ達も今は暑さに疲れて ぺたんと地面にへたり込んでいた。 「あたいってば暑くてもゆっくりね!」 そんな中、氷でできたゆっくりチルノだけが元気にしていた。 「ゆ?おねえちゃんつべたい?」 ふと一匹の子れいむがゆっくりチルノから発せられる冷気に気づき、側に近づいて行く。 「ゆー!おねえちゃん涼しくて気持ちいいよ!ゆっくりできるよ!」 「ゆ?ほんと?」 「れいむも涼しくなりたい!」 「ゆっくりさせてね!」 一匹の子れいむの言葉を皮切りにして次々と他の子れいむたちもゆっくりチルノに近づいて行った。 「ゆ!ほんとだ!とっても涼しいよ!ゆっくりできるね!」 「おねえちゃんすごいよ!」 「ゆっくりさせてね!」 そう言いながら4匹の子れいむはゆっくりチルノを取り囲んでその冷気にあたり、ゆっくりし始める。 「あたいってばとってもゆっくりねっ!」 ゆっくりチルノもわけはわかってないがとにかく子れいむ達が自分を頼ってくれるのが嬉しいようだ。 一方母れいむは 「おかあさんも入れてね!おかあさんもゆっくりさせてねっ!」 とその周りをぴょんぴょん飛び跳ねている。 自分も冷気にあたって涼みたいようだ。 しかしすでに4匹の子れいむで囲まれたゆっくりチルノの周りに巨大な母れいむが入る余裕はなく、 何とか押し入ろうと子れいむ達をぐいぐい押し始めた。 「ゆゆっ!どいてね!おかあさんも入れさせてね!」 しかしそんな母の態度に子れいむたちから非難の声が上がる。 「ゆゆっ!おかあさん押さないでね!」 「そんなにされたらゆっくりできないよ!」 「おかあさんはあっちでゆっくりしててね!」 「ここにおかあさんのはいる場所はないよ!ゆっくりりかいしてね!」 「どうしてそんなこというのぉぉぉ!!?」 一家が危うく親子げんかに発展しかけた時、ひらひらと何処からか蝶が飛んできた。 「ゆ!ちょうちょさんだ!ゆっくりしていってね!」 さっきまで押し入ろうとしていたのも忘れて蝶を食べよう追いかける母れいむ。 「ゆっ!ゆっ!ゆっくりして言ってね!早く食べられてね!」 何とか飛び跳ねて捕まえようとするもうまくかわせれてなかなか捕まえることができない。 そんな母の様子を、子れいむ達はゆっくりチルノの近くで涼みながら見ていた。 「ちべたいねー」 「きもちいねー」 「あたい!」 と、母親に追い立てられた蝶がふらふらとゆっくりチルノの方に飛んでいき、その顔の中心に止まった。 蝶の方も暑かったのかもしれない。 しかし突然の事に驚いたチルノは対応できず 「ゆっゆっゆ……ゆっくし!」 とくしゃみをしてしまったのだ。 本人は自覚していないがくしゃみはゆっくりチルノ最強の武器である。 体の奥の冷たい冷気と水滴を同時に飛ばすことによって向いている方向の物を一瞬にして凍らせてしまう 破壊力を持つのだ。 その冷気はゆっくりレティやゆっくりもこーでも無ければ耐えることはできないだろう。 上手く活用すればあっという間にゆっくりチルノはゆっくりピラミッドの上位まで 上り詰める事が出来るかも知れない。 最も意図してくしゃみしたりなんて出来ないので意味ないんだけど。 さて、そんなわけでその行動は本人の意思にかかわらず相応の結果をもたらす。 すなわち、その時ゆっくりチルノの正面にいた子れいむの凍結という結果を。 「ゆっ!」 短い悲鳴を上げて驚愕の表情をして凍結した子れいむを見てその場にいた他のゆっくりたちの表情も凍りつく。 茫然としたゆっくり達が凍った子れいむを見つめる凍った時間の中で、 くしゃみに驚いた蝶だけが時間が動いているようにひらひらと飛んで行った。 数秒後、我にかえった母れいむが激昂してゆっくりチルノに掴みかかる。 「れっ、れいむの赤ちゃんになにするのおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!??」 その叫び声を受けて他のゆっくり達の時間も動き出す。 「ゆっ、こんなことするおねえちゃんとはゆっくりできないよ!」 「ゆっくりどっかにいってね!」 「ゆっくりしね!」 今まで涼ませてもらっていたことも忘れてゆっくりチルノを罵倒しながら母れいむの陰に逃げ込む子れいむ達。 一方激昂した母れいむはゆっくりチルノを責め続ける。 「赤ちゃんを元に戻してね!早く元に戻してね!今すぐ元に戻してね!直ちに元に戻してね! マッハで元に戻してね!元に戻せたら許してあげてもいいよ!」 「ゆ、ゆー……」 一方責められているゆっくりチルノ。 さすがに自分が悪いことは分かっているのか申し訳なさそうにしていて何も言い返さない。 だが、凍ってしまった子れいむをすぐに戻す方法など思いつかなかった。 「黙ってないで何か言ってね!早く溶かしてあげないと二度とゆっくりできなくなっちゃうよ! それでもいいの!?」 「ゆ……ゆ!?」 ーその時、ゆっくりチルノに電流走る―! 溶かす!そうだ、溶かせばいいのだ! ゆっくりチルノはそのゆっ⑨りブレインにも関わらず、水に沈んだゆっくり達がどうなるか知っていた。 そう、水に「溶ける」のだ。 ちょうど近くには大きな湖がある。そこに入ればすぐにでも「溶ける」だろう。 色々と間違っているがとにかくゆっくりチルノにとってこれは名案に思えた。 この子れいむを元に戻すことが出来ればまた一家と仲良くゆっくりできるに違いない。 あたいってば天才ね! さて、そうとなれば善は急げ。ゆっくりチルノは母れいむに言い放った。 「分かったよ!あたいがこの子を「溶かし」て元に戻して来るよ!あたいに任せてゆっくり待っててね!」 そう言うと凍った子れいむを口にくわえ、一目散に湖に向かって走って行った。 湖畔に辿り着いたゆっくりチルノは、さっそく湖に凍った子れいむを浮かばせた。 ここで勢いよく落として氷を砕いてしまうような真似はしない。 同じ過ちを犯さないなんてあたいってば天才ね! ……実際このゆっくりチルノにそんな経験はないのだが、多分平行世界の記憶でも流れ込んできたのだろう。 とにかく、これで子れいむは氷が溶けて元に戻るに違いない。 戻った時にはきもちよく「すっきりー!」という声を聞かせてくれることだろう。 そう、「すっきりー!」という声が聞ければいいのだ。 ゆっくりチルノはゆっ⑨りブレインにそう刻み込むと、凍った子れいむがその声を聞かせてくれるのを 今か今かと待ちわびた。 落とされた凍結子れいむはぷかぷかと浮かんだあと、はたしてゆっくりチルノの思惑通り融解しだす。 その様子を見て得意満面のゆっくりチルノ。 「やっぱりあたいってばゆっくりね!」 表面の氷が溶け、やがて子れいむ本体にも水温が伝わりその体が徐々に熱を取り戻し始める。 「…ゅ…さむいよ……ゆ…?」 ついに子れいむが意識を取り戻した。 無事子れいむが生き帰ったことに全身で喜びを表すゆっくりチルノ。 すぐに元気になって「すっきりー!」という声を聞かせてくれるに違いない。 しかし聞こえてきたのは予想と真逆の悲鳴だった。 「ゆ……ゆ!?い、い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!み゛ず!み゛ずがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 急に寒くなって意識を失い、意識を取り戻したらそこは地獄だった。 子れいむの経験を端的に表すとこうなる。 本能的に水の危険性を知っている子れいむは、何とか岸に上がろうともがくがもがけばもがくほどその体は 岸から離れていく。 「ゆ?れいむってば何してるの?遠くに行かないで早く戻ってきてね!」 予想と違った状況にゆっくりチルノは慌て始める。 どうしてだろう、子れいむを「溶かせ」ばいいはずなのに。 「お゛ね゛え゛ち゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛ん゛!!だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 ゆっくりチルノの姿を認めた子れいむは必死に助けを求め始めた。 しかしどんどん離れていく子れいむはもはやゆっくりチルノが届く範囲とはかけ離れた位置にいた。 「なんでえええええええ!?!?どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおお!?!?」 幸運なことにゆっくりチルノは知っていた。 ゆっくりは水に「溶ける」ということを。 そして不幸なことにゆっくりチルノは知らなかった。 ………自分は水に入っても溶けないという事を。 「ゆ、ゆー。」 母れいむに責め立てらてた時のような困惑の声をあげるゆっくりチルノ。 助けにいこうとすれば自分が溶けてしまう。 何がいけなかったのだろう、自分は母れいむが言ったとおり子れいむを「溶かし」ただけなのに。 「ゆぅー!早くこっちに来てね!あたいが引き上げるよ!だから早くこっちに来てね!」 「ぞんな゛あああああああああああ!!!!だずげでよおおおおおおおおおお!!!」 ゆっくりチルノにできるのは応援の言葉を贈るだけだった。 やがて水を吸った子れいむの皮がぶよぶよと伸びはじめ、体内から餡子が漏れ始める。 その事に気づいた子れいむが涙と絶望と恐怖と後悔にまみれた悲鳴を上げた。 「いやだああああああああああああああああああああ!!!じにだくない!じにだくないよおおおおおおお!!! も゛っどゆっぐりじだいよおおおおおおおお!!まだゆっぐりじだいごとだぐざんあ゛っだのにいいいいいいい!! ぎょうはがぞぐみんなでどっでもゆっぐりずるはずだっだのにいいいいいいいい!!! まりざとあじだあぞぶやぐぞぐもじでるよおお!がまんじでどっでおいだりんごまだだべでないよおおおお!! ほがのおいじいものももっどもっどだべだいよおおおおお!!いつかどおぐまでおざんぽじだがっだよおお!! おうだももっどうまぐなりだがっだよおおおお!!ぶゆのゆぎもみだがっだよおおおおおお!! ぞれにいづがおがあざんになっでおがあざんとれいむどこどもだぢでゆっぐりしたがっだよおおおおおお!! それなのにどおじでれ゛いむ゛がごんなめ゛に゛あう゛どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!? なにもわるいごどじでないのでぃいいいいいい!!おがじいよおおおおおおおおおおおお!! ゆめならざめでええええええええええ!!どうじでざめないのおおおおおおおおおおおお!?!? がみざま!もうゆるじで!ゆっぐりじでないでれいむをだずげでよおおおおおおおお!!! おがーざん!おねーぢゃん!まりざ!だずげでええええええええええええええええええええ!! どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおおお!?!?もうやだおうぢがえるううううううううううう!! ゆっぐりじだいいいいいいいいいいいいい!ゆっぐりざぜでええええええええええ!!! ごんなどごろでじにだぐないのにいいいいいぃぃ…ぃ……あ、あんごが……あ………ぁ…………」 胸の内の全てを吐露するようなうざくてクソ長い断末魔の後子れいむの声は聞こえなくなっていった。 やがで皮も餡子も全て水に溶け、残されたリボンだけが子れいむの生きた証であるかのように水面に ぷかぷか浮かんでいた。 「ゆっ……うっうっ……」 その一部始終を見届けていたゆっくりチルノは耐えられない悲しみに涙を流し始める。 涙なのか氷が溶けてるだけなのかハタから見ると良く分からないが本人は泣いているつもりである。 「うっうっ……うあああああああああああああああああああああああ!!!」 耐えきれずついに大声をあげてゆっくりチルノは泣き始める。 どうして、どうして。そう聞きたいのはゆっくりチルノの方だった。 自分は子れいむを助けるために湖に落としたのに。 何で子れいむは死んでしまったのだろう。 母れいむの言うとおり「溶か」そうとしただけなのに。 わからない。わからない。 ただ悲しかった。さっきまで一緒に遊んでいた子れいむが死んでしまった事が、ただ悲しかった。 「うえええええええええええええええええええええええええんんん!!!!!」 あたりにゆっくりチルノの悲壮な鳴き声が響き渡った。 そしてひとしきり泣いた後 ゆっくりチルノは泣いていた理由を忘れた。 精神の防衛本能なのかとにかくなぜ自分が泣いていたのかすっぱり忘れてしまった。 さすが⑨!俺達に出来ない事を(ry そしてその後に残ったのは思う存分泣いてすっきりしたという感覚のみ。 「すっきりー!」 思わず声に出して叫ぶゆっくりチルノ。 そういえばよく覚えていないが確か自分は「すっきりー!」という声を聞きたがっていた気がする。 素晴らしい。目的は達成されたのだ。 何となくうれしい気分になるゆっくりチルノ。 「あたいってばゆっくりね!」 と思わず叫ぶ。そして湖に背を向け、戻ろうとしたその時 「やっと見つけたよ!」 という声が響いた。驚いてそちらを見ると先ほどのゆっくりれいむ一家だった。 いきなり子れいむをくわえて走り去ったゆっくりチルノをずっと探しまわっていたのだろう。 母はともかく子供たちはやや疲れた表情をしている。 「れいむの赤ちゃんはどこ!?早くれいむに返してね!」 母れいむがゆっくりチルノの側に娘がいないのを見て急いで詰め寄る。 しかし当のゆっくりチルノは困惑の表情を浮かべるばかり。 何故ならこの一家のことも既にゆっ⑨りブレインからは消え去っていたからだ。 「おねーさんだれ?なにいってるのかわからないよ?」 正直に自分の気持ちを言ったゆっくりチルノだったがその言葉を聞いた母れいむは驚愕の表情を浮かべたあと、 体(顔?)中を怒りで真っ赤にしてゆっくりチルノに詰め寄った。 「な゛っ……ふざけるのもいい加減にしてね!今すぐ赤ちゃんを返してね!じゃないと本当に許さないよ!」 そう言ってゆっくりチルノに軽く体当たりをする。 「ゆっ!?なに!?」 突然ことに後ろに転げるゆっくりチルノ。それを視線で追った母れいむはその先に信じられないものを見た。 湖に浮かぶ子れいむのリボンである。 「あ、あ、あ、あ……」 信じられない、といった表情で母れいむが体を震わせる。そして次の瞬間感情が爆発した。 「れいむの赤ちゃんに何したのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」 ようやく体勢を立て直したゆっくりチルノにゆっくりとは思えぬ勢いで体当たりする母れいむ。 しかも今度は手加減抜きの全力である。 「れいむの赤ちゃんをどうしたの!?今すぐ答えてね!!赤ちゃんはどこ!?」 涙を流しながら激怒の表情でゆっくりチルノを問い詰める。 それを見て他の子れいむ達も状況を察したのか、ゆっくりチルノに攻撃を始めた。 「れーみゅをかえせええええええええええ!!」」 「よくもおねーちゃんを殺したなああああああああああ!!」 「ゆっくりしねえええええええええええええ!!!」 一家の総攻撃が始まる。 氷でできたゆっくりチルノは比較的硬いのでダメージは少ないが、それでも袋叩きはたまったものではない。 まるで抵抗できずに 「あたいは何も知らないよ!本当だよ!信じてよ!」 ただ必死に弁解をするだけだ。 「れいむの赤ちゃんを返せえええええええ!一緒にゆっくりしてた、これからもゆっくりするはずだった 赤ちゃんを返せええええええええ!!」 「「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」」 ひたすら体当たりを続けるゆっくり一家。並のゆっくりならとっくに餡ペーストになっているだろう。 「れいむってばゆっくりしてないよ!今すぐ辞めてよ!」 ゆっくりチルノは責められる心当たりがないものの必死にやめるよう懇願する。 やがてただ攻撃してもあまり効果が無い事に気づいたゆっくり一家は新たな行動に出た。 「「「ゆっくり落ちてね!」」」 ゆっくりチルノを湖に突き落したのである。 「ゆっ!?やべで!だずげてよ!」 先ほどの子れいむの凄絶な死にざまを覚えているわけではないが、それでも水はとても危険なものだと 頭に刻まれている(本当は何ともないのだが)ゆっくりチルノは必死にもがく。 しかし子れいむの時と同じようにもがけばもがくほど体は岸から離れていってしまう。 「あたいってば水だめなのおおおお!いやああああああああ!!!助けてえええええ」 必死に助けを請うゆっくりチルノ。 それに対してゆっくり一家は罵声を浴びせる。 「そうやってたすけをもとめてたれーみゅを殺したんだね!」 「おねーちゃんと同じくるしみを味わってしね!」 「おねーちゃんの仇、ゆっくりしね!」 「死ぬまでここで見ててあげるよ!感謝してね!だから苦しみながらゆっくり死んでね!」 「⑨~~~~~~!?!?!?」 ついにゆっくりチルノはパニックに陥る。 本当はゆっくりチルノは羽を使って飛ぶことができるため、簡単に水から脱出する事が出来るのだが、 パニックに陥った彼女はそれに気づくことができなかった。 例え冷静であっても自分が飛べる事を思い出せたかあやしいが。 「「ゆっくりしね!ゆっくりしね!ゆっくりしね!!」」 もはや一家は完全にゆっくりしねコールだ。 どうやらゆっくりチルノが溺れ死ぬまでそこで鑑賞し続けるつもりらしい。 だが溺れることもなく、また脱出する方法も思いつけないゆっくりチルノはいつまで待っても死ぬことはない。 このままではいつまでもコールを続けることになっただろう。 そしてその事に気付けなかったのが、ゆっくり一家の命取りとなった。 ゆっくりチルノを湖に落としたらさっさと立ち去っていればよかったのに、大騒ぎを続けたせいで、上空を 飛んでいた天敵に自分たちの存在を気づかせてしまったのだ。 「うー?」 気分よくお空を飛んでいたれみりゃは下の湖面が騒がしい事に気づいた。 自分のご機嫌なお散歩を邪魔するなんて許せない。食べちゃうぞ。 そう思って下降しながら湖面に近づいていくれみりゃ。 そこによく見るゆっくりれいむの一家とあまり見かけない青いゆっくりを見つける。 何やら騒いでいるようだがれみりゃにとってはどうでもいい。 それよりお腹がへってきた。やっぱりみんな食べちゃおう。 そう思って一気に狩りの態勢に移るれみりゃ。 ゆっくり一家が気付いた時には、すでに手遅れだった。 「れみりゃだぁぁぁぁーーーー!!」 一匹の子れいむの叫びで一家が慌てて空を見上げた時、もうすぐそばまでれみりゃが近づいていた。 逃げる間もなく、二匹の子れいむがれみりゃの両手に捕われる。 「い、いやあああああああああああああ!!はなしてえええええええええええ!!」 「れーむ食べられたくないよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 悲鳴を上げる子れいむ達。 残った一匹の子れいむは訳もわからず一目散に逃げ出して行った。 それに対して一瞬ためらいを見せたものの果敢にれみりゃに立ち向かう母れいむ。 もう一匹たりとも自分の赤ちゃんを死なせたりするものか。 「れーむの赤ちゃんをはなせええええええええええええええええ!!!」 その瞳には強い決意が宿っていた。 だがれみりゃにはそんな母れいむの気持ちは分からない。 両手の小さいれいむを見て、自分に向かってくる大きいれいむを見て、それから考える。 ―両手が塞がっていては大きいれいむが食べられない― 大きいれいむを捕まえて食べるためには両手を空ける必要がある。 ではどうするか。 そこでれみりゃが取った行動は小さいれいむをさっさと食べて両手を空けるという合理的な方法 ――ではなかった 「うー!小さいのはいらないからぽいするの!ぽい!」 そう言って両手の子れいむを湖に投げ込んだのだ。 「み、みずいやああああああああああああああ!!れーむ死んじゃうよおおおおおおおおおおお!!」 「おねーちゃんみたいになりたくないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 水に放り込まれた子れいむ達が絶叫を上げる。 それを見て母れいむは慌てて方向転換して子れいむ達に向かって突進する。 「待っててね!今すぐ助けるからね!」 そして湖に飛び込もうとジャンプした瞬間れみりゃの手に捕われた。 「ゆ!?ゆっくりしないで離してね!赤ちゃんが死んじゃうよ!」 慌ててれみりゃの手の中でもがく母れいむ。 だがその訴えはれみりゃの耳を右から左に抜けていった。 れみりゃが考えるのは別のこと。 ―大きいれいむも片手で持てる― つまりそれはもう片方の手にもう一匹持つことができるということだ。 どうせなら両手に持たないともったいない。 そう考えたれみりゃはのこったゆっくりの物色を始める。 「うー♪一番おいしぞうなのをだべるどぉー♪」 結果、れみりゃが選んだのは残ったゆっくりの中では一番大きく珍しい、ゆっくりチルノだった ゆっくりチルノは既に自分が何で水の中にいるか忘れていた。 もがくのも疲れたので顔を水につけて水の中を見ながらぷかぷか浮いている。 「おさかなさんがいっぱい!あたいってばゆっくりね!」 もごもごと泡を出しつつ誰にも聞こえないつぶやきをもらす。 「!?」 と、急にその体が持ち上げられた。れみりゃである。 「う~♪あっかいぷでぃんとあっおいぷでぃん~♪」 楽しそうなその歌声の間違いに突っ込むものはこの場にはいなかった。 ただ両手にゆっくりを抱えて楽しそうに飛び上っていく。 「はなじでえええええええええええええ!!!あがぢゃんが!れーむのあがぢゃんが死んじゃうううううううう!!」 「あたいってばお空を飛んでるみたいね!」 対照的な声音を上げつつ、れみりゃに抱えられた二匹は空に上がっていった。 「おがあざああああああああああんん!!いがないでえええええええええええええええ!!」 「どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」 絶望の声を上げる二匹の子れいむを残して。 飛び上がったれみりゃはさて、どっちから食べようかと二匹のゆっくりを眺めた。 かたや 「れーむの赤ちゃんが……なんで……どうじでごんなごどにいいぃぃ……」 悲しみに暮れて嗚咽を漏らすゆっくりれいむ。かたや 「たかい!たかい!あたいってば最高ね!」 自分の危機的状況を理解していないのか、楽しそうにしているゆっくりチルノ。 ちょっと悩んだ後、れみりゃはとりあえず大きい方から食べることにした。 「う~♪おっきいぷでぃんをだべちゃうど~♪」 「ごべんねえええええええ……守れながっだおがあざんをゆるじんぶぎゅっ!?」 自分の世界に入り込んでいた母れいむにいきなり走る激痛。 れみりゃが後頭部を齧り取っていた。 「いだいいだいやべでえええええええええ!!れーむまだあがぢゃんづぐるんだがらああああああああああ!! たべぢゃらめえええええええええええええええええ!!!」 「うっ♪うっ♪うぁうぁ~♪」 絶叫を上げる母れいむに楽しそうなれみりゃ。 ―こっちのぷでぃんはなかなかの甘さだ。もう片方のぷでぃんはどうだろう― そう思って今度はゆっくりチルノを食べることにするれみりゃ。 どうやらこのれみりゃは本物のプリンを食べた事が無いらしく、 食べ物の総称としてぷでぃんと言っているらしかった。 「う~♪あ~ん♪」 大口を開けてゆっくりチルノに噛み付く。 がぶっ その瞬間二つ分の悲鳴が上がった。 「い、いだいいいいいい!あだいってば食べられないいいいいぃぃぃぃ!」 「う゛あ゛ぁぁぁぁぁ!ざぐや゛ああああああああああぁぁぁぁ!!」 何度も述べているようにゆっくりチルノは氷である。 当然固い。そして冷たい。 そんなものに思いっきり噛み付けば……痛いに決まっている。 「ざぐや゛あああああああああああ!!ざぐや゛どごおおおおおおおおお!?!?」 噛み付いた歯から頭に響く冷たさと痛みにれみりゃは悲鳴を上げて見知らぬ人物の名を呼ぶ。 そして勢いのまま抱えていた二匹を放り出し、何処かに飛んで行ってしまった。 「い、いやああああああ!!!!いがないでええええええええええええ!!」 「あたいってばおぢぢゃうのおおおおおおおおお!!」 放り出された二匹はたまったものではない。 さっきまで離してと言っていたのに今度はそのれみりゃに助けを乞う。 が、その願いが聞き入れられることはなかった。 「もっどゆっぐりじだがっだよおおおおおおおおおおお!!!」 「アイシクルウォールイーーーーーズィィィィィィィ!!」 重力に任せて二匹はばらばらに落ちていった。 さて、ここで場面は変わってさきほどの襲撃から逃げ出した子れいむである。 パニックになって逃げ出してしまって家族と離れ離れになったが、今は何とか落ち着きを取り戻していた。 そしてその落ち着きを取り戻した餡子脳は先ほどの襲撃の一つの結論を導き出していた。 ―もう自分の家族はいない― れみりゃの恐ろしさは子れいむもよく知っている。 あの状況で他の家族が助かったとは思えない。 これからは、自分はひとりで生きていかねばならないのだ。 「ううっ、おかーしゃん……おねーちゃん………」 ついさっきまでみんなでゆっくりしていたのに、いきなり自分一人になってしまった。 その悲しみはいかほどのものであろうか。 「みんなともっとゆっくりしたかったよ……でも……これからはみんなの分までれーむがゆっくりするね……」 新たな決意を胸(顔?)に子れいむが顔をあげた時、上から懐かしい声が聞こえてきた。 「ゆううううううううううううううううううううっっっ!!!!」 「おかーしゃん!?」 その声に驚いて上を見上げる子れいむ。そこには空からものすごいスピードで 自分に向かってくる母の姿があった。 「ゆ!?おかーしゃん!てんごくから会いに来てくれたんだね!とってもうれしいよ!またいっしょに ゆっくりしようね!!」 喜びでぴょんぴょん飛び跳ねつつ母へと言葉を投げかける子れいむ。 そんな娘の姿に母れいむも気付き、思わず喜びのあまり落下と言う絶望的状況を忘れる。 「ゆ!れいむの赤ちゃん!生きててくれたんだね!とっても嬉しいよ! もうほかの赤ちゃんはいないけど一緒にゆっくりしようね!」 親子の感動の再会である。 二人の距離はどんどん近付いていく。 そして…… 「おかーしゃあああああああああんぶべっ!?!?」 「れえええええええええええむぎゃあっ!!!!!」 天文学的な確率で二人の距離が0になった瞬間、お互いの名を叫びつつ仲良く餡ペーストになった。 一方同じように投げ出されたゆっくりチルノ。 重力に引かれどんどん地面が近づいてくる。 「あたいってばゆっくりしてないいいぃぃぃぃぃ!!!」 ゆっ⑨りブレインでもこのままでは死んでしまうことは分かる。 ゆっくりチルノの頭にこれまでの楽しかった思い出が走馬灯となって流れ始めた。 その走馬灯は……今度は0.5秒で終わった。 楽しかった思い出も忘れてしまうゆっ⑨りブレインの悲劇である。 そしてそんな事とは関係なく死という現実が迫ってくる。 「あたいってば幻想郷最速ねぇぇぇぇぇぇっ!」 どこぞの天狗が聞いたら怒りそうな事を叫びつつ、ゆっくりチルノは恐怖で目を閉じる。 加速された体は地面に向かって一気に落下し激突――-―― しなかった。 「ゆ?」 疑問の声を上げてゆっくりチルノが恐る恐る目をあけると、何と自分の体が浮かんでいるのではないか。 そう、この危機的状況でゆっくりチルノの本能が彼女の羽を無意識に羽ばたかせるという行動をさせたのだ。 何という奇跡!生命の神秘! 次第にゆっくりチルノも自分が飛んでいることに気づいたのか、喜びの声を上げ始める。 「すごい!あたいってば飛べたのね!」 しばらくパタパタと低空飛行を楽しんだ後、着地するゆっくりチルノ。 ふぅ、と一息ついて空を眺める。 あれほど太陽が輝いていた空は、いつの間にか夕焼け色に染まっていた。 よく覚えていないけど今日はもう疲れた。 さっさとおうちに帰って休もう。 そう考えたゆっくりチルノはゆっくりとおうちに戻っていった。 おうちの場所を忘れて3時間ほどさまよった後、 ようやくゆっくりチルノは自分のおうちを見つけることができた。 途中で自分が何をしているのかも忘れたりしたため余計に時間がかかった。 「ふぅ、あたいってばゆっくりね!」 そう言って巣穴に潜り込むゆっくりチルノ。 しかしそこには………先客がいた。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪……ゆっ?だれ!?ここはまりさのおうちだよ!」 ゆっくりチルノが蓄えていた木の実を頬張っていた黒帽子のゆっくりが振り向き、自分のおうち宣言をする。 一瞬呆気に取られるゆっくりチルノだが、しかしさすがのゆっ⑨りブレインでもこれには黙っていない。 ここは頑張って自分が掘った巣穴なのだ。他人に渡すわけにはいかない。 「何言ってるの!ここってばあたいがつくったおうちよ!その木の実もあたいが集めたものだよ!」 「ふざけないでね!この木の実は最初からここにあったんだよ!ここはまりさが先に 見つけたからまりさのおうちだよ!」 傍若無人な事を言うゆっくりまりさ。 普通のゆっくりならここでさらに強く言い返すところだが、ゆっくりチルノの頭は既に混乱し始めていた。 ―そういえば勢いで言ってみたけど、自分がその木の実を集めた記憶はない。 このあたりは草が茂っていて場所が分かりにくいし、もしかしたら本当に巣穴の場所を間違えたのかも… そうだとするとここはこのまりさのいうとおり自分のおうちじゃないんじゃないんだろうか― うーん、と悩むゆっくりチルノにゆっくりまりさの言葉がとどめを刺した。 「ここはまりさのおうちだよ!でも今すぐ出ていくなら木の実を少し分けてあげてもいいよ!」 既に傾きかけていたゆっくりチルノにこの言葉は決定的だった。 ―自分がおうちを間違えてとても失礼なことをしたのに、食べ物を分けてくれるなんてなんて親切なんだろう― 「ごめんね!間違えちゃった!あたいってばゆっくりね!」 照れるように笑ってゆっくりチルノが言う。それを聞いてゆっくりまりさは 「分かったのならさっさと出て行ってね!もう来ないでね!」 そういっていくつかの固い、食べかけの木の実をゆっくりチルノの側に投げた。 「ごめんね!ありがとね!」 ゆっくりチルノは礼を述べると木の実を口に詰め込み、巣穴を抜け出していった。 後にはニヤリと笑うゆっくり魔理沙が残された。 「むーしゃむーしゃ、⑱ー!」 巣穴の側で木の実を食べてよく分からない叫びを発するゆっくりチルノ。 18は9の2倍なので2倍幸せと言う意味である。 こんなギャグを思いつくなんてあたいってば天才ね! と自己満足に浸りつつゆっくりチルノは木の実を食べ終えた。 色々あったとは言え何度も水没したことで既に必要な食事量はほとんど満たしていたので、 少ない木の実でもゆっくりチルノは満腹だった。 しかしそろそろ本当に急いでおうちを探さなくてはならない。 もうすでにまんまるのお月さんが浮かんでいる。 「あたいってばゆっくりしてらんないわ!」 慌てておうち探しを再開する。 が、いくら探しても自分のおうちはみつからなかった。 さきほどの巣穴が本当のおうちなのだから、当然である。 さらに一時間ほど涙目で巣を探し続けたがついに見つからず、 ついにゆっくりチルノは木陰にばったりと倒れ伏した。 「あたいってばゆっくりしすぎね……」 もう仕方が無い。きっと巣穴の場所を忘れてしまったのだろう。 今から巣を掘ったり探したりなんてできないし、今夜はこの木陰で眠ろう。 きっと明日になったら巣の場所も思い出すに違いない。 そう考えたゆっくりチルノは木の側で隠れるように横(縦?)になった。 しかし瞼を閉じ、いざ寝ようとすると頬にあたりがなにかかさかさするものがいる。 何かと思って目を凝らしてみると、それは蟻の行列だった。 「あたいってばラッキーね!」 目を輝かせながら目の前の蟻をパクンと食べるゆっくりチルノ。 何匹か食べたところで今度は蟻たちに息を吹きかけ始めた。 「ふーっふーっ」 本来、ゆっくりチルノが他の生物を凍結させるほどの冷気を出すにはくしゃみをするしかないが、 蟻ぐらいの小さい生き物相手であればただ息を吹きかけるだけでも凍結させることが可能なのである。 こうして蟻を冷凍保存しておき、明日の朝起きたら食べよう、と言うのがゆっくりチルノの考えだった。 20個ほど蟻の氷塊を作ったところでゆっくりチルノは眠ることにした。 そして、その氷塊を眺めながら、これなら明日の朝ご飯はごちそうね!と幸せな気分で眠りに就いた。 しかしそこはゆっくりチルノ、ちゃんと作戦に穴が開いている。 いくら凍らせたとはいえこの夏の熱帯夜、小さな氷塊などすぐ溶けてしまう。 ゆっくりチルノが熟睡した後、溶けた氷塊から蟻たちが抜け出していくのに、気づくものはいなかった。 そして翌朝。 水色の髪に薄い色の羽、氷精を模したゆっくりであるゆっくりチルノは今朝は 木陰で起床の一声を挙げた。 「おはよう!あたいってばゆっくりね!」 そして昨日作った朝食用の氷塊など当然のように忘れ、また朝食探しに飛び跳ねていく。 果たして今日はどのような一日になるのだろうか。 夏の青い空は、昨日と変わらぬ晴天の色を湖畔に住む生き物たちに伝えていた。 あとがき 今まで何度もSSを書きかけて途中で挫折したけど、初めて一つ書き上げる事が出来ました。 こういうの書く時は勢いって大事ですね。 しかしおかげで貴重な時間が6時間ぐらい潰れてしまった。 ゆっくり虐待してた結果がこれだよ! あれ?そういえばあんまり虐待はしてないような…… このSSに感想を付ける
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「ゆぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――――――!!!!」 突如、部屋中に響き渡る、巨大赤れいむの絶叫。 お家の中でまりさの無事を願っていた一家も、一体何事かと入口からこっそり顔を出し始めた。 そんな一家が見た光景。 そこにはなんと、足から脳天に深々と割り箸を刺してもがいている巨大赤れいむと、それを唖然とした表情で見ていた親まりさの姿があった。 ブランコは、割り箸を紐を組み合わせて作られている。 だんだん体当たりをすることすら億劫になってきた巨大赤れいむは、その重量をもって圧し掛かり、親まりさごとブランコを破壊しようと考えたのである。 しかし、これがいけなかった。 割り箸の強度を軽んじていたことと、丁度最悪の位置に圧し掛かってしまったことで、割り箸は見事に巨大赤れいむの体を貫いてしまったのである。 「ゆぎいいいいぃぃぃぃぃ―――――――!!!! いだいよおおおぉぉぉぉぉぉぉ――――――――!!!! これとっでえええぇぇぇぇ――――――――!!!!!」 割り箸を取り付けたまま、巨大赤れいむが地をのたうち回る。 生まれて以来、初めて感じる強烈な痛みに我を忘れ、巨大赤れいむは大量の汗と涙と涎をまき散らしながら、もがき苦しんでいた。 それを見ていた親れいむと姉妹たちが、家の中から飛び出してくる。 そして、姉妹はその様子に大満足といった様子で、囃し立てていた。 「ゆっくりくるしんでね!!」 「れいむたちをころそうとしたから、ばちがあたったんだよ!!」 「おお、ぶざまぶざま!!」 相当フラストレーションが溜まっていたのだろう。 巨大赤れいむの無様な姿に、皆溜飲を下げていた。 しかし、それを一喝する声が掛けられる。 それは、最も巨大赤れいむの攻撃にされされていた親まりさであった。 「おちびちゃん!! ゆっくりだまっててね!!」 「!!!」 この父は、いきなり何を言ってくるんだと言わんばかりの表情の姉妹。 それも仕方があるまい。何しろ自分たちは命を狙われたのだ。 そんな仇敵が目の前で苦しんでいる。それを笑って何が悪いというのだ。 しかし、親まりさは厳しい表情を崩さない。 「おちびちゃんたちのきもちは、ゆっくりりかいできるよ!! でもだれかがけがをしたすがたをみてわらうのは、とってもゆっくりできないことなんだよ!!」 「ゆうぅ……で、でも……」 「このおちびちゃんは、もうゆっくりばつをうけたよ!! あとはおねえさんがかえってきたら、ゆっくりしかってもらえばいいよ!! だから、そんなことをいっちゃいけないよ!!」 「……ゆっくりりかいしたよ!!」 未だ完全には納得できないものの、姉妹たちは一応の理解を見せる。 何しろ一番殺されかかった親まりさが許すというのだ。ただ逃げていただけの自分たちに、それを覆す権利はなかった。 親まりさは、何とか分かってくれた子供たちに安堵し、巨大赤れいむの側にやってくる。 そして未だ絶叫を上げ続ける巨大赤れいむに、その声に負けない声量で呼びかけた。 「おちびちゃん!! ゆっくりはんせいした?」 「ゆぎいいいぃぃぃい―――――――!!!! これとっでええぇぇぇぇぇ――――――――!!! 「ゆぅ……」 巨大赤れいむは返事を返さなかったが、痛さで自分の声も頭に入っていないのだろうと考える。 その後、親れいむの元に行き、巨大赤れいむに刺さった割り箸を取ってあげようと提案した。 その提案に親れいむは、若干渋い顔をする。 自分たちを殺そうとした巨大赤れいむを助けるのが嫌というのではなく、助けた後、再び殺されるのではないかという懸念からであった。 しかし、それはないよと、まりさは断言した。 例え、割り箸を抜き、手当をしたとしても、完全に動けるようになるまで、相当な時間がかかるはずである。 それまでには、男も愛で子も帰宅しているはずである。 その旨を伝え、納得した親れいむは、親まりさと共に巨大赤れいむの尻の所に来ると、突き刺さった割り箸を噛みしめ、体から抜こうとした。 「ゆぎいいいぃぃぃぃ―――――――!!!! いだいよおおおおぉぉぉぉぉ――――――――――!!!!」 抜くときのあまりの痛さに、これまで以上に絶叫を上げる巨大赤れいむ。 しかし、割り箸は相当深く食い込み、マイクロゆっくりの両親の力では抜くことが出来ない。 親まりさは、子ゆっくりにも割り箸を抜くのを手伝うよう呼びかける。 初めは嫌そうな様子を見せるも子ゆっくりだったが、徐々に巨大赤れいむの余りに惨めな姿が気の毒になってきて、両親の背後に付き、割り箸に噛みつき始める。 ちなみに姉たちの様子を見て、赤ゆっくりたちも手伝うと申し入れたが、親まりさがそれを認めなかった。 赤ゆっくりの体格上、割り箸を噛むことは出来ないし、大豆が三匹加わったところで高が知れるというものである。 親まりさの号令に合わせ、全員で一気に割り箸を抜こうと試みた。 しかし、結果は変わらず、巨大赤れいむが絶叫を轟かせただけに過ぎなかった。 「ゆうぅ……ゆっくりこまったよ!!」 マイクロ一家は、すっかり弱音を吐いてしまう。 自分たちの力では、どうにもならないことが分かってしまったのだ。 しかし、このままにしておく訳にはいかなかった。 何しろ、巨大赤れいむと割り箸の隙間からは、徐々に餡子が漏れ出しているのである。 仕方がないと、親まりさは一つの解決策を打ち出した。 割り箸はこのままにして、餡子の流出だけを抑え込むのだ。 水槽内には、緊急用のオレンジジュースが備え付けられている。 一家は全員でそれを口に含み、巨大赤れいむの元までやってくると、餡子の漏れ出している箇所に、水鉄砲のように噴射した。 これを何度も何度も繰り返し行うことで、徐々に巨大赤れいむの皮は復元し、餡子の流出は抑え込まれていく。 一家は、男と愛で子が帰宅するまで、延々とこの作業を繰り返し続けた。 「ただいま~、今帰ったぞ~~」 「れいむ、ただいま。いい子にしてたかしら? お菓子をたくさん買ってきたからね」 二人は帰ってくるや、食材の入った袋を置くと、一家の水槽のある部屋に入ってきた。 そして、その様子に絶句する。 「な、なにやってんだああああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――!!!!」 「れ、れいむううぅぅぅぅ――――――――――!!!!」 絶句の後、絶叫を上げる二人。 ようやく二人が帰ってきたことに安堵した一家は、オレンジジュースの噴射をやめて、男に懇願した。 「おそいよ、おにいさん!! ゆっくりしすぎだよ!!」 「ゆっくりはやく、おちびちゃんをたすけてあげてね!!」 一家は男に急かす。 しかし、事情が読み込めない男は、一家に説明を求めるが、 「お前たち!! いったい何でこんなことが……」 「それより、愛で男くん!! れいむの治療を!!」 「えっ? あ、ああ、そうか!! そうだな!!」 顔面蒼白な愛で子に指摘され、そんな場合ではないと、水槽の中から巨大赤れいむを取り出し、急いで台所に向かう。 割り箸を抜き出し、冷蔵庫から餡子と小麦粉とオレンジジュースを取り出すと、まず餡子を割り箸で出来た穴に注ぎ込んでいく。 しっかりと中まで入ったことを確認し、更にその上から大量の小麦粉とオレンジジュースをかけて、傷を埋めていった。 「たぶんこれでどうにかなると思うんだが……」 「本当? 本当なの、愛で男くん!!」 「ああ、俺がガキの頃に買っていたミニゆっくりも、一度鉛筆で体を貫いたことがあったんだが、この治療で治ったからな。 それでも、近いうちに一度ゆっくりショップか、ゆっくり病院で診てもらったほうがいいと思う」 「はあぁぁ……よかった……よかった」 愛で子は巨大赤れいむが治るというその言葉に、腰が抜けたのか、そのまま座り込んでしまった。 そんな愛で子の肩を抱き、ソファーの元に連れて行くと、男は事情聴取をするべく、一家の元にやってきた。 その表情には、怒りが見て取れた。 「お前たち、これはいったいどういうことなんだ? しっかり説明してもらおうか?」 嘘は絶対に許さないという態度で詰問する。 一家は、巨大赤れいむの世話で疲れ切っていたが、事情を言わない訳にはいかず、親まりさがこれまでのあらましを説明した。 初めは怒りに身を任せていた男だったが、事情を聴いていくうちに、すっかりその怒りも霧散してしまった。 何しろ一家の話が本当なら、もしかしたら怪我を、いや怪我どころか死んでいたのはマイクロ一家のほうかもしれなかったのだから。 しかし、突然の巨大赤れいむの乱心というのに、信じられない思いがあった。 一家の話から推測するなら、巨大赤れいむが襲ってきたのは、愛で子に告げ口されることを恐れての犯行だろう。 それは分かる。しかし、同時にその程度のことで? という気持ちが男にはあった。 告げ口されれば、当然愛で子は巨大赤れいむを叱りつけるだろう。もしかしたらお仕置きに体罰くらいは受けるかもしれない。 しかし、所詮その程度である。 愛で子の性格からいって、お仕置きを受け十分反省するなら、その後はいつものように精一杯目一杯可愛がるに決まっている。 一家を殺そうとする動機としては、とても薄っぺらく思えてしまう。 あるいは、巨大赤れいむの積りに積もった負の感情が一気に噴き出してきたのだろうか? その線も考えたが、それもいまいち納得できない。 確かに巨大赤れいむを蔑ろにしている部分が多少あったことは、男も分かっている。 いや、男も一家も蔑ろにしていたつもりはないが、巨大赤れいむがそう思っているのではと感じたことは、少なからずあったように思える。 しかし、あの程度の蔑ろは、一家に対し何度も行っている。それこそ生まれたばかりの赤ゆっくりに対してもだ。 外出で構ってやれないことも多いし、テレビや読書の最中に、面倒になって無視したことも何度あっただろうか。 愛で子と違い、お仕置きには叱責だけでなく度々体罰も加えた。例をあげていけばキリがないくらいである。 それでも、一家は素直にスクスクと成長していった。多少親バカなところは自覚しているが、客観的に見てもいい子たちであるという自負がある。 その観点から見ても、巨大赤れいむの負の感情など、「その程度のこと」としか男の目には映らなかったのである。 しかし、男にはただ一つ知らないことがあった。巨大赤れいむの愛で子に対する、依存にも似た感情である。 生まれてすぐに両親と離され、姉妹もなくゆっくりショップのゲージの中で過ごした数日間。 巨大赤れいむは途轍もない孤独感に支配された。 そして、それを癒してくれたのが、巨大赤れいむを買った愛で子である。 自分には愛で子しかいない。愛で子は親であり、姉妹であり、友達であり、そして家族であった。 その愛で子を一家に奪われるかもしれない。 一家に告げ口をされて、愛で子に嫌われるかもしれない。 それが、巨大赤れいむが何よりも恐れることであった。 実は男と愛で子のペットに対する接し方にそれほど違いはない。 寧ろ、愛で子のほうが男以上に巨大赤れいむに構っていたくらいである。 一家と巨大赤れいむの唯一の違いは、飼い主の他に心の拠り所となる者がいるかいないかの差である。 一家は男に叱られても、慰めてくれる家族がいる。 構ってもらえなくても、遊ぶ相手が大勢いる。 最悪、男に捨てられたとしても、一家は一匹ではないのだ。 しかし、巨大赤れいむには、愛で子しかいない。 叱られて慰めてくれる人はいないし、遊んでくれる相手もいない。 愛で子に見捨てられれば、完全に孤立してしまうことになってしまうのだ。 この差は、飼い主からすれば大した問題ではないかもしれないが、ゆっくりからすれば、己の一生を左右する切実な問題なのである。 そんな一家と巨大赤れいむの立場を同列に見なしている男に、この疑問が解けることはなかったのである。 「愛で子……」 「あ……まりさちゃんたち、なんだって?」 男は愛で子の隣に腰を下ろし、一家に聞いたことをそのまま愛で子に聞かせてやった。 それを聞いて驚き、そして大いにショックを受けた。 「この子がまさかそんなことを……」 「いや、まだ完全にまりさたちが言ったことが正しいかは証明できないが……」 男はそう慰めるが、正直、まりさたちが嘘を言っているとは思っていなかった。 ゆっくりは根が単純で、嘘をつこうものなら、すぐに顔に出てしまう。 こんな大嘘を吐こうものなら尚更だ。しかし、一家には一切それがなかった。 それと、自分の可愛い子たちを信用しているということもあるし、あの水槽の荒れ方や一家が治療を施していた状況からも、一家の説明と合致する。 なぜ巨大赤れいむが、突如一家を殺そうとしたのか。その理由は分からないが、それ以外はまず間違いないだろうと確信していた。 と、そんなことを考えていると、傷が回復したのか、巨大赤れいむが、ゆっくりと目を開いた。 「……ゆっ? ……おねえしゃん?」 「れいむ!!」 寝ぼけ眼で、愛で子を捉える巨大赤れいむ。 最初は何が何だか分かっていなかった巨大赤れいむだが、次第に餡子脳がハッキリしてくるや、ようやく最愛のあ姉さんが帰ってきたとばかりに擦り寄っていった。 「おねえしゃん!! ゆっきゅりおかえりなちゃい!!」 巨大赤れいむの威勢のいい挨拶。しかし、そんなれいむを、愛で子は悲しそうな視線で見つめている。 「れいむ。良かったわ、元気になって……」 「りぇいむ、しゅっかりげんきになっちゃよ!! ゆっきゅりおなかがちゅいてきちゃよ!!」 「……」 数十分前のことを覚えていないのか、巨大赤れいむに悪びれた様子は一切なかった。 そんなれいむを見て、信じたい気持ちでいっぱいの愛で子だが、事情はハッキリさせなくてはならないと、重い口を開き始めた。 「れいむ。あなたに聞きたいことがあるの」 「ゆっ? にゃんにゃにょ、ききちゃいこちょって?」 愛で子は、男に聞かされた話を、巨大赤れいむに伝えていく。 初めは余裕の表情で聞いていた巨大赤れいむだったが、次第にその余裕は消え去り、顔は青ざめ、遂には傷が癒えたばかりだというのに、大量の砂糖水が体から流れ出てくる。 震えた体に、噛み合わない歯、視点の定まらない瞳。 この様子を見るだけで、一家が嘘を付いていないことは明白だが、真実を自分の口から言わせなればならないと、愛で子は巨大赤れいむに、ゆっくり静かに問いただす。 「れいむ。今のお話は本当なの?」 「ゆっ……ゆっ………ゆ……」 「れいむ!!」 「……お、おにぇえちゃんたちが、ゆっきゅりうしょをちゅいたんだよ!! れいみゅはしょんにゃこちょ、ちてないよ!!」 この期に及んでも、巨大赤れいむは嘘を並びたてていく。 すでにどちらが嘘を言っているか分かっている男と愛で子は、その巨大赤れいむの答えに大いに失望した。 「……本当に嘘をついていないのね?」 「ゆゆっ!! ゆっきゅりほんちょうだよ!!」 「本当にまりさお姉ちゃんたちが嘘を付いているのね?」 「ゆっ!! しょうだよ!! おにぇえちゃんたちは、ゆっきゅりうしょちゅきなんだよ!!」 「怒らないから本当のことを言って、れいむ!!」 「れいみゅはうしょなんきゃ、ちゅいてにゃいよ!! ゆっきゅりおにぇえちゃんたちを、おちおきちてあげちぇね!!」 「そう……」 その後、愛で子はソファーを立つと、来る時に巨大赤れいむを入れてきたゲージを持ってきた。 そして、巨大赤れいむを手に取ると、ゲージの中に入れていった。 「ゆっ!! おにぇえしゃん?」 「もう帰る時間よ。ご飯は家で食べましょうね」 「ゆゆっ!! ゆっきゅりりかいちたよ!!」 巨大赤れいむは上機嫌でゲージの中に入っていった。 巨大赤れいむは嬉しかった。何しろ自分の嘘がばれなかったのだから。 ゆっくりに人間の機微は読めない。それが赤ゆっくりとなれば尚更である。 マイクロ一家に告げ口されたことで追及は避けられなかったものの、やはり愛で子は自分のことを信じてくれたのだと考えていた。 あれ以上追及が来なかったことが、何よりの証拠である。 家に帰るのは、嘘をついたと思っている一家に腹を立てたためだと考えた巨大赤れいむは、ゲージの中でほくそ笑んだ。 最悪の一家に苛められたし、痛い思いもしたが、収穫はあった。 あのゆっくり用の遊具はとても魅力的であった。 家に帰ったら、自分だけの素晴らしい遊具を買ってもらおうと、巨大赤れいむはすでに自分が犯した過ちも忘れ去っていた。 ゲージをもって玄関に行く愛で子。 それを追いかける男。 「なあ、本当に帰るのか?」 「ええ、ごめんなさい。その……うちの子が……」 「いや、特に目立った怪我はしていないし、あいつらも許してるみたいだから、俺はいいけど……でも……その…その子は?」 「この子を買うとき、お店の方から育て方のマニュアルと一緒に、条例の書かれた書類も頂いたわ……」 「条例? ……………まさか!!」 「……」 「いや、それは、でも……本気なのか?」 「……」 「い、いや……そこまですることはないだろう。ほら、俺もあいつらも気にしてないしさ!! それに結構費用だって掛けてきただろ?」 「せっかく買い物してきたのに、御夕飯作れなくてごめんなさい。また機会を見て遊びに来るわ。まりさちゃんたちにもよろしくね」 「……あっ」 愛で子は、男の質問に答えることなく、一礼をして、玄関を出て行った。 男は呆然としながら、しばしその場に佇んでいた。 「ゆゆっ!! おにいさん!! おねえさん、ゆっくりかえったの?」 「ああ……」 「おにいさん!! まりさたちは、ゆっくりおちびちゃんのことをゆるしてあげるよ!! だから、こんどおねえさんにあったら、ゆっくりいってあげてね!!」 「……もうおそいよ」 「ゆっ?」 まりさには、男の言葉の意味が分からなかった。 「おねえしゃん!! ゆっきゅりどきょにいきゅにょ!!」 翌日、再度ゲージに入れられた巨大赤れいむは、愛で子に行き先を尋ねた。 しかし、愛で子は何故か朝から口を聞いてくれなかった。 昨夜は今まで食べたこともないような豪勢な食事を与えてくれたというのに。 いぶかしむ巨大赤れいむ。自分は何か愛で子の機嫌を損ねるようなことをしただろうか? すでに巨大赤れいむの中では、昨日のことは忘れ去られていたのである。 そのことに考えを集中させていると、いつの間にか、愛で子は目的の場所に着いたらしい。 ゲージの中から巨大赤れいむを取り出すと、それを目の前の厳つい男に手渡す。 「……よろしくお願いします」 「はい、確かにお預かりいたしました」 「あ、あの……この紙に書いてあるんですけど、本当にその……」 愛で子は言いづらいことなのか、途中まで言いながらも、言葉を閉ざしてしまう。 その様子に厳つい男は疑問に思い、愛で子が差し出した紙に目をやる。 その内容を読んで、愛で子が何を言いたいのか理解した厳つい男は、柔和な笑みで愛で子に答えた。 「ええ、ご安心ください。この赤ちゃんれいむは、とても安らかひと時を送れますよ」 「そうですか……お止めして申し訳ありません」 「いえ、お気持ちはお察しいたします。それではそろそろ時間ですので」 厳つい男は愛で子に一礼し、巨大赤れいむを掴みながら、愛で子の元から離れていった。 「ゆっ? おねえしゃん?」 自分の境遇が理解できない巨大赤れいむは、男の手の中から、愛で子の姿をとらえる。 そこには、何故か涙を流し、じっと遠ざかっていく巨大赤れいむを見つめ続ける愛で子の姿があった。 「ゆっ!! ゆっきゅりとまっちぇね!! れいみゅはおねえしゃんのときょりょにかえりゅよ!!」 最愛の飼い主の悲しそうな泣き顔を見て、巨大赤れいむは今すぐ愛で子の元に返せと、厳つい男に言ってくる。 しかし、厳つい男は巨大赤れいむの言葉に返事を返さない。 巨大赤れいむは、何とか厳つい男の手の中から逃れようともがいたが、男の力は強く、れいむの力では抜け出すことが出来なかった。 やがて、男はある部屋の扉の前にやってくると、鍵を開けて、中に入っていく。 「おい、じじい!! ゆっくりまりささまをここからだすんだぜ!!」 汚い言葉を使ってくる汚れたまりさ。 「すっぎりさせでええぇぇぇぇ――――――!!!」 全身に拘束具を付けられ苦しそうなアヘ顔のありす。 「むきゅ――――!!! ぱちぇはもりのけんじゃなのよ!! ゆっくりここからだしなさい!!」 顔が半分かけたぱちゅりー。 そこには、多種多様なゆっくりが、所狭しと床を埋めていた。 そんな足の踏み場もないようなところに、うまく隙間を見つけ入っていくと、そこに巨大赤れいむをゆっくり置いた。 「ゆゆっ!! れいみゅは、おねえりゃんのときょろにかえりゅんだよ!! きょんなちょこりょに、ゆっきゅりようはないよ!!」 巨大赤れいむは、愛で子の元に連れて行けと喚くが、男は聞こえないのか、その言葉を無視し、部屋から出て行った。 そしてドアを閉めるや、鍵を掛ける。 巨大赤れいむは、なぜこんな所に連れてこられるのかが理解できず、ドアの前であらん限りの大声を張り上げる。 しかし、それに返事を返してくれる者はおらず、「後三分か……」という訳のわからない言葉が聞こえてきただけであった。 それでも巨大赤れいむは喚き続ける。 今日は愛で子にゆっくり用遊具を買ってくれるよう進言するつもりだったのだ。 こんな所で油を売っていては、日が暮れて店が閉まってしまう。 遂にはドアに体当たりをする巨大赤れいむ。 しかし、当然の如く、ドアはびくともしない。 それでも繰り返し繰り返し体当たりを続けている巨大赤れいむだったが、しばらくすると、突然「ビ―――――――!!」という不快な音が部屋に鳴り響いた。 そして、それに間をおかず、天井から白い煙のようなものが、部屋中に降り注いだ。 「ゆっ? にゃんにゃの、きょれ?」 巨大赤れいむは、突如出てきた白い煙に舌を付ける。 ゆっくりは分からないものがあると、大抵舌を出す癖がある。 朝食を取っていなかったこともあるだろう。 しかし、それが巨大赤れいむの運命を決定づけた。 舐めてみると、それは特に味も香りもなかった。 もしかしたら食事かと甘い期待を抱いていた巨大赤れいむは、すぐに失望した。 しかし、舌を仕舞うと、何故か体がピリピリするような錯覚を覚えた。 一体なんだろう? そう考えた瞬間だった。 「ゆぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――――!!!」 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ―――――――――――――!!!!」 「ゆげえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――――――――――――――!!!!!」 「がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――!!!!」 突然、部屋中にいたゆっくりから悲鳴が漏れ始める。 巨大赤れいむも例外ではなく、絶叫を響かせ、餡子を撒き散らす。 「ゆげえええぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――――!!!! にゃんにゃの、きょれえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――!!!!」 体には激痛が走り、嘔吐感が止まらない。 口からは止めどなく餡子が流れ出て、遂には、口だけでは狭いと言わんばかりに、巨大赤れいむの左目が餡子によって飛ばされた。 「ゆぎいいいぃぃぃぃ――――――!!!! りぇいみゅのおみぇみぇがああああぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!!!!」 周りのゆっくりも、巨大赤れいむの様に、餡子が目を押しやったり、ちょっとした傷口が一気に広がって大量の餡子が漏れ出したりと、大惨事だった。 「おねえしゃあああああああああん!!!! くるちいよおおおおおおぉぉぉぉぉぉ――――――――!!!! たしゅけてええええぇぇぇぇぇぇぇ――――――――!!!!」 あまりの痛さと、命の餡子が流れ出る恐怖に、巨大赤れいむは、最愛の愛で子を呼び続ける。 しかし、いつもなら巨大赤れいむが泣いているとすぐに駆けつけてくれた愛で子は、この時来てくれないばかりか、返事も返してくれない。 それでも巨大赤れいむは、愛で子の名を叫び続ける。何しろ彼女には、愛で子しかいないのだから。 「おねえしゃあああああああああん!!! おねええしゃあああああ……ん!!! お……ねえ……しゃ……ん! おね……え……しゃ……………」 巨大赤れいむは、最後まで愛で子が来てくれると信じながら、大量の餡子をまき散らし、絶命した。 「れいむ……ごめんね……ほんとにごめんなさい……」 愛で子は保健所の椅子に座り、涙を流し続けた。 ゆっくりが故意に人もしくは飼いゆっくり、ペットに危害を加えた場合、保健所に引き渡すことが都市条例で決められている。 それは、いくつかの特例を除き、ゆっくりの飼い主が必ず守らなければならない義務である。 しかし、現状でその条例が市民に完全に守られているかと言えば、必ずしもその限りではない。 誰でも自分のペットは可愛いものである。 例え人間や飼いゆっくり、ペットに怪我を負わせてしまっても、条例を無視しなあなあに終わらせたり、示談で済ませたりする人が後を絶たない。 酷い例になると、条例すら知らない飼い主もいるくらいである。 愛で子も巨大赤れいむを引き渡したくなどなかった。 自分が飼った初めてのペット。子供のころから、何度親にゆっくりを買ってと懇願したか分からない。 愛していたのだ、心の底から巨大赤れいむのことを。 男もマイクロ一家も気にしていない、許してくれると言っていた。保健所に告げ口なんてしないだろうし、黙ってさえいれば、誰にも分からない。 しかし、それでも愛で子はこの手段を選んだ。 それは愛で子が真面目だったからということだけではない。 真面目には違いないが、法とペットの命、どちらを取るかと聞かれれば、おそらく躊躇いつつもペットの命を優先するだろう。 もし、今回の事件が然程大きなものでなければ、愛で子はこれからも巨大赤れいむと一緒に暮らしていたに違いない。 巨大赤れいむが、腹立ちまぎれに自分の力を見せびらかす程度のことだったなら、甘いとは思うが愛で子もこの決断はしなかったに違いない。 自分の力が理解できず、誤って暴力をふるってしまったと言うことなら、愛で子もキツイ折檻だけで済ませてしまっていただろう。 しかし、今回は事が事であった。 巨大赤れいむには、一家に対し、明確な殺意をもって攻撃を行ったのである。 一度、そういう考えを持ってしまったゆっくりは、中々矯正することが難しい。一生矯正できない個体のほうが多いくらいなのだ。 次もこういう事態になったら、今度は躊躇いもせずに、最初から相手を殺しにかかるだろう。 巨大赤れいむが、自暴自棄の果てに返り討ちにあって死んでしまうなら構わない。いや、構わなくはないが、それは愛で子が悲しいだけで済む話である。 しかし、万が一、相手に傷をつけたら、それは簡単に済む問題ではない。 今回、マイクロ一家が傷も残さず生き残ったのは、彼女らの優秀さもあったが、それ以上に運が良かっただけの話である。 普通の個体だったなら、全滅していただろうし、生き残ったとしても、大怪我をしていてもおかしくはない状況だったのだ。 だからと言って、巨大赤れいむを部屋の中に一生閉じ込めておくことも出来ない。 マイクロ一家と違い、外に散歩にも行きたがるだろうし、部屋に友人を呼ぶことだってある。将来的には、相方が欲しいと言ってくるだろう。 それらを無視して、れいむを籠の鳥のように閉じ込めておくことは、ゆっくりすることを信条とするゆっくりにとって、とても耐えられないことに違いない。 結局、巨大赤れいむが、これからも生きていくには、ゆっくりらしさを捨て去る以外、手はないのである。 そんなことをさせるくらいならと、昨晩、睡眠も取らずに悩みに悩んだ結果が、これであった。 保健所についての項目を読んでいくと、ゆっくりの処分はゆっくり用の神経ガスを使い、まるで眠るように息を引き取ると書いてある。 先程、厳つい男に聞いた時も安心しろと言ってたくらいだし、きっと安らかに逝くことが出来るだろう。 自分はいい飼い主にはなれなかったけど、天国で精いっぱいゆっくりしてねと、何度も何度も巨大赤れいむに心の中で謝罪を繰り返し、愛で子は目元を腫らしたまま、保健所を後にした。 ゆっくり条例 第〇章 第△条 人間もしくは飼いゆっくりに危害または殺害を犯したゆっくりは、その危険性を考慮し、ゆっくり保健所に引き渡すこととする。 特例として、以下の場合に限り…… ~fin~ 新発売 マイクロゆっくりHC 通常のマイクロゆっくりより高い知能を有し、2倍から~最大32倍まで賢さアップ 当店おすすめは、マイクロゆっくりHC 賢さ8倍モデル お値段、扱いやすさ共に満足の一品です お求めはゆっくりショップ 〇〇支店まで 過去作 ゆっくりいじめ系435 とかいは(笑)ありす ゆっくりいじめ系452 表札 ゆっくりいじめ系478 ゆっくりいじり(視姦) ゆっくりいじめ系551 チェンジリング前 ゆっくりいじめ系552 チェンジリング中 ゆっくりいじめ系614 チェンジリング後① ゆっくりいじめ系615 チェンジリング後② ゆっくりいじめ系657 いい夢みれただろ?前編 ゆっくりいじめ系658 いい夢みれただろ?後編 ゆっくりいじめ系712 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語 ゆっくりいじめ系744 風船Ⅰ ゆっくりいじめ系848 風船Ⅱ ゆっくりいじめ系849 風船Ⅲ ゆっくりいじめ系936 カルガモとゆっくり 前編 ゆっくりいじめ系937 カルガモとゆっくり 後編 ゆっくりいじめ系938 カルガモとゆっくり おまけ ゆっくりいじめ系960 ゆっくりにドラえもんの道具を与えてみた ゆっくりいじめ系1702 三匹のゆっくり 1 ゆっくりいじめ系1703 三匹のゆっくり 2 ゆっくりいじめ系1704 三匹のゆっくり 3 ゆっくりいじめ系1705 三匹のゆっくり 4 ゆっくりいじめ系1706 三匹のゆっくり 5 ゆっくりいじめ系1707 三匹のゆっくり 6 ゆっくりいじめ系1708 三匹のゆっくり 7 ゆっくりいじめ系1709 三匹のゆっくり 8 ゆっくりいじめ系1716 続・ゆっくりにドラえもんの道具を与えてみた ゆっくりいじめ系2536 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語 加筆修正版
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まえがき いじめの描写がぬくいです。 人間さんが酷い目にあいます。 れい無双します。れいむは負け犬のがデフォって人には向きません。 ドスまりさが出ますが、そこまで無双してません。 パロディもします、舞台は現代。 (スーツの男がマイクを入れる) さて、皆さん。およそ生物の欲望は究極的に言えば二つしかないという説をご存知ですか? すなわち、「個の生存」と「種の生存」です。前者は自分が生き延びること、後者は子供が生き延びること と置き換えてもらっても構いません。この二つは、究極的には相容れないものです。 ゆっくり達もそうで、その好対照がまりさとれいむです。 まりさは個の生存を極めて大切にします。都合の悪いことがあればほかのゆっくりに責任転嫁しますし、 生き延びるためにかなり小賢しいことをします。 れいむは反対に種の生存を重視します。自分が犠牲になっても子供を救おうとするケースが多いのはこれに 由来します。 別にどちらが良い、悪いの問題ではありません。人間の目からすれば、個の生存を重視する者は自己中心的で 気に入らず、種の生存を重視する者は尊いという用に映るかもしれませんが、それはあくまで人間の道徳観であ ることを留意してください。 ところで、ゆっくりれいむに対して、皆さんはどういう印象をお持ちでしょうか? 「愚鈍の代名詞」「特徴ないのが特徴」「母性が強い」辺りが多いのではないでしょうか。 悪知恵が働き、突然変異で巨大化するまりさ、高度な知能を持ち、参謀的なぱちゅりー、 よく分からないけどいろいろと凄いありす、高い戦闘能力を誇るみょん、機動力に富むちぇん。 通常種がこのようにそれぞれ得意とするものがあるのに対し、一見するとれいむは何ら脅威 を持たないように思えます。 しかし、皆さん忘れないでください。史上最弱が最も恐ろしいのです。 (照明が暗くなる) 人間が暮らす村の裏には巨大な山があった。そこには20以上のゆっくりの群れがある。 “うらじーみる・いりいち・れーむん”(以後れーむん)はその中の一つの群れに生まれた。 まりさとれいむを親に持ち、8人姉妹の3女というテンプレ乙と言わんばかりの家庭だった。 生活は豊かとはいえなかったが、かといって餓死するほどのものでもなく、可もなく不可もないといったところか。 それなりの生活を続け、成体の一歩手前となったとき、れーむん一家に悲劇が襲った。 親のまりさが死んだ。 まりさは群れの戦闘部隊に所属しており、れみりぁとの戦闘で名誉の戦死を遂げた。 親のれいむは片親となってしまったが、群れは戦死したゆっくりの家庭に毎週定期的に食料を提供することになっていたから、 なんとか、生きていけた。 そんな中、れーむんの人生を変える出来事があった。 その年の夏は梅雨が長引いたせいで、群れ全体が食料不足となったのだ。 親のれいむも必死に食料の調達に勤しんだが、奈何せんれいむ種は狩りが苦手だ。 苦労の甲斐なく、れーむんの妹2匹が餓死した。どちらもまりさ種だった。 れーむんはそれなりに育ってたこともあり、何とか生き延びていた。 ある日、狩りの帰りにれーむんはまりさとありすの夫婦の発言をたまたま聞いてしまった。 この夫婦は群れの食料配分をしていることもあり、れーむんにも顔なじみだった。 「れいむのいっかがしょくりょうのはいぶんをふやしてほしんだってさ。」 どうやら、自分達が噂になっているらしい。 「おお、うざいうざい。」 「れいむなんてかりもできないおにもつなのにね。」 「おお、ごくつぶしごくつぶし」 「むれのためにまりさがゆっくりできなくなったからって、ちょうしにのらないでほしいわね。 れいむのおちびちゃんもみんなれいむよっ!?おおきくなったってむれにこうけんできないわ。」 「おお、むのうむのう」 まりさとありすは食糧不足の中、群れの食糧管理について必死にやりくりしていた。 どのゆっくりももっと食料を寄越せと請求するが、無いものは無いのだ。 本心と言うわけでもなかったが、群れ全体からの無茶な要求に疲労し、辟易してつい愚痴を言いたくもなろう。 まりさとありすもまた、全然ゆっくり出来ていなかった。 なるべく、ほかのゆっくりに聞こえないところで話していたので、れーむんに聞かれてしまったのはいくつかの 偶然が重なった結果だった。 ………れーむんはじっと唇をかんで耐えた。 れいむ種がほかのゆっくりと比べて能力不足であるのは事実であったが、こればかりはしょうがない。 天は天の上にゆっくりを創らず、天の下にゆっくりを創らず、などというわけでは決してなかった。 れいむ種は何処まで行っても、れいむ種というだけでこのような理不尽な扱いを受けるのか。 この時より、ある決意を胸に秘め、れーむんは死に物狂いで勉強をした。れーむん、生後7ヶ月目のことだった。 一念は岩をも通すと言うべきか、れーむんはめきめきと頭角を現し、成体になる際には、群れのぱちゅりーが教える学校にて 全科目でぶっちぎりの一位を取って卒業した。科目の中には狩りや戦闘、繁殖から群れの統率まで含まれていた。 誰もが、れーむんに期待した。 れーむんの輝かしい未来を羨んだ。 だが、意外なことにれーむんは群れを去ることにした。 成体となった際、群れを離れようとするゆっくりもいないわけではないが、危険な上に実入りも少なく、よほど群れに不満を持って 無い限り、そのようなことはしない。 しかも、珍しいことにれーむんが去る際に、優秀でれーむんの友といえるゆっくりれいむが何匹も同時に群れを去ると言った。 れーむん達が去ってから1ヵ月後。 群れには妙な話が流れていた。 なんでも、ゆっくり会の中でも最下層の扱いを受けるれいむ種が平等に生活できるゆっくりプレイスがあるのだという。 にわかには信じられなかったが、試しに行ってきたれいむの話しによると、そこはれいむによる、れいむのための、れいむの場所だった そうだ。 あるれいむ一家は移住することに決めた。 この一家は片親だった。つがいとなってまもなく、まりさがすっきりーして子供が全てれいむであったことから巣を去った。 あるれいむ一家は移住することに決めた。 この一家は子供の大半が障害持ちだった。母性が強いと専ら噂されるれいむの反応を見るために人間が片手間でいじめた。 あるれいむ一家は移住することに決めた。 親のれいむは飾りがなく、左頬のゲロイド跡が痛々しかった。人間の畑に行った際、つがいのまりさに捨てられたのだ。 あるれいむ一家は移住することに決めた。 このれいむも片親だったが、子供は大半がありすだった。 さらに、3ヵ月後。 中規模の勢力を誇る群れが壊滅状態に陥ったと言う噂が流れた。 なんでも、れいむだらけの群れに襲われたらしい。 れいむ種のゆっくりプレイスに移住を決意するれいむはますます増えた。 最もスタンダードなゆっくりと言われているれいむだけに、移住者の数は膨大だ。 1ヵ月後 攻略不可能と言われていたゆうかりんの花畑が破られた。 流石のゆうかりんといえども、多勢に無勢だった模様。 各群の多数派を占めるれいむ種の移住により、群同士の戦力構造に大きな変化が生じている。 もうれいむ達の群れは軽く最大勢力と化していた。 その3ヵ月後、信じられないことが起こった。 山の中では最強を誇る、ドスまりさ率いる群れが殲滅された。 ゆっくり達に衝撃が走った。通常のゆっくりの戦闘力を10とするならば、ドスまりさのそれは100どころの話ではない。 単純な戦闘力だけで言えば、人間はおろか、ツキノワグマとも互角以上に戦えるドスまりさを倒せるゆっくりなど存在するわけ が無い。 “その日”は特に何ら変わりないものであった。 ドスまりさは群れのゆっくりを引き連れ、ゆっくりしていた。 ここには、餌となる植物や昆虫が豊富で水場も近い。野生の動物も少なく、捕食されることもさほど多くない。 ゆっくり同士の縄張り争いにおいてはドスがいる以上、連戦連勝だった。 秋が深まったこともあり、ドスまりさやぱちゅりーの努力のおかげで群れは皆冬篭りの準備も万端であった。 まさに、ゆっくり達の楽園と言ってよかった。 夜。ゆっくりたちが寝静まった頃にことは起きた。 ドスまりさは振動と、怒声と、悲鳴で起きた。 あわてて外に出たドスまりさが見たものはこの世の地獄だった。 おびただしい数の死体に紛れ、生きているゆっくりもいた。生きてはいたが……。 あるまりさは半身が喰われていた。 あるありすは底辺を毟り取られ、袋叩きに会っていた。 あるまりさは両目を齧られ、何も出来なかった。 そして、目の前にいる………。 れいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむれいむ 荒野を覆いつくすという言葉がこれ以上相応しい状況もないだろう。 ドスまりさの群れは比較的少数精鋭主義だったものの、それでも群れ全体で100匹はいた。 ところが、目の前にいるれいむ達はどうだ。どう少なく見積もったところで1000は下るまい。 あっけに取られたが、所詮はれいむ種の群れ。 雑魚どもがいくら集まったところでドスまりさの敵ではない。 怒りに身を任せながらもドスまりさは相手の戦力を測り、自身で勝てると踏んだ。 とりあえず、3発打てるどすすぱーくでれいむたちを蹴散らした。 だが、いくらどすすぱーくが強力であろうと、平地に散らばっている者を殲滅するには到底至らない。 1/10程度は減らしたものの、依然圧倒的な量を誇る。 仕方なく転がって潰そうとするも、れいむ達はそれを待っていたかのように、雑木林の中に逃げ込み、投石による攻撃に移行した。 ドスまりさは確かに強い。だが、それは所詮何の遮蔽物もない平地でのことだ。 木が生い茂る場所での押し潰しや転がりによる戦闘行為は不可能だし、最大の頼みであるどすすぱーくも口から発射すると言う構造上、仰角がかなり制限される。 ゆえに、高低差のある場所で戦えば、ドスまりさには何の反撃手段も無い。 人間がドスまりさを駆逐する際に位置にさえ気をつければ、数人でも戦えるのはこのためである。 れいむたちの襲撃は止まらない。 群れの参謀に近い位置にいるものは真っ先に狙われ、ほぼ皆殺しにあっていた。 かろうじて、軽症で生きているまりさは目の前のれいむ達が違う生物に見えた。 全く、死ぬことに躊躇いを持っていないのだ。 むしろ、死を望んでいるかのようでもある。 実は、戦闘に出ているれいむは群れとの間にある約束をしていた。 すなわち、自分達が死んだら必ず子供達を育てると……。 元々このれいむ達は狩りがさほど得意ではないどころか、苦手といって良い。 本来ならば、子供達を育てる余裕など全く無い。だが、れいむ達は可愛い子供を殺すことなどできなかった。 そこで、れーむんは約束した。戦って、死んだら占領した食べ物と縄張りを遺族に優先的に分配すると。 れいむ達は喜んだ。自分達が死ねば可愛い子供は生き延びることができる。 どうせ、自分が育てても子供全員の育てきるのは不可能に近い状況だ。 なれば、わが身一つで子供達を救えるのならば安いものではないか。 れいむ達は生き延びるわけにはいかなかった。 喜び勇んで一番戦闘が激しい場所に飛び込んでいく。 ほどなくして、まりさはれいむに囲まれ、ゆっくり出来なくなった。 れいむ種は一般に戦闘能力が低い。ましてや、れーむんの群れで戦闘に出ている者は栄養状態も良くない。 高度な戦闘訓練も経ていないため、一対一ではまず少数精鋭が揃うドスまりさの群れには勝てない。 なにしろ、ドスまりさの群れのゆっくりは力をあわせれば、捕食種たるれみりぁさえも撃退させることができる ほどだ。 だが、集団戦なら話は別である。 10倍の戦力を持って初めて戦えと言うのは古くからの格言ではあるが、こと戦闘においては物量がものを言う。 さらに、れいむ達は群れのために個を捨てることができる。群を抜けようとする者には“粛清”が待っている。 どのれいむも、群れの生存を第一に考えるのだ。 そのチームワークは、あくまで自身が生き残ろうとする他の群れの追随を許さない。 れーむんはれいむ達に一匹につき、一つの指令のみを与えた。「飾り、左目、右目、底辺」のいずれかのみを専門的に狙うように 徹底的に反復練習させた。 ドスまりさの群れは賢く戦闘経験も豊富なために、一匹一匹が臨機応変に動くが、れいむ達は鉄砲玉そのものだ。 どうせ、すぐ死ぬのだから高度な作戦など遂行できるわけが無い。それに、没個性の集団はそれだけ代わりを作りやすい。 そこでは、個の意思を排除し、組織のいち歯車として一つの命令のみを忠実にこなす。いや、代わりがいくらでもいると言う 意味では歯車というより、螺子とでも言うべきか。一匹一殺の玉砕精神ですらなく、一匹が相手の一つのパーツを奪うこと を期待する作戦なのだから。 個々の戦力としては弱いが、圧倒的な物量戦と団結力に基づく玉砕戦法、そして執拗なゲリラ行動。れいむ達の強さはそこにあった。 ドスまりさは戦況が不利であることを理解して、生き残りを集めて退却することにした。 れいむ達は執拗に追った。 ドスまりさ達がどこに、どれだけ逃げようと、占領した場所を確保するための人数以外は全て追撃に回った。 危険である夜も追撃を緩める気配は無かった。追撃部隊、食料の現地調達係、休憩中の部隊の三つに分かれてローテーションし、 ドスまりさ達に徹底的に追いすがる。 野犬やれみりぁに発見され、喰われたゆっくりが出ても関係ない。 いや、減るどころかむしろ日に日にれいむ達が増えている気がする。 ドスまりさ達は追い詰められていた。 元々、奇襲を受けてほとんど食料を持たぬまま逃げたのだ。 加えて、日夜を問わない攻撃。 ドスまりさが蹴散らそうにも、数が多すぎてその間にほかのゆっくりが襲われる。 常に木を薙ぎ倒して移動するドスの疲労もたまる。 寝ることも、食事を取ることもほとんど叶わず、少しずつ、その数を減らした。 襲撃から1週間後、ついにドスまりさの群は首領たるドスまりさを除いて、全て息絶えた。 そして、今回の首謀者が現れる。 言うまでも無く、れーむんだ。 「ゆっふっふっふっふっ」 「いい・・・よのなか・・・じぶんというものをよくしるゆっくりがかつんだよっ…! “およめにしなさい”のはなしでれいむはにんげんさんにかてないけどれいむはじぶんのせいかくとのーりょく をよーくしっていたんだよ。ゆっふっふっふっふっ」 「このれいむたちもそーだよっ!まりさにちめいしょうをあたえるようなぱわーやすぴーどはもってないということは れいむじしんがよーくしっているよ。すべてはっ!!」 「おのれのよわさをみとめたときにはじまるんだよっ!!」 「ゆっふっふっふっふっ、しじょーさいじゃくが…………………」 「もっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとも もっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとももっとももっともおそろしぃぃいぃぃ ゆぎぃ~~~~~~~!!」 変なポーズを決めながら名乗り上げるれーむん。 「れいむ、どぼじでごんだごどずるの~!?れいむ達の群がゆっくりできなくなっちゃうよっ!!」 ドスまりさには理解できなかった。群を纏め上げ、群のみんながゆっくり出来るように尽力していたドスまりさからすれば、 れいむ達の戦法は狂気の沙汰としか思えない。 「ゆ?ゆっくりなんてだいこんさんといっしょで、かってにうまれてくるものでしょ? いちいちきにしないよっ!!」 こともなげにれーむんは答える。最優先すべきは「群の生存」。 次世代の子供達がゆっくりできれば、自分達がどうなろうと構わないのだ。 そして、群を大切にするということは群以外の者を大切にしないと言うことに近かった。 拡大した群の食事事情、ゆっくりプレイスの確保、残されたゆっくり家族を養うためにも、れいむ達は侵略を続ける。 ドスまりさは理解した。こいつ等と話し合いをしても無駄だと。 もう自分はゆっくり出来ないかもしれないけど、せめて群の仇を取っておこう。 地を埋め尽くすれいむ達を相手に、ドスまりさの最後の戦いが始まった。 れいむ達にドスまりさを倒す手段は皆無だ。 投石や体当たり、あるいはわなを仕掛けたところで蟻が恐竜に勝てるわけが無い。 ……物理的には、だ。 れいむ達はドスまりさへの無意味な攻撃を執拗に続けた。 なるべく平地では戦わず、多少高低差ある場所から木陰から投石を繰り返す。 ドスまりさがいくられいむ達を潰しても、次から次へと攻撃を続ける。 こうなれば、いかにドスまりさが強くとも関係ない。 寝ることも食べることも出来ない。 動けば動くほどエネルギーを奪われる。 かつて繁栄を誇った群の幻影が見え、楽しそうな幻聴が聞こえてなお、れいむ達の攻撃は終わらない。 最初の襲撃から2週間。 最後に残ったドスまりさが発狂して滝つぼに落ちた。 (照明が明るくなり、男がしゃべる) ご覧になられましたか? ゆっくり会では最強のドスまりさが最弱と言われるれいむに完膚なきまでに打ち負かされてしまいましたねぇ~。 ちなみに手元の資料によりますと、この襲撃でれいむの群は1/3以下になりましたが、2ヶ月もすると移民と生まれてきた生え抜きで数を 戻したそうですよ。ドスまりさの領土に新参者を住まわせてるとのことです。 さぁ、れいむがゆっくり会での立ち位置をご理解いただけたと思いますが、実は人間も注意しなければなりませんよ。 はい、そこの貴方!人間様がゆっくり如きに舐められるわけがないと思ってますね?そうでしょう、そうでしょう。 皆様そう仰るんですよ。 では次にこちらをご覧ください。 これを見た後にも果たしてそう思えるんでしょうかねぇ~。 (照明が暗くなる) ある男の日記より抜粋 11月3日 ついに、念願の暖簾分けをしてもらった。 苦節15年、ようやく師匠に認められて店を出すことが出来る。 嫁も喜んでいた。師匠の一人娘だ。暖簾分けと同時に、その……なんだ。 書くの恥ずかしいな。 11月10日 店の評判はなかなか良い。元々師匠の天麩羅は評判だしな。 今となって、師匠の苦労が良く分かるってもんだ。 俺も一国一城の主だ。 嫁のためにもがんばらねーとな。 11月17日 相変わらず、店には客が絶えない。 物珍しさだけじゃなく、味が受け入れられている証拠だろう。 店に奇妙な奴等が来た。生首に似た饅頭、ゆっくりだ。 なぜか皆紅白で気持ち悪い……。 残飯で良いから食事を分けてくれないかと言われた。 冬が近いのに、子供の餌が採れないらしい。 ふざけんな!お客様に食事を出す店に野良の生物がいたら不味いだろうが。 追い返すことにした。 「こーかいしないでねっ!!」という捨て台詞とともに紅白饅頭は帰っていった。 11月21日 客足がぱたりと止まった。 原因は分かっている。あのくそ紅白饅頭どもだ。 昼と夕飯時になると、徒党を組んで店前でたむろして「ゆっくりしていってねっ!!」という。 最初は珍しがっていたお客様も、絶え間なく続く「ゆっくりしていってねっ!!」にイライラしたのか、 さっさと帰る。 これじゃ商売にならない。 追い払っても、その場を立ち去ろうとしない。 どっかに捨ててきてもすぐに戻ってくる。 仕方ないから、潰すことにした。 「もっとゆっくりしたかった」という断末魔を上げて潰れるが、不思議なことにほかの饅頭は逃げない。 皆殺しにするしかないか。 11月26日 ほとんど、客が来なくなった。 いくら潰しても、こいつ等は懲りない。 それどころか、徒党の数が増えている。 嫁はストレスで倒れた。 毎日聞かされる「ゆっくりしていってねっ!!」と人間に近い顔が上げる断末魔。 俺だって正直キツイ。 だが、保健所に連絡するわけにはいかねぇ。 食品を扱ってるんだからな。 12月3日 昨日来たお客様は1人。それもてんぷらを食べてる途中で帰った。 もう我慢ならねぇ。 保健所に申請した。 12月4日 お客様は誰も来なくなった。 保健所の奴等は「あのさー、ただ家の近くでゆっくりしていってねと声上げるだけでしょ? 弊局が対応するのは①家に入っておうち宣言した場合、②人間を傷つけた場合③飼いゆっくり等の飼育物に手を出した場合 って書いてあるでしょーが。ウチも年の暮れで忙しいんですよ全く」と言う。 くそっ!!杓子定規で石頭の役人どもめ。 てめーに俺の苦労が分かってたまるか!! 今日も潰す。 明日も潰してやる。 一匹残らず、潰してやる。 12月8日 もう、店の周りを歩く人もいなくなった。 師匠からは嫁のことと店のことの両方で怒られた。 だが、どうすればいいんだ。 やつらはくる。いつものように。 12月15日 紅白饅頭どもに詫びを入れることにした。 もう、俺にはどうしようもなくなった。 12月16日 「ゆっくりとーさんしていってねっ!!」 とけたけた笑いながら、あいつ等は俺が作ってやった食事を拒否した。 今日も、いる。 打つ手は、ない。 12月31日 俺の夢は終わった。 借りたお金はもう返せねぇ。 師匠からは勘当された。 何で…こんなことになっちまったんだ。 (日記はここで終わっているようだ) (照明が明るくなり、男がしゃべる) ちなみに余談ですが、この村では以降、食品を扱う店は必ず残飯を裏に用意しておく様にしたもようです。 村の実力者がれいむたちと交渉の結果、人目に付かない明け方に受け取るようにしたらしいです。 無論、保健所と相談して山狩りも考えましたが、全てのゆっくりを駆逐するには膨大なお金がかかるし、 現実問題不可能に近いらしいですよ。 事なかれ主義といわれようが、残飯で済むならと、現時点では妥協するしかないというところでしょうかねぇ。 ゆっくり達が野犬やイノシシとやっていることはほとんど変わりません。 それらに比べ、ゆっくり達はあまりに惰弱です。 ですが、彼女たちはしゃべることが出来るのです。 ゆめゆめ、そのことを忘れてはなりません。 最後に、皆様の疑問に答えましょう。 おそらく、皆様はこう思っていらっしゃるはずです。 「れいむを馬鹿に出来ないのはわかった。だが、食料はどうなる? これだけの群を維持する食料などあるはずが無い」、と。 (照明が暗くなる) 冬。死をもたらすもの。 れーむんの群は食糧危機にあえいでいた。 人間から定期的に残飯を巻き上げているとはいえ、冬場はそうは行かない。 餌をとるのが苦手なれいむの大群で構成される以上、食料不足はむべなるかなと言えよう。 このままでは、群全体が崩壊してしまう。 れーむんは決めた。 翌朝、ドスまりさとの戦闘で怪我を負ったゆっくりを集めた。 動物と人間の大きな違いとして、医療技術の有無が挙げられる。 人間と違い、農耕の概念が無い動物にとり、怪我をすれば餓死することを意味する。 はっきり言って怪我ゆっくりなどクソの役にも立たない無駄飯食らいだ。 見捨てることを人間は非道と思うだろうが、ドスまりさでも無い限り、ゆっくり達が これを省みることは無い。 れーむんは説明する。 「いまのままのむれのかずじゃ、ゆっくりできないよっ!!」 「……ゆっくりりかいしたよ。れいむのおちびちゃんをゆっくり そだててねっ!!」 「ゆっくりまかせてねっ!!」 「さぁ、おたべなさいっ!!」 「さぁ、おたべなさいっ!!」 「さぁ、おたべなさいっ!!」 「さぁ、おたべなさいっ!!」 「さぁ、おたべなさいっ!!」 「さぁ、おたべなさいっ!!」 「さぁ、おたべなさいっ!!」 れーむんの考えはこうだ。 ゆっくり達は冬篭りでその多くが命を散らす。 生き残ったとしても、親が犠牲になって子供の食料となる場合が多い。 だが、それではダメなのだ。死んだゆっくりが集めて食べた食料は無駄になるし、春になって生存能力が無い子供だけが 生き延びたところで全くの無意味だ。 全員が平等に10%の確率で生き残るよりも、1/10の群れを支えるべきゆっくりが100%確実に生き残らねばならない。 群のゆっくりなど、放っておいても勝手に生まれてくるし、春になっていくらでも作ればよい。 しかし、群の中枢を破壊されてしまっては「群の生存」が不可能になってしまう。 れーむんは、確実に生き延びられる数まで自主的に群を減らすことにした。その過程で、食料が増えるわけだから非常に 合理的だ。 優しいドスまりさなどには考えつかないが、こと群の生存を考えれば有益な作戦と言えよう。 春になり、れーむんの思惑通り、群は一匹の脱落者を出すことも無く確実に生き残った。 ほかの群には、有力なゆっくり達が死んだのもあり、戦力ががた落ちだった。 加えて、群の数を取り戻すため、必死にすっきりーしまくっていた。 当然、母体は動けないし、何時も以上に餌が必要となる。 五体満足である、れーむん率いる群がこの絶好の機会を逃すわけが無かった。 夏になる頃には、昨年20近くあった群はもう一つしかなかった。 (照明が明るくなり、男がしゃべる) 皆さん、如何でしたか? これでも、れいむ種が他の種より劣っていると言えますか?脅威を持たないと言い切れますか? これは「種の生存」を重視する、れいむ種ならではの生態系の一例です。 群で連想するのは賢明なドスまりさが率いる群、徒党を組んでゆっくりを襲うありす、スィーに乗るめーりんだと思います。 ですが、れいむ種を忘れないでください。 こと群を作らせたら、れいむより恐ろしいものはありませんよ。ニヤリ あとがき 「すぐ死ぬ」「自己犠牲の精神による母性」「群」のキーワードから考え付いた。 本当はもっと赤い国のネタを使いたかったけど……このソビエトれいむによって、れいむ種が復権できれば良いなぁ。 いじめ描写が苦手なので、誰か代わりにこのれいむに「ツケの領収書だぜ」してくれたらありがたいです。 かいたもの 幸せはいつだってゼロサムゲーム およめにしなさい 甘い話には裏がある このSSに感想を付ける
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数時間団欒させた後、俺は再び部屋に踏み込んだ。 「ゆっ!!」 親れいむ共が例によって罵声を浴びせてくる。 「ちかづかないでね!!おちびちゃんたちにちかづかないでね!! くそじじいはゆっくりしないであっちにいってねぇ!!」 いまだに屈伏しきれないのは、ひとえに子を守りたいがゆえか。 「今日はお前らに用があるんだ」 俺はそう言うと、親れいむ共を一匹ずつ取りだした。 「ゆゆっ!?」 今まで何十日も、赤ゆっくりだけを取り上げられ、なぶり殺されてきた。 しかし今日に限っては、自分たちが取り出された。 ということは。 親れいむ共がぶるぶる震えだした。 「たっぷり付き合っていってくれよ」 「ゆっゆっゆっゆっ、お、おに、おにいさ」 震えながらも、子れいむが気丈に問いかけてきた。 「あ、あか、あかちゃんはたす、たすけてね?」 「れいむが、れいむがいじめられるから、あかちゃんは、あかちゃんはゆっくりさせてね!」 れいむ共が揃って懇願している。 その目元には安堵さえ浮かんでいた。 ようやく子供たちを死なせずに助けられる。 そして死ねる。そんな安堵だろう。 あの体験を経た今、 子供に死なれて呪われるよりも、自分が殺されたほうがましだ。 そういう思考にたどり着いたようだ。 「ああ。お前たちががんばれば、赤ちゃんたちは一匹も傷つけない。 お前たちさえがんばってくれればね」 「ゆっくりがんばるよ!!」 「れいむがゆっくりがんばっていじめられるよ!!」 「あかちゃんはたすけてね!!ごみくずでもやくそくはまもるよね!!」 俺に対する態度はだいぶ卑屈になってきたと思うのだが、 どうも、なにかの拍子にゴミクズ発言が飛び出す。 意外とれいむ種が一番タフなのかもしれない。 そんな失言は聞き流してやり、俺は早速れいむ共をカートに詰め込んだ。 別室に入ると、そこには大掛かりな機械が並んでいた。 どれも一見見たところでは用途がわからないが、わからないなりにれいむ共はがたがた震えている。 テーブルの上にれいむ共を並べ、使用人に見張らせたあと、 俺は先ほどの部屋に戻って赤ゆっくり共をカートに乗せ、連れてきた。 「ゆぅー!しゅーりしゅーりちちゃあい!!」 「おきゃあしゃん!にゃにちちぇるにょ!?」 「まりしゃとあしょんでよ!ゆえーん!」 「ゆっ!?おしょらをちょんでるみちゃい~♪」 カートの籠で喚いている赤ゆっくり共を取り出してれいむ共の傍に並べる。 「なにじでるのおおおおおおおお!?」 「ぐぞじじいいい!!あがぢゃんをばなぜええええええ!!」 「やぐぞぐう!!やぐぞぐまもれええええごみぐずうううう!!」 「何もしないさ。みんな、自分のお母さんのところに集まってね」 歯をむき出して飛びかかってくるれいむ共の方に、赤ゆっくり共を追いやる。 自然と、それぞれが自分の生みの親のところに集まっていった。 「おぢびぢゃんにはざわらないでねええ!!」 叫び続けるれいむ共。 まず、一匹の子れいむを取り上げた。 こいつの子は、赤れいむ二匹と赤まりさが一匹だ。 子れいむと三匹の赤ゆっくりを、部屋の一角に連れていく。 そこは仕切りで20cm四方余りに区切られていて、赤ゆっくりではそこから出ることはできない。 その仕切りの中に赤ゆっくりを三匹とも投げ込んだ。 「ゆべっ!」 「いちゃあい!ゆわぁぁん!!」 「ぐぞじじいいいいいいざわるなあああああああ!!」 暴れる子れいむを持ち上げ、上を向かせる。 赤ゆっくりが閉じ込められた仕切りの真上には、天井から縄がぶら下がっていた。 その縄を見せつけ、俺は言った。 「噛め」 「ゆゆっ!?なわさんはゆっくりできないよ!あまあまをゆっくりちょうだいね!!」 「噛まないなら子供の上に落とすぞ」 「ゆっ!」 ここから落とされては、真下にいる子供がすべて自分の体に押しつぶされてしまう。 慌てて開かれたれいむの口に縄を近づけ、噛ませてやる。 手を離すと、歯だけで自重を支える形になった。 「ゆぅぅ!!おきゃーしゃん!?」 「おりちぇきちぇにぇ!!しゅーりしゅーりしちぇにぇ!!」 状況がわかっていない赤ゆっくり共は、 飛び跳ねながら真上の母親の顎に呼びかけていた。 上の子れいむはぶるぶる震え、答えることもできない。 口を開けばどうなるかぐらいはわかるようだ。 そこで俺はれいむに鉄板を見せてやった。 鉄板は幅3cmとぶ厚く、およそ20cm四方の正方形をしている。 鉄板の片側の中心には紐を通す穴があり、縄が結ばれていた。 「これをこいつらの上に落としたらどうなると思う?」 「ゆぐぅううううううう!?」 「約束通り、俺はこいつらには何もしない」 鉄板の縄を子れいむの口の中に突っ込み、噛ませる。 「じゃ、頑張ってくれ」 「ううううううううぐううううううううううう!!!」 必死に首を振る子れいむの体から、俺は手を離す。 天井の縄と鉄板の縄を噛み、子れいむはくぐもった呻きを漏らしながら耐えていた。 どちらを放しても下の我が子はお陀仏だ。 この鉄板の重量は5キロ。 成体ゆっくりにとってはそれほどの重みではないだろうが、赤ゆっくりを潰すには十分だ。 そしてこの子れいむの顎には、鉄板に加えて自身の体重がすべてかかっている。 下の赤ゆっくり共は、鉄板がつり下げられるのを見て、 ようやく状況が掴めたようだ。 それでもどこか他人事のような気楽さで、母親に向かって命令した。 「ゆっ!おとちゃにゃいでにぇ!きゃわいいれいみゅたちがゆっきゅりできにゃいよ!!」 「おきゃーしゃんはゆっきゅりちにゃいでがんばっちぇにぇ!!」 「ゆうううううぐううううういいいいいいいいいーーーーーー」 子れいむの表皮からは、早くも脂汗のようなものがじっとりとにじみ出してきた。 どれだけ耐えられるだろうか。 他のゆっくりれいむで実験したところ、一時間もたなかった。 しかしその場合は、ゆっくりれいむの真下に置いてあったのは剣山だ。 自分自身ではなく我が子の命が危険にさらされたこのれいむが、 どれだけ記録を伸ばしてくれるか楽しみだ。 次の子れいむに手を伸ばす。 こいつの子は、赤れいむと赤まりさのセットだ。 「やべでえええええあがぢゃあああああんんん!!!」 二匹の赤ゆっくりを、透明なガラスケースの中に入れる。 ガラスケースの前方と後方は強化ガラスで、内部が見通せるようになっているが、 左右両脇はぶ厚くなめらかな鉄板になっていた。 鉄板はきちんと壁の役割を果たし、ガラスケースとは隙間なく接している。 鉄板の外側には、ばね仕掛けのような装置がついていた。 「おきゃあしゃん?これにゃに?」 「ゆっきゅりできりゅの?」 「おちびちゃん!!にげて!!にげてえええええ!!」 装置のスイッチを押す。 すると、ゆっくりと鉄板がケースの内側に向かってスライドしはじめた。 「ゆゆっ!?」 「かべさんこっちこにゃいでにぇ!!」 慌ててケースの中心部に集まる赤ゆっくり共。 二個の饅頭に向かって、鉄板は無情にじりじりと近づいていく。 「最終的には、あの鉄板はぴったりくっついてあの子たちを押しつぶす」 「ゆううううあああああ!!おにいざん!!あがぢゃんだずげでええええ!!!」 「いや、助けるのはお前さ」 そう言ってやり、子れいむを別の装置に設置する。 今度の装置は、一言でいえばハムスター用の車輪だ。 大きな車輪は、片側が機械に取り付けられており、 車輪内部は空洞になっている。 車輪のもう片側は丸く開かれ、ゆっくりが入れるようになっていた。 その中に子れいむを入れてやる。 「走ってみてくれ」 「ゆゆぅ!?おにいざん!?ぞんなごどよりあがぢゃっ」 「走れ。子供が死ぬぞ」 「ばじりまずうううう!!!」 言う事を聞かなければ子供を殺す、という脅しだととらえた子れいむは、一心不乱に駆けはじめた。 必死にぴょんぴょん飛び跳ねる子れいむに向かって、俺は先ほどのケースを指し示してやった。 「あれを見ろ」 「ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ……ゆっ?」 見ると、赤ゆっくり両脇の鉄板が止まっている。 「ゆゆっ!あかちゃんゆっくりしていってねゆゆぅ!?」 「ゆあぁぁかべさんゆっきゅりしちぇよおぉぉ!!」 「おきゃあしゃあああんはしっちぇえええええ!!!」 安堵して走るのをやめた途端に、鉄板が再び赤ゆっくりに向かって動きはじめた。 慌てて走るのを再開すると、鉄板の動きが少しずつ遅くなっていき、 全速力で走ることでようやく止まった。 この二つの装置は連動していた。 「お前が走ってその車輪を動かしていれば、あの壁は動かない。 だが、走るのをやめたりゆっくり走ったりすれば、赤ゆっくりは潰れてしまうぞ」 「ゆぅうううううううううーーーーーっ!!!!」 説明を理解したらしく、必死に全速力で走り続ける子れいむ。 向かい合った鉄板の距離は、今のところ30cm足らずぐらいか。 「ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆっぐりでぎないいいいいいい!! おにいいざあああああんゆるじでえええええええーーーーーーーーっ」 叫ぶとそのぶん体力を消耗するのではないか。 しかし、饅頭はそのあたり人間と違うのかもしれない。 ゆっくりは声を出すことでも疲れるのかどうか、それはこれから確かめてみよう。 次の子れいむも、似たような装置に設置する。 こいつの子は、赤れいむが一匹だけだった。 今度は、まず子れいむから処置した。 子れいむを、小さな箱に入れる。 その箱は透明だが、防音に優れた特殊なガラスを使っており、 密閉すれば外側の音は入ってこないようになっている。 そして、長方形の箱の内部は、ガラス壁によって真ん中で区切られていた。 片側の空間に子れいむを入れる。ちょうどぴったりだ。 そしてもう片側に赤れいむを入れるのだが、 こちら側には機械が据え付けられてある。 機械の中心部に赤れいむをセットし、針金で縛りつける。 「ゆびぃい!いちゃいいぃ!うごきぇにゃああい!! ゆっきゅりしちゃいよぉおおお!!」 早くも泣きながら抵抗を始めた。 ガラス壁に遮られ、その声は母親の元には届かないのだが、 その様子を目の当たりにして母親は涙にくれる。 「ゆっくりさせてあげてねええぇぇ!!ゆっくりさせてねぇぇぇ!!」 箱の蓋を閉める前に、装置のスイッチを入れた。 「ゆびゃっ!?」 びぐん、と赤れいむが跳ねた。 針金に縛りつけられたまま、びぐびぐびぐと痙攣しはじめる。 「ゆぎゃっ!!びゅっ、びぃいっ!!いぢゃいぢゃいぢゃいいいいい!!!」 「あああああああおぢびじゃあああああんん!!?」 説明してやる。 「電流が流れてるんだよ。全然ゆっくりできないものだ」 「ゆびゃびゃびゃああああ!!!いぢゃいぢゃ、ゆぎゅ、ゆっぎゅり、でぎぢゃあああいいいいびゃあああっ」 言葉が発せられるのだからまだまだ余裕がある。二十ボルトに足りない程度だ。 「今はまだ弱いけど、どんどん強くなって、そのうち永遠にゆっくりすることになる」 「いやあああああ!!!でいぶのあがぢゃんをだずげでねええええええ!!!」 「大丈夫、歌えばいい」 「ゆっ?」 「歌え!!」 怒鳴りつけてやると、れいむはおどおどと歌いはじめた。 「……ゆ、ゆーゆーゆー、ゆっゆっゆっゆゆゆ~♪」 すると、子れいむの痙攣のペースが見る間に落ちてきた。 「ゆびぃ……ゆびぃ……ゆびゅ!……びぃ……」 「お前が歌っているかぎり、電流がゆっくりしてくれる。 大きな声で歌えば歌うほど、赤ちゃんはゆっくりできるぞ。 毎日やってることだからできるだろう」 「ゆゆっ!!おうたをうたうのはとくいだよ!!」 「頑張ってくれ。ほら、また流れだしたぞ」 「ゆうぅぅ!?ゆっゆっゆ~!!ゆゆゆゆゆ~~!!」 子れいむの入っているスペースには、マイクが備え付けられていた。 このマイクと子れいむの機械はやはり連動しており、 マイクに向かって声をあげれば、声量に応じて電流が弱まる仕掛けになっていた。 実際のところ歌でなくてもいいのだが。 これで箱を密閉すれば、外から音が入ってくることもなく、 この親れいむは自分の声だけで電流を抑えなければならない。 「ゆっゆっゆっくり~♪ゆゆゆゆ~~ゆっくりしていってねぇぇ~~♪」 歌っているうちに自分もゆっくりできるのか、この子れいむはどこか余裕のある表情だった。 最後に親れいむ。 親れいむの赤ゆっくりは三匹だった。珍しく三匹ともまりさ種だ。 その三匹を、やはり透明なケースの中に入れる。 ケースは小さく、20cm四方の立方体といったところだ。 この装置は単純なものだった。 密閉されたケースの上部に、内部につながるホースが固定されている。 そのホースから、水がちょろちょろと流れ出し始めていた。 「ゆゆっ!?おみじゅしゃんはゆっきゅりできにゃいよ!!」 「おみじゅしゃんはいっちぇこにゃいでにぇ!!」 しかし、見るまに水は床一面に広がっていく。 「おちびちゃんたち!!ゆっくりしないでおぼうしさんにのってね!!」 箱の外側から母親が指示する。 慌てて帽子を下に敷き、赤まりさ共は水に浮かびはじめた。 「浮かんでいれば今のところは大丈夫だろう。 だが、そのうち水でいっぱいになるぞ」 密閉されたケースは、やがて水で満たされるだろう。 そうなれば、帽子に浮かんでいようが関係なしに全身が水没することになる。 「あがぢゃあああああんん!!ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 「飲んでやればいい」 箱の上方には、水を注入するホースとは別に、 ちょうど親れいむの口の高さにストローが突き出ていた。 ストローの下端はケースの床面に届いている。 「お前が水を飲めば、いつまでもケースが水でいっぱいになることはない。 赤ちゃんたちもゆっくりできるぞ」 「ゆっくりおみずさんをのむよ!!!ごーく、ごーく!!」 たちまちストローに食いつき、水を飲み始める親れいむ。 赤まりさ共が親に声援を送っている。 「ゆっきゅりしにゃいではやきゅのんでにぇ!!」 「ゆっゆっゆ~♪ぷかぷかきみょちいい~♪」 そこで親れいむの口をガムテープで塞いだ。 「ゆびゅっ!?」 ストロー以外の部分が綺麗に閉じられた。 これで、口の端から水を吐き出すというようなことはできない。 親れいむはますます必死になって飲みはじめた。 れいむ共の踏ん張りは想像以上だった。 それはそのまま、子への愛、そして子を死なせることへの恐怖をも表していた。 すでに開始から二時間が経っている。 どのれいむも、子を殺すまいと必死になっていた。 「ぅうううぅうううぐぐぐぐぐぎぎぎぎぎぎいいいいいいがががががが」 天井からぶら下がっている子れいむは、 がたがた震え全身から粘液をぼたぼた滴らせながら、気丈に顎を噛み合わせつづけていた。 ぎりぎり絞められている口元からは、餡子の混じった涎がひっきりなしに滴っている。 歯茎から餡子、つまり血が出ているようだ。 精神的に限界を超えているらしく、 両目は涙を流しながらぐるぐると高速で回転ている。 下顎からはしーしーが漏れ出していた。 「ゆぴぃ……ゆぴぃ……」 下の赤ゆっくり共は、最初のほうこそ親を応援していたが、 いまではそれにも飽き、呑気に身を寄せ合って眠りこけていた。 「ゆぎゅううううううう!!ゆっぎゅ、ゆっぎゅぢじだあああああいいいいい!!!」 「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶうううううぶぎゅぎゅぎゅ」 「かひゅうー…………ゆひゅうー…………ゆぅううううううう!!!」 車輪の中の子れいむは、いまだに必死に走り続けていたが、 最初のほうのペースは見る影もなく、うつろな目でぼてぼてと飛び跳ねているだけだ。 少量の餡子を断続的にはき散らしているが、 すでに体液は汗(のようなもの)にして流しつくしたらしく、かさかさに乾いている。 甘やかされた飼いゆっくりなら、十分走っただけでもぜいぜい息切れする。 それがもう二時間だから大したものだが、肉体的にはとっくの昔に限界を超えている。 それでも精神力だけで必死に体を鞭打っているが、 大きくペースの落ちた走りは、鉄板の移動を多少遅らせこそすれ、止めることはできなかった。 今では二匹の赤ゆっくりは、鉄板に両側から押しつぶされ、 恨めしげに親を睨みながらくぐもった悲鳴を漏らしつづけている。 もはや数分もたないだろう。 「ゆぎゃぎゃぎゃびゃびゃびゃびゃびゃばばばばばばばばびびびびびびび」 「ゆ゛ー!ゆ゛ぅー!ゆ゛ううぅう!がはっ、かっ、げほっ、はっ………ゆ゛ぅうううううううううぅぅぅ!」 ひっきりなしに電流を流され続け、子れいむはもはや虫の息だ。 ぎりぎり生きてはいるようだが、すぐに死ぬだろう。 電流だけでは、ゆっくりはなかなか死なない。 前述のように餡子がなくならない限りは死なないわけで、 沸騰した餡子が体外に流れ出すか、 あるいは黒こげに燃えて破れた皮から餡子がこぼれ出すまで待つ必要がある。 流れている電流はすでに一万ボルト近くなっていた。 すでに沸騰しはじめているだろう。 マイクに向かって、母親の子れいむは必死に歌い続けている。 しかし、その声はすでにがらがらで、もともとひどい音程もリズムももはや完全になくなり、 ただマイクに向かってがなり立てるばかりだ。 それでも声量が相当落ちているのは、赤れいむに流れている電流を見ればわかる。 「ごーく……ごーく……ゆげぇ……ゆげぇぶ………ごーくぅ……」 「おみじゅしゃんはいっちぇきちゃだみぇえええ!!!」 「のみぇええ!!!ゆっきゅりしにゃいでもっちょにょみぇええええ!!!」 「ゆぁああああああしにたきゅにゃいいいいいいいいい!!!」 親れいむの姿は面白いことになっていた。 もともと大きかった50cm大の体が、水をためこんでだぶだぶに膨らんでいる。 身長はそう変わらないが、横幅は1メートル以上になってたっぷりテーブルの上に広がっていた。 三十分を超えたところで、ひっきりなしにしーしーをしはじめた。 飲んだはしから排出するようになったので、しーしー道をガムテープで塞いでやった。 そうしたら水っぽいうんうんをするようになり、半透明の液状の餡子があちこちにピーピーまき散らされた。 面白いのでしばらく見ていたが、結局あにゃるも塞いでおいた。 そうして今、親れいむはひたすら膨れているのだが、 すでに限界らしく、ねばつく全身を苦しげに上下させている。 さっきからずっとごぼごぼせき込んでおり、 飛び出さんばかりの眼の淵からひっきりなしに流れつづけている水は涙ばかりではないだろう。 ケースの中の赤まりさ共は、すでに水かさに押されて天井に頭を押し付けている。 帽子の中に水が入りはじめており、躍起になって親を叱咤していた。 「ゆぎゃあああああああおみじゅしゃんやべぢぇええええええええごぼごぼがぼ!!」 ついに一匹が、帽子ごとひっくり返って水の中に沈んでいった。 ごぼごぼと沈んでいく我が子を前に目を見開き、親れいむはさらに必死になって飲み始めた。 初めに死んだのは、電流を流されていた赤れいむだった。 沸騰した餡子が口と眼窩から飛び出し、ぽんっという音をたてて眼球が飛び、ケースの天井に当たった。 発火する前に電流を切ったのだが、死体からは焦げくさい煙が立ち上っていた。 次に、二匹の赤ゆっくりが鉄の板に押しつぶされて事切れた。 「もっぢょゆっぎゅっ」が断末魔だった。 死骸を飲み込んで隙間なくぴったり合わさった鉄板にも気付かず、 子れいむはそれからしばらくの間のろのろと跳ねていた。 それは歩くよりも、這いずるよりも遅い走りだった。 三番目に、親れいむが水を吐き出した。 ガムテープでふさがれた口は水を逃がさず、唯一の出口であるストローから盛大に水を逆流させた。 餡子の混じった水がガラスケースの中に大量に流し込まれ、 残っていた二匹の赤まりさは、たちまちのうちに水没した。 親れいむは涙を流しながら長いこと吐き続け、 流し込まれる水の勢いでケースの中の水が循環し、 二匹の赤まりさは餡子が溶け出すまで一個の死骸とともにぐるぐると攪拌された。 以外にも、一番最初の子れいむが最後まで残っていた。 涙やら涎やらに濡れそぼったその形相は仁王だか不動明王を思わせる迫力があり、 その体の激しい震えで、縄がぶらぶら揺れていた。 しかしやがて限界は訪れ、 ついには天井側の縄を離し、体ごと我が子の元に落ちていった。 記録は二時間四十三分。 驚いたことに、このれいむは縄を離したのではなく、噛んでいた部分の歯が根本から抜けおちていたのだった。 自らと鉄板の下に我が子を敷き、子れいむは泣きながらかすかに笑っていたようだった。 その笑いは決して幸福感からのものではあるまい。 「残念だったな」 れいむ共は元の自室、大きなガラス箱のある部屋に戻っていた。 体力を使いきってぐったりと横たわるれいむ共に、俺は声をかけてやる。 「でも、お前たちは精いっぱい頑張った。 あの子たちも許してくれるだろう。 お前たちは母親として胸を張っていいぞ。あの子たちは感謝しているはずだ」 れいむ共の答えはなかった。 俺は背を向け、部屋から出ていった。 「しねぇぇぇ……」 背後からかすかな呟きが聞こえてきた。 その夜、れいむ共が眠っているときにそれは起こった。 「づぶれびゅ!!づぶれびゅうううううう!!!」 真っ暗な部屋の中にあの声が轟いていた。 車輪の中で走り続けていたあの子れいむが飛びあがり、甲高い悲鳴をあげた。 「ゆあぎゃああああああああああああ!!!」 「のみぇ!!ゆっきゅりしにゃいでのみぇえええええーーーーっ」 「ががががああああばばばばばばばばうばばばばばびびびびびび」 「ゆっぎゅりでぎじゃいいいいいいいいいぃぃ!!!」 「ゆびぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!?」 れいむ共全員が、恐怖に身をひきつらせて叫んだ。 昼間の、あの赤ゆっくり共の絶叫と断末魔が部屋中に轟いていた。 そして、あれ以来すっかり聞いていなかった絶叫。 「のりょいごろじでやりゅがらにゃあああああああああああああああああ!!!!」 今、暗い部屋の中で、かすかな照明に照らされ、 れいむ共の視界に浮かび上がっているそれは、赤ゆっくりのデスマスクだった。 あの日、母親を呪い続けながら溶けていった赤れいむと赤まりさ。 それだけではなかった。 鉄板に押しつぶされてぐしゃぐしゃになった赤ゆっくり共。 電流を流されて焼け焦げた赤れいむ。 水没してどろどろに溶けた三匹の赤まりさ。 昼間死んでいった九匹が新たに加わり、 十一匹のデスマスクが、ガラスケースの四方かられいむ共を睨みつけていた。 「なんじぇあじゅげだ!!なんじぇあじゅげだあああああああああああーーーーーーーーーーっ」 「ゆぎゃっ!!びゅっ、びぃいっ!!いぢゃいぢゃいぢゃいいいいい!!!」 「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶうううううぶぎゅぎゅぎゅ」 「じぇっだいにじぇっだいにのりょいごろじでやりゅううううーーーーーーっ!!! じにぇ!!じにぇ!!じにぇ!!ぐりゅじんでじにぇええええええええええええ!!!」 「ゆぎゃびいいいいいいいいいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」 恐怖に目を見開き、れいむ共は絶叫しながらガラス箱の真ん中に身を寄せあってがたがたと震えた。 餡子を吐き出すのはすぐだった。 監視室で確認してからすぐに部屋に飛び込み、 すさまじい勢いでえずいているれいむ共の口をガムテープで塞ぐと、言ってやった。 「一体なにをそんなに怖がってるんだ?」 「ゆぅぐううううう!!むぐうううううううううぅぅぅ!!」 涙を流しながら必死に訴えてくるれいむ共に向かって、俺は空とぼけてみせた。 「俺には何も見えないし、何も聞こえないな。 怖い夢でも見たんじゃないか?じゃあな」 そのまま、吐けなくなったれいむ共を放置して俺は部屋を出ていった。 その晩、れいむ共は暗闇の中に取り残され、 デスマスクに囲まれて子供たちの絶叫を聞き続けていた。 以上に述べた方法で、 その日からは毎日、れいむ共自身に自らの手で子供を殺させた。 子供が生まれ、装置に設置されるたびにれいむ共は必死に耐えたが、 時間制限がないのだからいずれは死なせるしかなかった。 そして、赤ゆっくりが死ぬたびにその断末魔と死骸を保存し、 夜が訪れるたびにデスマスクと断末魔のコレクションは増えていった。 いまでは、れいむ共は毎晩ガムテープを口に張られて死ぬこともできず、 子供たちに囲まれながら、人間ならたやすく発狂しているであろう恐怖を味わい続けていた。 れいむ種に施した処置は、現在のところは以上だ。 続く
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書きたかった事 本スレ91の 220さんの書き込み 『ゆっくりが物覚え悪いのは都合の悪い記憶を餡子と一緒に吐くからという設定があったよな。』 からインスパイアされて 若干汚いのが注意点、嘔吐物的な意味で 作者 チェンマガツ? 男はその手にゆっくりれいむを抱いている。 成体サイズのそれは近くの森で甘い言葉で誘って着いてきた普通の野良れいむだ。 男の家にはすでにゆっくりまりさが居るのだがそろそろ番となるゆっくりも欲しかろうと思い拾ってきたのだ。 わざわざゆっくり屋で買うのも馬鹿らしい。 気に入らなければ潰して、まりさには別のれいむをあてがえばいいのだ。 そんな男の考えを知らないれいむはといえばご機嫌上々である。 一度だけだが森の中で出会った人間さんから舌がとろけそうなほど美味しい食べ物をもらったことがあった。 その思い出だけで人間への警戒感は全くない。その上かっこいいまりさと会えるというのだ。 これ以上幸せな状況は無い、というわけだ。 「ただいまー」 「おにいさん、ゆっくりおかえりなさい!!」 帰宅すると玄関まで飼いまりさが跳ねてきてきっちりと挨拶をした。 お兄さんはかなり厳しい性格でこれまた野良であったまりさを一から叩き直して立派な飼いまりさに仕上げていた。 「ゆゆっ、おにいさんそのれいむどうしたんだぜ」 「ああ、お前もそろそろ番になりたいだろうと思って連れてきてやったんだ」 そう言ってまりさの目の前にれいむを降ろしてやる。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!!」 「まりさはまりさだぜ」 「れいむはれいむだよ!!」 「れいむはゆっくりできるれいむだぜ?」 「とてもゆっくりできるよ!!」 「それならおにいさんのおうちでゆっくりするといいぜ」 「う、うん……。まりさのおうちじゃないの?」 「だめだぜれいむ、ここはおにいさんのおうちだぜ。まりさはここでゆっくりさせてもらってるんだぜ」 「れいむもゆっくりできるの?」 「れいむもちゃんとゆっくりさせてやるさ。その代わりちゃんと言う事聞いて貰うぞ」 「ゆゆっ、ゆっくりりかいしたよ!! れいむもゆっくりするよ!!」 「よし。まりさ、れいむを部屋に案内してやれ」 「ゆっくりわかったよおにいさん!! れいむこっちにくるんだぜ」 「ゆゆ!!」 玄関先で一通りの自己紹介を済ませたまりさとれいむは部屋の奥へと消えていった。 まりさとの会話からもそれほど性根悪いれいむでなさそうなので男はこのまま様子を見る事にした。 まりさの為に用意された部屋は上下に分かれた押し入れの下段だった。 それでも並のゆっくりには十分すぎるほどのスペースである。 れいむはもちろんそこが押し入れと理解するわけがないのでまりさはとても広い巣を持っているゆっくりだと思った。 巣の広さもゆっくりのステータスの一つであるためれいむがまりさを気に入るのは早かった。 「まりさのすはとってもひろくてゆっくりできるね!!」 「ゆゆ~ん、あんまりほめるんじゃないぜ」 さらに飼いゆっくりであれば当然食事面で野生のゆっくりと差がついている。 まりさ本人もゆっくりからしたら美ゆっくりの部類に入るわけでれいむはその点でもまりさをお気に召したようだ。 逆にまりさの方は正直別のゆっくりならなんでもよかった、今は後悔してない状態である。 程良い関係であるならこれからの生活に支障はない、男はそう思った。 「もうお昼だしご飯にしようか」 「れいむにごはんはやくちょうだいね!!」 「れいむ、ゆっくりまってたらおにいさんはもってきてくれるんだぜ」 「ゆゆっ!! まりさはすごいんだね!!」 「それはちがうぜれいむ……」 まりさの実にまずそうな表情を男は読み取る。 れいむはまりさの言葉をまりさの為に男がご飯を持ってきてくれていると完全に誤解している。 まりさが伝えたかったのはご飯を催促することなく大人しくしていたらようやくご飯をもらえるということだ。 男は所詮野生のゆっくりだと思って甘くみたがまりさからすれば冷や汗ですむ話ではない。 「れいむ、うちでは静かにしている奴にゆっくりできるご飯を持ってくることにしている、わかったか?」 「どうしてそんなこというの? さっさとごはんもってきてね!!」 「まあそのうち分かるよ」 意味深な言葉を残して男は去っていった。れいむはそんなことは一切気にしなかった。 その後男は二匹に同じ量、同じ見た目のご飯を持ってきてまた部屋をあとにした。 二匹がご飯を食べている間にれいむを洗う準備をするためだ。 これから一緒に暮らすためにはあまりに汚らしい肌やリボンでは都合が悪いのだ。 ぬるま湯にボディーソープを入れてよく掻き混ぜると即席泡風呂が完成した。 そのころ押し入れの二匹は仲良くご飯を食べていた。 まりさはゆっくりらしいがつがつ食べるスタイルをとうに捨て去り、器から舌で少しずつ巻き取りながら綺麗に食べている。 一方のれいむは見事にご飯を食べ散らかしていた。 飼い慣らされたまりさから見れば卒倒物である。最近では忘れていた男の怒声が飛んでくるのが目に見えて震え上がった。 「れいむ、ごはんはきれいにたべるんだぜ。すのなかもきれいにしないとだめだぜ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪ なにかいったまりさ?」 「いや、なんでもないぜ……」 まりさは一応忠告はしたとばかりにれいむの食べ様に知らない振りを決め込む。 そして男が戻ってくると案の定れいむに雷が落ちる。 と思われたが男の意外な反応にまりさは驚くこととなる。 「れいむ、ごはんをたべるときはきれいにな。すがきたなくなってるぞ」 「ゆゆっ、れいむのせいじゃないよ!!」 「きれいにしないとゆっくりできなくなるぞ?」 「れいむはしらないっていってるでしょ!?」 「そうかまあいい。れいむおいでお前を綺麗にしてやろう」 「ほんとう!? ゆっくりはやくつれてってね!!」 「はいはい」 まりさの開いた口がふさがらない。何故だ、自分の時はあんなに優しくされた覚えはないのだがといったところだろう。 れいむを担いで男が向かったのはれいむを洗う準備をした風呂場である。 水面を直接見せることなく洗う事の出来る泡風呂はじつに便利だと男は常々思う。 ゆっくりがどうしてこうも水に対して恐怖心を抱いているか男は全く理解していないからだ。 最初にまりさを洗おうとしたときの騒動は今でも忘れられないほどの惨事となった。 「あわあわさんがとてもゆっくりできるね」 「そうだな」 男はれいむとの会話に適当に相槌を打ちながら細部まで綺麗に磨きあげていく。 飾りを外すのは拒まれたのでしかたなく頭に付けたままごしごしと洗う。 れいむの顔はマッサージをするように洗うと、見た目が気持ち悪い気持ちよさそうな表情をした。 風呂上がりにドライヤーも厳禁であることも経験済みだ。最初はあの音がゆっくりできないらしい。まりさは今では逆に病みつきらしいが。 面倒だがタオルできちんとれいむの水分を拭き取ることにした。 風呂場を出た頃にはれいむもそこいらの飼いゆっくりのような綺麗な肌になっていた。 田舎娘でもきちんと化粧とおしゃれな洋服を着せれば都会っ子なのだ。 まりさの待つ押し入れにれいむを戻すとまりさのれいむを見る目が変わった。 れいむがまりさに抱いていた思いに概ね近づいたようだ。つまりは相思相愛だ。 薄汚いれいむに何の感情も抱かなかったまりさもなかなか現金な奴である。 家にれいむが来てまだ一度もしていなかったすーりすーりを急にし始めたところからもわかる。れいむも満更ではないようだ。 「この様子なら心配はないな」 そんなまりさ達の行動におとこは苦笑いをしながら水受けに新しくボトルから水を注ぎ部屋を出て行った。 その日は男は晩ご飯と水の補給をしてあとはゆっくり達に関与しなかった。 今まではまりさの相手をしてやる必要があったがこれからはそれをれいむに任せればいいのだ。 れいむの躾けに関してもまりさの行動を見ているうちにれいむがそれを真似するようになるだろうと考えた。 その考えをしらないまりさは男の怒りがいつれいむに向かうか恐ろしくて仕方がなかった。 これまでの経験からすればもうすでに激しい暴行があってもおかしくないからだ。 今度れいむが粗相を起こせばなんとしてもれいむを庇わなくてはならない。 綺麗になったれいむにまりさの思いはそれほどにまで募っていたのだ。 しかし就寝直前に事件は発生した。 「ばでぃざ……うっぷ、ぎもぢわるぃおろろろろろろろろ」 「ゆぎゃあああああでいぶどうじだのおおおお!!」 れいむが突然餡子を嘔吐したのだ。 れいむは生粋の野生生まれ野生育ちだった。 その為実に人工物に対しての耐性がこれでもかというほどなかったのだ。 男が餌に混ぜていた少量の塩やカルシウムに。体を洗ったときに口に入れたあわあわこと洗剤に。そして水分補給に飲んだ硬水のミネラルウォーターに。 すべてがれいむの体調を崩す元となりついに嘔吐してしまったのだ。 だがまりさはれいむの体調の心配はまったく気にしてなかった。 またれいむが部屋を汚したのだ。 今度こそ男に見つかったられいむは潰されてしまいかねない。こんな美ゆっくりのれいむがいなくなるのはまりさは勘弁ならなかった。 そこでまりさが取った咄嗟の行動はれいむの嘔吐物を食べて証拠隠滅することだった。 基本的にゆっくりの体から出た餡子はそのゆっくりにとって汚いものである。 しかし背に腹は代えられないとばかりにれいむの嘔吐物を一気食いする。 ちびちび食べてはこちらも貰いゲロしてしまいかねないというまりさの判断だ。 「どうしたまりさ。悲鳴したような気がしたが」 なんとかれいむのものを食べ終えた頃男が押し入れの様子を覗きに来た。 「なんでもないよおにいさん!! ゆっくりおやすみなさい!!」 「ああ、おやすみ」 不審そうな表情で男は襖を閉めて、さっさと寝るために自室に戻っていった。 なんとか誤魔化せたまりさは安堵の溜め息をつく。ふとれいむのほうを見ると気を失うように眠りについてしまったようである。 その様子をみてまりさをれいむに頬擦りをして自分も眠りにつくことにした。 れいむがまりさの所にやってきて二日目の朝がやってきた。 「れいむ、ゆっくりしていってね!!」 「ゆゆっ、ゆっくりしていってね!!」 いつも通りの時間に目覚めたまりさはまだ眠っているれいむに向かって朝の挨拶をする。 「ここはどこなの!? れいむはどうしてこんなところにいるの!!」 「れいむはおねぼうさんだね!! きのうれいむはまりさのところにおにいさんときたんだぜ」 そんなれいむの姿を見て微笑んでいたまりさの表情が次の瞬間凍り付く。 「まりさはだれなの!? れいむにゆっくりちかよらないでね!! れいむおうちにかえる!!」 「どうしたのれいむ!! まりさはまりさだよ、わすれたの?」 「れいむはまりさのことなんてしらないよ!! ゆえーん、でぐちはどこなのー!!」 一体全体れいむはどうしてしまったのだろう。昨日あんなに仲良くなったのにすーりすーりしたのにそれも忘れてしまったのか。 「おにいさんもわすれたの? ごはんをもってきてくれたにんげんさんだよ?」 するとれいむの目が変わった。まりさはようやく思い出してくれたのだと安心した。 「すごいねまりさ!! まりさはにんげんさんよりえらいんだね!!」 しかしれいむの発した言葉は昨日の焼き直しのようだった。 「ちがうんだぜれいむ……」 昨日晩ご飯のときに説明していたことも忘れたのだろうか。もしかすると理解できてなかったのかもしれないそうまりさは思う事にした。 それからすぐ男が朝ご飯を持ってきて水の補給をして、挨拶をしただけであまり会話もすることなく出て行った。 汚らしくご飯を食べたれいむをまりさは注意して、すーりすーりしたりかけっこしたり男とゆっくりとの関係について話をして昼ご飯がきた。 朝同様男はすぐに出て行った。これからは男とではなくてれいむと仲良くするんだとまりさは言われた。まりさはれいむにこの家でのルールを教えていった。そのうちに晩ご飯がきた。 水の補給も終え部屋を出て行こうとする男にまりさとれいむは仲良くおやすみなさいと言った。 男は満面の笑みでそれに返して部屋を後にした。 そして就寝直前れいむは再び嘔吐をした。 体に合わないサプリメントと硬水中のミネラルの影響によるものである。 まりさも再びそれを何とか口にする。 出来れば食べたくないのだが男に知られるわけにはいかないため、食べる以外に処分方法がないのだ。 そして三日目の朝が来た。 「れいむ、ゆっくりしていってね!!」 「ゆゆっ、ゆっくりしていってね!!」 いつも通りの時間に目覚めたまりさはまだ眠っているれいむに向かって朝の挨拶をする。 「ここはどこなの!? れいむはどうしてこんなところにいるの!!」 れいむは昨日と全く同じ台詞を吐いた。 あとがき 記憶継承な話題になってたけど忘れるのも面白そうかなと思ってみた。 嘔吐した餡子を食べると記憶継承するのはあくまでも同種のゆっくりでそれ以外は餡子に消化しちゃうんじゃないかと。 ありすのカスタードをれいむが食べても駄目そうな雰囲気で。 れいむとまりさの餡子も似ているようで少し違うんだよきっと。 というのは勝手な妄想なのでさらっと流してください(・3・)~♪